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The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜 下巻 作者:キラ

第5回   番外編 26.5話 暗黒の記憶
26.5話 暗黒の記憶



ソーラーの戦いが終わったそのころ…。
全てのものが闇に染まった暗黒の星といえばDDD帝國連邦の第1の星と言えるDDD星だろう。表ではディマスラスターと呼ばれる星は今、非常に慌しかった。
DDD連邦の星、デススターの住民、死神が前方数百隻の中型、小型宇宙戦艦向かって突っ走る。それは高速道路の車を思わせる。
DDD帝國の各星で作らせたドロイドの連隊も足をそろえてそこに乗り込んでゆく。
宇宙戦艦は大気圏外の月のような宇宙船『スペース・ムーン』…スペースステーションの2倍ほどの宇宙球型長距離輸送装甲船…に淡々と乗り込んでゆく。
これほどの戦力を持った国は銀河系どこを探してもないだろう。しかし、DDDはほとんどの人は知らない。
超が付くほど軍事主義で秘密主義のDDD帝國連邦の統冶者はこの星で一番光り輝いている(本当に光り輝く)宮殿(パビリオンオブエンピラー)の玉座の間にいる。皇帝アストロだ。
そこに、第2の権力を持つウルフがやって来た。
「準備が整ったらしいわよ…。全戦力を5〜4ヶ月間で地球にまで輸送する事ができますよ…」
「うるせぇ!…そんな報告はいらん!」アストロは怒鳴った。
皇帝が怒るのも無理はない。なにせ鉄壁の守りを誇るスペースステーション一隻と宇宙のギャング達と呼ばれる第8連隊を一度に抹消させられてしまったのだ。
「陛下、あなたが動揺したら最強のDDDが崩れてしまいますわ…。それにあの時の戦力はたったの1厘にも満たしません…。地球にもまだ先発隊はいるのでしょ?フフフ…」ウルフが背筋が凍るような声で囁いた。
「確かにDUの言うとおりだ。地球の2国を植民地にしたらしい。新しい兵士もできた様だ」アストロは怒りを沈めてできるかぎりゆっくりと言った。
「フフフ…。じゃあそろそろスペースムーンの発射準備命令を出していい…?」アストロはうなずく「分かったわ…。じゃあそのうち来て下さいね。フフフ…」
うるるはゆっくりと扉の外へと消えていった。
一人になったアストロは空に浮かぶスペースムーンを見た。
「我が父…アシャード公爵。そして地球からここへやって来た偉大なる御先祖様…。俺様は今、あなた方の望みを叶わせる存在となりますでしょう…」
アストロはふと、気が付いたように第3の権力者、地球出身の戦闘人間、ブレインを呼んだ。

「ナンだ?皇帝陛下」ブレイン特有のカタコト声が玉座の間に響く。
「DVよ、まだキサマにあの事を教えてはいなかったな」
「あの事…トハ?よホド重要な事なのカ?」ブレインは首を傾げた。
「その通り。このことを知っているのは俺様とDDD幹部だけだろうな」
アストロは玉座の肘掛にある小さなカード差込口にカードを差し込んだ。
すると、足元の床がパカリと開き、円柱型の装置が玉座に座っているアストロのへそ辺りで止まり、装置の上面から半球体が出てきて、それがプラネタリウムの様に玉座の間が無の空間のようになった。この装置は360°映写装置らしい。
「これから、この装置によって百数十年前、我々の先祖がこの住みにくい衛星に来たのか、それからどうやってここまで成長してきたのかを映してゆく」
「ハあ…」ブレインは分かったような、分からないような微妙な頷きをした。
「分からなくてもいい。ただ、今からDDDの歴史について教えると言う事だけ踏まえていればいい」
アストロは360°映写装置のスイッチを入れた。



