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The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜 下巻 作者:キラ

第7回   第28話〜アスルムの要求〜
28話 アスルムの要求



 3460年 8月14日
あの事件から2ヶ月ほどが経った。
鳥人王国に新しい元老院と議長が選ばれ、他の国家機関の役員も入り、王国はやっと落ち着きを取り戻した。
SPEは新しい隊員を増やし、隊員数は100万を超えていた。その中にはアナのように他星からやって来た人もいた。
そんな中、サフィア達SPE幹部はいつも会議ノ間で行う朝会議を延長し、すでに4時間が経過していた。
「だから、オイラが主張するのは、ずっと昔に使われていたような兵器を使ったほうがいいと言ってるじゃん!」
イライラしたロッジャーの声が会議ノ間に響く…。
「だからな、それをやると第五次世界大戦の二の舞を演じる事になるんだ。そんな事があったら、今度こそ地球の終わりになる」
サフィアの意見に大半がうなずいた。ただし、ロッジャーだけは断固反対だ。
「じゃあサフィアはこのままDDDに占領されてもいいじゃんね?あそこはどんな事をするかわからないじゃん。もう地球は150年以上も平和を維持してきたじゃん。どうすれば悪意の為に兵器を使うのか、もうそんな事、忘れたじゃんよ!」
ロッジャーはフンと鼻息を出した。
急にネオンが机を叩いたので、全員がそっちを振り向いた。
「ふざけるのもいい加減にせえや…。あんさんは歴史をよ〜見て、『歴史は同じことの繰り返しやな』って思ったことは一度もないんか?150年間?なんやそのチッポケな数字は!歴史をよお見い!第二次世界大戦から第三次世界大戦の間は約350年!第四次世界大戦から第五次世界大戦の間は大体800年や!」
辺りがシーンとなった。途方もない時間が、遙か一直線の彼方に一筋の光があるようだ。
またネオンが口を開いた。
「それに、戦争は不安定な環境から芽を出すんやで。第二次世界大戦がその例や。暗黒の木曜日から始まった世界恐慌で湧き出た恐怖感が大戦を引き起こしたんやで。今もそうや。この事件の後をどう解決するかで地球の運命は変わるんや」
10m先の蚊の羽音が聞こえるほど、会議ノ間はしんと静まり返った。
やがて、ロッジャーがぶっきらぼうに言った。
「はいはい、いいじゃんよどうせオイラの意見なんで誰にも受け入れないじゃんよ!」
そう言うとロッジャーはプンとそっぽを向いてしまった。
「彼はあれでも同情しているんですよ。全く、本当に恥ずかしがりやさんですね」
シャスナがクスッと言った。
ロッジャーは未だにソッポを向いたままだが、顔は絶対にほころばしているとサフィアは確信できた。
「えっと…これで17回目だな。振り出しに戻ったのは」サフィアがため息をついた。
「なあなあ、サフィア〜。もうお開きにしねえかぁ〜。腹減ったよぉ〜」
スーが呻いた。
そして、会議ノ間が文字通り凍りついた。そして、100m先の蚊の羽音が聞こえるほど、会議ノ間はしんと静まり返った。そしてその蚊は凍死した。
それもそのはず。こんな会議がもう1ヶ月も続いているのだ。1度、8時間も話し合ったこともあった。そして、今日こそは…と誰しも思っているのだ。それに対してスーはなんてマイペースなのか…。
いてついた会議ノ間を溶かしたのは守護部隊軍士長のニシャーンであった。
「あの、確かこれはまだ言ってないはずですが、こう言う時は地に足をつけてみるのです」
「それは…一体!?」
サフィアが身を乗り出して尋ねた。新しい意見があればすぐにでも実行したいからだ。
「DDDが来た時、一緒に戦える仲間を探すんです」
ニシャーンの意見に、異議の鬼(自称)ネオンが机を叩いて立ち上がった。
「異議ありや…ニシャーン軍士長。それは同盟っちゅーわけやろ?アカンアカン。五大大戦の全ては国と国とが結びつき、それらが対立して起きたんやで。戦争は避けなアカン」
すると、ニシャーンも負けじと立ち上がった。
「確かにその通りです。しかし、もう事態は深刻です。近い将来、また大きな大戦が起こると思います。その時に国々が連合を組めば、少なくとも個々の戦いよりはDDDに対抗できるかと思うのですが…。それに、もし地球の全ての国々が合わされば、DDDの領土は始めからゼロ。つまり、我々は非常に優位に戦闘ができるんです。戦争期間を短縮できるでしょう。そして、大戦が終わったら同盟を解散させて、またいつも通りの生活に戻せば今まで160年もの間平和だったように、これからもずっと、平和であり続けるかと思います」
ニシャーンがお辞儀をして着席すると拍手が喝采した。異議の鬼(自称)ネオンも少し考えていたが、やがて―異論がないと思ったのだろう―みんなと同じように手を叩きはじめた。



