一 チュイスタン南部デリー森林ペルシア川源泉 ここは、ヒマラヤ山脈から程遠い大森林の中、大地の関係で地下水が吹き上げている。これがペルシア川のスタート地点だ。(ペルシア川には第一上流と第二上流が有り、第1は、ヒマラヤ山脈の麓から静かに湧き出ていて、こちら第2は、この神聖渓谷の西側から噴水のように吹き出ている。) この川の源泉にサフィアとその隷(剣)のフェニックソードがやって来た。 「さぁ、サフィア、この川をたどれば海に出る。海沿いや川沿いを歩いた方が迷い難いだろ?だからこの川に沿って進もう」 「ううう・・・は、腹減ったよぉ」 確かに、神聖渓谷からこの川まで歩くのにも1時間は掛かった。(更にサフィアは行く前に何時間も寝てたんだから(^^; 「他・・・確かに、まだこの旅をし始めてから1口も入れてないな・・・じゃあこのに水を飲んどけ。腹は膨れるだろう」 「え!こ、この噴水みたいな水を飲むの!?」 このペルシア川の源泉、雄にサフィアとフェニックソードを足して×2をしても全然高い。 「しょうがないだろ!とりあえず新鮮で旨いぞ。」 「しょうがない・・・飲むか。・・・・・・ガボゴボガボゴボガボゴボガボゴボ・・・ブハッ!!!の・・・飲めるか!って顔がぶっ飛ぶ!」 「ったく・・・じゃあ流れてる川の水でも飲め」 「・・・は、早く言えよ!」 「気付かないテメェが悪い!」 「は、ハイ。スイマセンデシタ。キヅカナイボクガイケマセンデシタ」 「よし、分かったんなら飲んで行くぞ!」 「はい」 数分歩いた時だった。近くから<ガサガサ>という音が聞えた。 「何かが・・・来るぞ!サフィア、気を付けろ!」 「わ、分かりまし・・・ 「ウキャー!ウキャー!キャッキャ!」 茂みに隠れていたのはサルだった!そしてサフィアめがけて突進してきた。 「ウ・・・ウワッ!やめろ!・・・イデデデデ!引掻くな!あっ!け、剣が!」 サルはフェニックソードを引っ手繰ると、すぐさま逃げ出した。 「あわわわわわ・・・ど、どうしよう」 「突っ立てないで追いかけろ!早く助けてくれぇぇぇぃ」 「あ、ハイ。ま、待てー」 必死に追いかけるサフィアだが、サルの逃げ足には敵わなく、その上サルの得意な木登りで、サフィアは見失ってしまった。サフィアはそのまま3時間ほど当ても無く森を彷徨い続けた。 夕暮れが近づいて来た。もうサフィアはヘトヘトだ。 「ヤバイな・・・あの剣が無いと何処へ行けば良いのか分からない・・・クッソォォォォォ!!!!」 そう叫んで近くに植えた有った円周3mは有る大木を叩いた。 その大木は叩くと<メキッメキメキメキ!>と言う音を立てた。 「あ、あれ?」 その後、すぐに<メキメキ・・・バキバキバキ!ドッカーン!!!>と言う音を立てて根こそぎ折れてしまった。 「エッ!な、何で?軽く叩いただけなのに・・・」 更に奇跡(!?)が起こった。その大木には剣を引っ手繰ったあのサルがいたのだ。今は地面にぶつかってのびている。しかも死んでいない。 「ウ、ウキャァ〜ア〜ァ〜」 「オイ、サ、サ、サフィア・・・如何して此処だと分かった・・・」 「あ、いや、ただこの木を叩いたら偶々折れて偶々ここにサルが居ただけです」 「バ、馬鹿な・・・オメェがそんな力を――ま、まぁ良い。時間が無い。早く行こう」 「はい。ほら、サル!」 「ウ・・・ウキャァ!?」 「物を勝手に盗んじゃダメだよ。<・・・で、いいのか?この剣生きてるけど・・・>」 「ウ、ウキャ〜イ」 「・・・フ、サフィア、また川に戻って下流へ行け」 「は、ハイ!」
二