 それから数分後…。会議に出席した隊員たちがゾロゾロと出口の方へ足を運び、他の隊員が残してくれた朝食を口にしていた。
今、会議ノ間にはサフィアのみがSPE隊員の前で議決した事をレポート用紙に書き込んでいる。
無音の間。ペン先が滑る音のみが微かに響く。
その時、会議ノ間の中央に置かれた幻影機――3Dの人物が映し出され、その人と通信ができる機械――から音も無く人影が映し出された。
あまりにも無音で、しかもサフィアは文を書くことに集中(もしかしたらこの集中力が強さの秘訣かもしれない)…していたので、彼は気付くことなくペンを走らせていた。
人影は辺りを見回し、会議ノ間にはサフィア一人だと言う事がわかると、彼に向かって問いかけた。
「SPE隊長サフィア殿…であるな」
人影の言葉でサフィアはビクッと顔を上げた。勢いが強すぎて首がグキッとなった。
「あ、あなたは?」サフィアは首をさすりながら言った。
「自己紹介がまだであったか。私の名はムテダ・アスルム。オーマン台国内閣外務大臣である」
オーマン台国…現在の地球で最も進んだ歴史と高原の国である。
しかし、なぜそこの外務大臣がSPEにようがあるのか…。
「もしかして、また地軍隊(アラビア砂漠の中央にある世界唯一の私立軍隊)が暴れだしたんですか?」
サフィアがSPEに入隊して初めての任務は、ソフィヤとアナを地軍隊が誘拐して起きた空地戦争だった。
この戦いで地軍隊は負け、その軍の司令官であるパララはSPSの牢獄に送られ、地軍隊は軍縮と賠償金を払い、新司令官はみんなの信頼が厚いジェデン・リードとなった。
だから、もう地軍隊が暴動を起こす事はとうていありえない。しかし、アスルムの顔は曇っている。
「残念だが、その地軍隊がまた暴動を起こしたのだ」
「そんな…ありえない!」サフィアが嘆いた。
「その通り。ありえない…。普通ならばな」
アスルムは意味ありげに「普通ならばな」の部分を強調させた。
「普通…じゃないんですか?」
広い広い会議ノ間、その中央付近に立つサフィアとアスルムの幻影…。今日の会議ノ間は本当に静かだ。
「その通りだ、SPE隊長。君は最近下界を見た事がないのか。特に砂漠を…アラビア砂漠を。ふむぅ…その顔は見てないらしいな。多忙な日々を送っているのは存じている」
大臣は会議ノ間の窓の方に振り向いて続ける。
「アラビア砂漠に住む国民の通信が2、3ヶ月前になって急に途絶え、そこにに正体不明の物体が動いているのだ。調査隊を我々オーマン大国の正式な軍隊『オスマン中立軍』から何人も派遣しているのに、全員の連絡がすぐに途絶えてしまうのだ。ずっと昔は、飛行機なり衛星なりでわかるのだが、今はそんなものを作る技術がない。空飛ぶ王国が羨ましいよ。…話がそれてしまったな。つまり、そこからアラビア砂漠を調べてほしいのだ」
アスルムはくるりと回ってサフィアをじっと見た。
「正体不明の物体と言うのは一体…」
SPEはそう簡単に外国の助けに応じることができない。戦争の早期決着や極悪事件の解決など、すでに公でわかるようなこと以外は手を差し出すことが不可能なのである。つまり正体不明、通信が途絶える、何者かの手によってなど、不明な点が1つでもあると行動ができないのだ。
ただし、総務署、SPSの許可さえ下りればこうした事態でも行動ができるのだが、あのサブル・パル・シロッタント総務長のことだ。
「不明な点があるのだから、行動できるわけが無ぁいだろぉ。チミ、却下だ」
なんて事を言うだけだ。
「正体不明と言っているのだから分かるわけがない。ただし、それは地球外のものだ。それか…鳥人か」
「バ、バーダーだって!?」サフィアが仰天した。
「い、いや、その確立は非常に低いと私達の方から見ればわかる。正体不明の物体はオーマン高原から見ると宙を浮いている白い物体だとわかる」
ムテダ・アスルム外務大臣はため息をつきながら言った。
「なるほど…。あ、あとなぜ通信が途絶える理由はわかりますか?できれば通信が途絶える場所も」
サフィアが親指を唇に当て、尋ねた。
「理由はわからんが…。場所はわかっている。遙か昔に建国され、今はすでになくなっている『サウジアラビア』と言う国の国境辺りで途絶えている。そして、その国の首都であったところにある場所にあるのが地軍隊の基地なのだ。地軍隊が何らかの形で関わっているように思うだろ?」
外務大臣はアゴをさすりさすり答えた。
これらをまとめると、宙を浮く物体がアラビア砂漠、特にサウジアラビア地区に集中し、その地区で失踪事件が多数ある。何となくサフィアはこの事件には影があるように思えた。暗黒で邪悪な影が。
「やや不明な点があるのでSPEは即行動ができませんが、総務署に連絡してみます。それで許可が下りればSPE一個連隊を動かす事ができます」
「…わかった。しかし、もう我々の望みはそれしかないのだ。…頼むぞ」
アスルムは深々とお辞儀はした。
「俺…私も全力でやるつもりです」
サフィアはじっとアスルムを見つめて言った。
「ウム…。では、お願いする」
アスルムは通信を切ったので幻影機によって映し出された影はなくなった。
また、辺りは無音の間となった。



しばらく考え、一人うなずいたサフィアは幻影機をいじりだした。SPSに連絡を入れるためである。
数秒後、この会議ノ間がフッと消えた。そして、会議ノ間があったところには別の部屋があった。そこはSPSにある宇宙警察評議会であった。SPEの会議ノ間と比較すらできないほど大きく、一番奥にある机が遠すぎて見えなくなるぐらいだ。
サフィアはこの会議ノ間の証言台に立っていた。前を見ると一つの机に数人ずつ、規則的にずらっと並んでいて、視線がサフィアに集中する。前、サフィアが隊長になったことを伝えるためにここに来たことがあるが、こんなに緊張する場所はない。
「まずはッ!自己紹介を」
気がつかなかったが隣にサブル・パル・シロッタントS☆P総務長が立っていた。
「ハ…ハイ。ソーラーシステム第3惑星、地球に署を持つSPEの隊長、サフィアです」
サフィアはピシッとした声で言った。気体音声拡張機でサフィアの声はこの間の隅々まで響いた。
「…ん?サフィアは名字か?それとも名前か?」
コマンダーサブルは御自慢のちょび髭をいじりながら言った。
「サフィアは名前です。名字は…」
そう言えば、サフィアの名字はない。それ所か、生まれた場所、父母の名前すら知らなかった。それでも別に気にしたことはなかった。
「名字は…ありません。それで通してください」
サフィアは平然と言った。へろへろ言うと変な目で見られそうなので。
「…わかった。サフィア君、何の様かね?」
シロッタント将軍はウオッフォンと大きな咳払いをした。
「私の星の科学力では到底作ることのできない宙を浮く物体が砂漠地帯に集中し、その地区で失踪事件が多数あるんです。しかも、その失踪者の中には軍の連隊もいます」
「あの地球の科学力はそんなものだったかな?我々他星の住民の約9割が地球からの移民だと聞いたことがあるが」
議員の一人が言った。
「確かに昔…遙か昔はそうだったと聞きました。ですが戦争の増加よって行き過ぎた科学は封印しました」
サフィアが答えるとその議員は納得してゆっくりと頷いた。
「それとDDDは何か関係があるのかな?」
違う議員がため息をついた。サフィアは驚いた。俺たち以外の人がDDDの存在を知っているとは…。
「そ…そうだと私は思います。少し前にもDDDのドロイド軍と交戦しました」
ざわめきが起こった。どうやら、DDDの脅威がわかっているらしい。数ヶ月前とは大違いだ。
「わかった…。そういえば、ソーラーシステム内で宇宙戦があったらしいが、その報告をまだ聞いておらんぞ、チミ」
コマンダーサブルは唇を噛んで言った。
「とりあえず私達が勝ちました。ですが、SPSの超大型主力宇宙戦艦パワー・バトロイヤー『ナイト・フェンサー号』は敵戦闘機によって撃沈されました。エーレ防衛長と援護に来たスターランス連隊の消息は途絶えたままです」
さっきよりも更に大きなざわめきが起こった。SPSの戦艦が撃沈されることは今まで一度もなかったからだ。
「そんな…アンビリーバボー…。わかった。我輩からも連絡を取ってみる。SPE隊長、チミの要求は今から決議をする」シロッタント将軍は呼吸を整え、大声を出した「諸君、今から決議を取る。SPEの一個連隊を異国にて行動させる。賛成の者は手元にある青いスイッチを、反対の者は赤いスイッチを押すのだ!」
シロッタント将軍の太い声が響き渡った。
すると、サフィアの背後にあるスクリーンが光を発し、右に青、左に赤のライトが下から上に向かって増えていく。増えは青の方が多い。
これは議員が賛否のスイッチを押すとライトが上に上がると言うシステムだ。
しばらく経って、徐々に増加がなくなり、ぴたりと止まった。
「集計終了!ではチミたち、結果を発表する。全議員12763人中、投票数12453。無効310。賛成10063。反対2390。よって、SPE隊長の要求は可決する」
賛成の票を入れた議員達は立ち上がり、サフィア向かって拍手が喝采した。
「あ、ありがとうございます!」
サフィアが生まれてこのかた、これほどうれしいことはなかった。
「ちみちみ、おめでとう。ただし、これは6日後に行動をすると言う決まりになっている。これはすぐには変えることができんのだ」
シロッタント将軍がため息をついた。しかし、これほどコマンダーがいい人だと思ったことがなかった。
「わかりました。…皆さん、本当にありがとうございました!」
サフィアが礼をすると、また拍手が喝采した。
そして、通信が終わった。