サフィアとフェニックソードはペルシア川に再び戻って歩き始めた。そして数時間後もう真っ暗な夜を2人(それか1人と1剣?)が歩いていた。 「あの・・・もうどの位歩いたでしょうか」 「う〜む、そろそろインド海(今のインド洋)に行く川路とアラビア砂漠(今のサウジアラビア)を過ぎて紅大河(今の紅海)に行く川路が分れる所だから・・・100キロメートルは進んだな。オメェ、マラソン選手と同じくらいのペースだぞ!」 「そういえば寝る所はどうしましょう・・・」 「ヤベ!忘れてた!・・・そうだなぁ、砂漠に入ると気温が下がりすぎて凍え死ぬから・・・ここら辺で野宿でもするかな」 「あ、あと魔力はどの位?」 「う〜む・・・あそこで1時間、あれで3時間・・・大体14時間位で魔力が消えるな」 「まだまだですね」 「・・・いや、そうでもないんだな」 「え!」 疑問そうなサフィアを見てフェニックソードは詳しい説明をした。 「いいか、この川は今、地球で一番長い川なんだ。そして未だこの川の3/1しか進んでいないんだぞ。しかも今から寝るワケだ。分かるだろ?もう時間がない・・・というか海に着くまでには俺の魔力は消えるだろうな」 「そ…そんな!」 「・・・だが、それはオメェが目覚めて早々また寝たからなんだぞ!」 「!!!」 「・・・まぁいい、もう暗いから寝な」 「・・・お休みなさい・・・」
三
朝が来た。・・・未だ西側は暗いが、東はもう朝日がまぶしい。 「オイ・・・起きろ!」 「ムニャムニャ・・・ハッ!!!な、何時間寝た!?」 「おいおい、いきなりそれかよ。5時間寝てたぞ。あと9時間、13時38分で俺の魔力が消える・・・行ける所まで行くぞ」 「・・・ハイ、早く行きましょう」 「ふぃ・・・今日は気合が入ってるな」 そういうと剣は軽く笑った。そして何も言わずに歩き始めた。 ここからが長い道のりだ・・・が、時が過ぎるのはあまりにも早かった。ペルシア川の最後の大きな曲がり道が終わり後は地平線の果てまで続く長い一直線が覗いた時・・・。 「・・・は、早いな・・・おめぇ、最後の・・・一直線だ・・・も、もう少しだ・・・ぞ・・・」 「あ、あの・・・どうしたんですか?」 「フ・・・つ、ついに・・・『その時』が・・・来た様だな・・・」 「ま、まさか!」 「そ・・・そうだ・・・そろそろ・・・13時38分に・・・なるのだ・・・」 「そ、そんな!お、俺はどうすれば良いんですか!?」 「バ、バカヤロォ!オメェは・・・・・・・そのまま・・・海に行くんだろ!・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」 「でも・・・どう行けば・・・海に行ったら!」 「・・・仲間に出会うんだろ!・・・自分が予言したじゃないか!・・・・・グゥゥゥゥ」 「でも・・・寝言じゃな 「自分を信じろ!自立するんだ!・・・た、体力使わせやがって・・・お、オメェは・・・もう・・・大丈夫だ・・・十分・・・1人で生きて・・・行ける・・・」 「・・・」 「良いか・・・もう・・・最後だ・・・最後に・・・よく聞け・・・実は・・・俺は知っていたが・・・お前の・・・予言は・・・実現する・・・この川の・・・最後・・・海との境目に・・・下水処理地が・・・有る・・・其処で・・・オメェの・・・言う・・・仲間・・・に・・・出会う・・・はず・・・だ・・・ さ、最後・・・に・・・言う・・・が・・・俺・・・の・・・本名は・・・フェニック・・・ソードでは・・・無い・・・それは・・・この剣の・・・名前だ・・・お、俺の・・・本名は・・・エ、エ、エ、エ、エ―――…・・・‥ ・ ・ ・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「・・・エ、エ―・・・なんですか?エ――・・・さん・・・エ―――・・・だ、誰か、誰かぁぁぁ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ・・・・」 サフィアは泣いた。どうして良いのか分からなくなった。頭が真っ白になった。目覚めてから未だ1日しか経ってないのに・・・。でも・・・悲しかった。辛かった。 しかし、前を向いた。其処にはフェニックソードが地面に突き刺さっていた。あの時・・・あの時と同じだ。目覚めて最初に見たもの・・・それを見てサフィアは決心した。 「・・・そう、此処だ。此処からがスタートなんだ。一生付き合える人なんてほんの一握りしか居ないからな。此処で・・・此処で俺は生まれ変わる・・・いや、此処で俺が生まれたんだ!」 サフィアは、心の中でうなずき、また川沿いを歩き始めた。