 「そうか…6日後、つまり8月20日にSPE隊は動く事ができるのだな」
アスルムの幻像がそう言った。
「そうですね」
サフィアが言った。
「……そうだ。どうせ動けぬ6日間。我が国の軍の総司令官オッドル・マスト氏とサフィア殿が会議を行うのはどうだろうか」
アスルムがアゴをさすって言った。
「…それ、ナイスアイディアですよ!今朝の会議でそんなことをやろうかと思っていたんですよ。早速今日か明日、やりましょう」
サフィアが目を輝かした。サフィアは16歳。まだまだ子どもの心は残っている。
「そうだな…。私の方から軍に連絡を入れるが、色々あって、会議を行うのは明日の方がいいかもしれんな」
アスルムはこめかみ辺りを掻きながら呟く。
「わかりました。では、また明日。頑張りましょう」
アスルムはうなずくと、幻影装置に吸い込まれるように消えていった。
サフィアはそれを見守ると会議ノ間を出て行った。



 サフィアは思い出したように飲食ノ間に行った。
もうお昼過ぎ。サフィアは朝食を食べずにずっと会議ノ間にいたことになる。
第三者が見ればガリ勉君に見える。
サフィアが飲食の間のドアを開くと、ワイワイ騒いでいた隊員が急にシーンとなった。
「…あれ?みんなどうしたの?」
「どうしたの?って、サフィア、よくもまあこんな時間まであの部屋に閉じこもっていられたわね。鍵を閉めて、私がどんな大声で叫んでも全く反応無しよ。あと30分立てこもってたらダイナマイトであのドア破壊しようって本気で思ってたわ」
ソフィヤが目を丸くして言った。
「…ダイナマイトって何?」
サフィアが尋ねた。
「遙か昔の爆弾よ。…さっきのは冗談よ…もちろん。で、何やってたの?」
ソフィヤの純粋な目で見つめられる。サフィアはちょっと赤くなった。
「ああ、オーマン台国の外務大臣ムテダ・アスルムがやってきて…」
サフィアはできるかぎり大声で、みんなに聞こえるように(みんなも聞き耳を立てていたのでそれほどの大声では無いが)言った。
アスルムが援助を要請してきた事、それがSPSの議会で可決された事、明日オッドル・マスト司令官と会談すること…。話すのに数分が掛かった。
「…近日、戦闘が行われるのは明らかだ。それから、アラビア砂漠に行く一個連隊は、バランスの取れた総合部隊第1師団第1連隊だ。司令官はソフィヤに任せる」
「え?わ、私?」
ソフィヤが驚いた顔で人差し指を胸に指す。
「そうだ。総合部隊の司令官と言う階級に立つんだから」
と、サフィアは凛々しくうなずいた。
「…サ、サフィアは?」
「俺か?俺はオーマン台国の行動によるな。どっちにしろ…大戦が起こる可能性は十分ある。みんな、心して、時間を大切に、気を引き締めて訓練に励むように」
「ラジャー!」
隊員は独特の敬礼をした。
そして、サフィアは忘れかけていた食事をとり始めた。



 8月15日 午前9時 SPS会議ノ間
 サフィアと、鳥人王国鳥神のソフィヤ・ブルースカイ。議長のマピオン・パソナム、外務官のキャディーマ・ディーラ、そのほか王国の代表者が左側の長テーブルに揃って座っている。中央幻影機を挟んで右側のテーブルはがら空きだ。
が、その時、幻影機が始動し、右側のテーブルに幻影の人々が次々と現れた。すでに全員座っている。
幻影機で現れた人々はオーマン大国の代表である。ソフィヤの向かい側には色黒の男性が座っている。ソフィヤの右隣にいるサフィアの前には…髭が濃い、いかにも強そうな男だ。そして、ムテダ・アスルムはサフィアの右にいるキャディーマ・ディーラと向かい合った。その隣に議長のパソナムがいる。
「時間通り…ですな?」
アスルムが始めに話した。
「時間通りです。外務大臣。では、まず自己紹介でもしましょう。私はサフィア。SPEの隊長です」
サフィアが立ち上がって言うと、向かい側にいた髭の濃い男が立ち上がった。
「サフィア隊長、お会いできて光栄です。私の名はオッドル・マスト。オスマン中立軍110代目司令官である」
マスト司令官は一礼をして着席した。フム…見た目によらず礼儀のいい人だ。
次にソフィヤが起立した。大きなポニーテールが揺れる。
「私はソフィヤ。ソフィヤ・ブルースカイ。鳥人王国の鳥神…女王でSPEの総合部隊司令官でもあります」
最後に大きく礼をすると座った。やっぱりおてんばだな…とサフィアは思った。
「な、なんだと!?女王様が軍を引き連れているのですか!?非常識な…」
「だ、大統領!なんてことを…」アスルムが止めに入った。
「し、失礼。第一印象が非常にマイナスになってしまったな。ソフィヤさん。私はオーマン台国大統領のロー・ヴァージニアス。先程は平和主義の象徴といわれる鳥人王国なのに鳥神と軍と親密だったので驚いてしまったんだ」
ヴァージニアスは礼をし、ソフィヤにもう1回礼をして座った。
ソフィヤは少し傷ついているようだったが、この大統領は平和を願っている事がサフィアにはよくわかった。
「あたしはキャディーマ・ディーラ。お会いできてうれしいです。平和を目指して頑張りましょう」
ディーラはきれいな白翼をもった女性だ。
「では私の自己紹介を。私はムテダ・アスルム。オーマン台国外務大臣だ。皆さん、よろしくお願いする」
アスルムはゆっくり礼をした。
「…マピオン・パソナム。つい最近議長になった者だ」
クールな議長はスッと座った。
それから数10人の自己紹介を終え、本題に移った。
 議題は平和を協和して目指す条約作成だ。
「私達は、これから起こるだろう大戦にも通用する条約を作りたいのです。だから、長期にわたる戦闘でも負けないように産業を協同したいんです」
「なるほど、鳥神ソフィヤ、それは良い提案だ。だが、いざ戦闘になると我々の戦力は低い。戦えるとしても境内のみだな」
マスト司令官は難しい顔をした。
「…今はアラビア砂漠での問題でしょう?この問題を乗り切らなければ大戦は起きないわ。それ所か、私達もいないでしょう」