三
それから何時間歩いただろうか、川幅はだんだん広くなり、水は汚れ、ついさっきまで地平線のかなたにあった海はもうすぐ側までに近づいた。そして海の彼方には大きな展望台のようなものがあった。一方サフィアは腹が減って仕方がなかった。今まで水しか飲んでいなかったサフィアも、ここまで来るとあまりにも汚らしくて飲む気に慣れなかった。 「は・・・腹・・・減った・・・何か・・・く、く、食い物・・・ん?この良い匂いは!」 この匂いは川の下流から来ている。サフィアはこの匂いを求めて最後の気力を振り絞って走り出した。しかし、川以外には何も無い。そうして走っているうちに海まで着いてしまった。 「つ、着いた・・・ここが・・・俺が旅した匂い・・・いやゴールなんだ!」 サフィアが求めていたのは海の磯の匂いだった・・・が、この海にはそんな磯の匂いなんかしない。海の色は茶色か紫、水面にはヘドロや油が漂って強烈な匂いを発している。ただし今のサフィアはとても腹を空かしているのでこの海の悪臭までが良い匂いと感じているのかも知れない。 「この匂いの源は・・・あの建物だ! 何々、『下水処理地』?変なレストランだ・・・あれ?下水処理地?どっかで聞いたような・・・まぁいいや、入ろう」 今、下水処理地は壊れている。そのため、川の汚水をきれいにせず、何も手を加えずにそのまま川へスルーしているのだ。そしてサフィアは下水処理地の数10mでやっとこの悪臭に気付いた。そして・・・ 「ヌ、ヌオッ!ク、クサ!なんと言う・・・・・・ん?何だ?この海に浮かんでいる物は」 よく見ると・・・白い翼らしきものだ。この翼、まるで天使の翼の様だ。そして大きい、ゆうに2mはある。サフィアはその物体を裏返そうとした。無性にやりたくなった。しかし、なかなか裏返せない。翼に何か大きいものがくっ付いている・・・何とか裏返すと其処には・・・・・・!!! 「に、人間・・・人間だ!」 そう、裏返すとそこには人間の姿があった。女の子らしい。・・・ ・ ・あれ?おかしくないか?翼の付いている・・・人間=て、天使じゃないか!!!なのにサフィアは驚かない・・・それは未だサフィアが剣、鳥、サルしか見ていない・・・人間を見たことが無いのだ。 「…は!た、助けないと死んじゃう!・・・クソ!岩が高すぎて、しかも翼や服に水を吸っていたりヘドロがくっ付いていたりしてお、重い!」 詳しく説明しよう。今サフィアは海抜1m(今いる岩の高さ)の高さにいる。勿論海抜0mよりキツイのは皆さん分かると思う。それにこの少女の体重は40kgだとする。其処に翼が水を吸う。その水を10ℓ=10kg吸うとする。更にヘドロの重さ・・・何かにたとえると泥が良い。男子なら分かると思うが,泥が靴底にベットリ付くとかなり重くなる。それが全身に付く=20kgだとすると、この少女の全体重は40+10+20=70kgと成る。これを持ち上げるのはかなりの力が要る。 しかし、サフィアを包んでいる『奇蹟』がまた起きた。この少女の腕に付いてあったブレスレッドにサフィアの手が触れた瞬間、ブレスレッドが巨大化し、少女の腕を離れ、浮いた。そしてそのブレスレッドはまるで生き物のようにこの少女を乗せて海岸までそっと運び、降ろすと、また小さく鳴って『コト』っと地面に落ちた。唖然としたサフィアが呟いた。 「変なブレスレッドだなぁ」
四