「ディーラ氏、ありがとう。また話がそれてしまったようだ。今までの話をまとめると連合してあの事件を捜索する。そして戦闘時には塹壕戦をする。戦闘が長引いた時のために産業…つまり食物や品物を協同する。他に、意見は?」
アスルムの声が響き渡った。
しばらくして、クールな議長が口を開いた。
「…相手はSPEが言うにDDDらしいな。そして、DDDの主力兵はドロイド。ドロイドを倒すのに一番いい手は指令塔を倒す事…だな?司令塔は手ごわい。私は軍人ではないのでよくはわからないが、司令塔は敵の長がやるものではないのか?そいつを倒せばこの事件の真相も明らかになると思う。だから、親玉を倒す事のみ使う戦士を数人率いれた方が良いと私は思う」
「…難しい意見だが、敵はその司令塔とやらを倒せば勝てる。だから我々はその戦士の援護をしろと言うわけか。しかし、それは時間の問題だな。時間が長ければ長いほど死者が増える。尊い命が消え、何人もの人が悲しむ」
大統領が言った。
「塹壕戦となるとなおさらです」サフィアの眉間にしわが寄る「でも…指令塔を倒さないと私達に勝機はありません」
「うむぅ…だが、戦士がいようがいないが、死者がでる。それも、戦士がいないほうが指令塔を倒す事ができない。余計に戦死者が増えるだろう」
マストの意見で議長のマピオンが拍手をした。
その数秒後、一人、また一人拍手をした。最後にヴァージニアス大統領が大きな拍手をした。
 拍手がやみ、更に1時間の会議で条約を作成した。
 午後2時半。5時間半に及んだ会議の締めは鳥人王国鳥神のソフィヤは条約に調印して終わった。
「鳥人王国の皆様、本当にありがとう」
ロー・ヴァージニアス大統領は嬉しそうな笑みを漏らして言った。
「ヴァージニアスさん、これからも国民を大切に、お互い頑張りましょう」
ソフィヤもきれいに微笑んだ。
「それでは、私達は失礼する。5日後、アダナ川の下流にある都市、アダナで会いましょう」
ジェデン・リード司令官は敬礼をした。
サフィアは敬礼を、他の鳥人代表者はゆっくりとお辞儀をした。

アラビア進軍まであと5日。SPEとオーマン中立軍は別々に厳しい訓練を始めた。



アトガキ

皆さん、ゴメンなさ〜〜〜〜〜〜〜い!!!!!
前回の更新から早1ヶ月と半分。書いても書いても進まない気がしてきたよ…。
って事で、非常に自信のない作品になりました。楽しみにしてたのにつまらないと思った人、すまん。
さてさて、次回予告に行くとすると、サフィア達はアラビアへと行きます。
そして、戦います。
そして、行ってしまいます。
どこかって?せくぁいつぁいすぇんですよ。わかります?
というわけで、次回はもっと早めに更新したいです(泣

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Novel Editor by BS CGI Rental
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