数分後・・・ 「ウ、ウ〜ン・・・ウッ!ゴホッゴホッガバッ!」 「お、目が覚めたな」 「あ、貴方が助けてくれたの?」 「え、・・・ま、まぁね」 目覚めて早々の質問にサフィアは戸惑った。 「ど、どうやって!この海抜1mの高い所から・・・」 「え、あ、ああ、運が良かったんだ。き、君の変わったブレスレッドが無かったら何も出来なかったよ」 「え、ええ!こ、このブレスレッドで!?・・・どんな感じで私を救ったの!?」 「いや、ただこのブレスレッド触ったら大きくなって君を乗せてここまで勝手に・・・これ,君のブレスレッドでしょ?何でこんなこと聞くの?」 「このブレスレッドは・・・聖なる力を授かったものだけが使いこなせるブレスレッドでこの世界でほんの数人しか使いこなせないのよ。勿論私も、・・・お父さんも使いこなせない。そんなブレスレッドを目覚めさせた・・・で、貴方の名前は?それがまず先ね」 「俺はサフィア。で、こっちがフェニックソード。き、君は?」 「私・・・ソフィヤ・・・ソフィヤ・ブルースカイ・・・・・・サ、サフィア!?あ、あ、あの!鳥人王国(バーダー王国)まで来て下さい!」 「な、何だよ!い、いきなり・・・告白かよ!」 「ち、違うわよ!あの・・・でも貴方は・・・救世主だってことは知っているわ」 「!!!な、何で知っている・・・」 「やっぱり・・・ずっと昔、・・・私も、お父さんもお爺ちゃんもあの戦争も生まれてなかったときから、聖書に貴方のことが書いてあったのよ!そして鳥人王国・・・いや、この地球・・・いや、全宇宙を救ってくれるって・・・その為には、『矛・輪』を持ち『浮島』に行け・・・つまりブレスレッドを持って鳥人王国に行かなきゃいけないのよ!それに・・・今は・・・あの戦争以来の・・・ウ、ウワァァァァァァァァァァアアアン!!!」 鳥人王国に行かせるための嘘泣きか『あの戦争』以来の何かが起こるから本気で泣いているのかどっちだか分からないがソフィヤは泣いてしまった。 「わ、分かったよ。だけど本当にいいのか?常識知らずで腹ペコな俺だけど・・・」 「うん、平気だよ。あ、お腹減ってるの?じゃあこのパンでも食べてよ・・・完全防水の袋だからグチャグチャには成ってないから、遠慮なく食べて」 そういいながら完全防水の袋から食パンが一切れ出てきた。 「あ、ありがとう!」 そう言いながらもう半切れは食べていた。 「フフフ、よっぽどお腹が減ってたのね。あ、そうだ!今のうちにブレスレッド渡しておくね。ついでにこのブレスレッドの名前『トライブレス』って言うんだ。何故かは分からないけどね。あれ?もう食べ終わったの?早いわ・・・さすが救世主!(それはただの早食いかと)じゃ、鳥人王国に行こう!」 「あ!そういえば・・・」 「どうしたの?」 「鳥人王国って・・・・・・何処?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・?」 「・・・こ、こんなことも知らないで生きてきたの?あ、呆れた。まぁいいわ、私が教えてあげるから覚えて。大切だから。いい?鳥人王国は私達のような鳥人(バーダー)が建国した空に浮く浮島。具体的に中央に一番大きい浮島『エベレストランド』が首都でその周りに貿易島、山人島(コクガン島)、海人島(カイト島)が正三角形の頂点になってるわ」 「フーン・・・え、ちょっと待って!空に浮いてる島!?俺、行けないじゃん!」 「私は翼があるから飛んでいけるからいいけど貴方にゃ無理ね、しょうがない、私が運んであげる・・・・・・良い?行くわよ!」 彼らは空を飛んで鳥人王国に行った。そこで待っていたのは・・・・・・あれ?ソフィヤが飛んでない! 「・・・・・・あ!そうか!翼が水を吸っているから重くて飛べないんだ!ど、どうしよう」 「そんな・・・しょうがないしばらくここで翼が乾くの待ってるか」
・・・ハイ、何とまぁ微妙な終わり方です。何故かと言うとこの小説の未だ3/1なのでこのままだと終わるまでにこの小説の1話の限度10000文字を超えてしまうと予想したからです(ただいまの文字数6000字位) と、言うことで自作は『初戦』です。お楽しみに〜。
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