最初に映ったのは現在の世の中には無いほど明るい室内だった。その中でブレインとアストロは真ん中にぽつんといる。
「あまり動くなよ。物凄く広く見えるだけで実際はこの室内と同じ広さなのだからな」皇帝が言った。
すると、左方から二人の白衣を着た研究者らしき人がやって来た。
「帝国軍がベーリング湖を襲撃したらしいです。これによって帝国同盟軍と連合同盟軍との悪い関係が地割れの様に間があいた模様です」映像上の白衣の男性が言った。
「存じておる。ついに…我々が恐れた世界大戦が起こってしまうのか…」少しえらそうな博士が言った。
そのあと、彼らは無言だった。
そして、階段を登り、それでも明るかった室内が更に眩しくなった。どうやら外に出たようだ。ただ、ここが屋上ではなく、海の上の人工島であった。と言うと、今まで歩いていた室内は地下だったのか…。
とにかく、2人の科学者は歩を止めずに歩いている。そして、目の前には何十…いや、何百人の軍人と庶民と巨大な宇宙船が隣に置いてあった。
「待っていたぞ、お二人さん。知っていると思うが、先日我が連合同盟加盟国、アラスカのベーリング湖を帝国同盟軍のロシア帝国が攻撃した。それで我々は集められたのだが…。お二人さん、なぜ我々が違う星で生きなければならないのか、知っているだろうな」将軍らしき人物が言った。
「もちろんですとも。私達が発見した『電子分裂』を応用した水素爆弾の数万倍の威力を持つ兵器を造ることが可能だからです。そして、それは極めて威力が高いので、もし人類が滅亡してしまったらあなた方が新地球を創ってほしいからです」少し偉そうな博士が言った。
「そういうことだ。皆の衆」将軍は庶民達に言った。辺りがざわめいた。きっと、初めて聞かされたのだろう「我々は物凄く重大な任務を任されたのだ。そしてガゼット博士、汝は我々と一緒に来て欲しい。向こうでは科学者が必要不可欠なのだ。そしてダラガン博士、汝はここに残ってその兵器とやらを完成したまえ。この戦争を終わらせるには汝の力が必要なのだ」
2人は無言だった。そして、ゆっくりと顔を合わせた。
「ここに…残るのか?」ガゼット博士は言った。
「行ってしまうのか?」ダラガン博士が言った。
そしてまた黙った。
数分後、声を合わせて(合図も無く自然に)囁いた。
「最後に…君の名前をフルネームで言いたい」
「オルド・ガゼット」「ノベル・ダラガン」
ガゼット博士はそうだと思いついた様にポケットから携帯電話のような物をダラガン博士に渡した。
ダラガンは黙ってそれをポケットにしまい、地下への階段を下りた。後ろを振り向かず…。
ガゼットは黙って宇宙戦の中に入った。後ろを振り向かず…。
軍人や庶民達もガゼットについて行った。
ブレインは心臓の脈が速くなった。なぜダ…イよウに懐カシイ…。
「そしてだ…」アストロが話し始めたので彼は一瞬のうちに我に返った「このあと、我々の先祖が乗った宇宙船は発射した。数々の星を見たが、灼熱だったり、極寒だったり、文明が進んでいたりしていて、この衛星に着くまでに3年間かかった。そのうちに何人もの人々が飢え死にした。そして、ここに着いてからも原始人さながらの生活が105年間続いた。衛星だから作物が育ちにくく、鉄や石油が少なかったからな。」景色が赤褐色の土に覆われた広大な砂漠が現れた。
「だが、急に文明レベルが上がったのは映像にも出たガゼットの子孫が作ったイオン化反応炉と新型レーザー砲だ。前者は地球で言う産業革命の様にさまざまな分野が急速に発達できた。後者はいわば安心感だ。ほかの星から狙われるのでは…とビクビクしてきた暮らしが一変した」延々と続く工業地帯が地平線まであった。
「そして我々の先祖は小さな国を創り、軍隊を作った。そしてDDD星の戦国時代になったとは言うまでもない。諸侯は武力を使って領土を拡大したり金の力で屈強の国を取り込んだりした。まあ最終的には力が全てに勝ったのだが…。戦国の世は125年間続き、衛星はズタボロになった。だが、その中で天下を統一した父…アシャード公爵は宇宙へ進出すれば我がDDD星はより豊かになると知っていた」今よりも輝くパビリオンオブエンピラーが目の前にでんと置いてある。
アストロはここで一旦話をきった。眼は遠くを見ている。ブレインは気をそらさずに話を聴いている。
「そして父は3440年に歴史に名を残す事になった。この衛星の惑星ダルムスターを植民地としたのだ。この年にDDD帝國が建国された。ダルム星で昔から作られていたスティックストライク・ドロイド製造工場所有権を獲得し、戦力はかなり上がった。その10年後、宇宙戦艦を製造してマーズスター占領にも成功した。そこでショートナイト・ドロイドとオクトスパイダー・ドロイド製造工場と宇宙船造船所が我々の手に渡った。ただ、それと同時に父はマーズ星のエイリアンに殺された」
アストロの口元が微かにゆるんだようにブレインは思った。
「父は殺された。それは俺様が皇帝の座に立つと言う事に等しい。俺様は当時でもトップクラスの強さを持つ死神の星デス・スターを訪問し、ウルフと会い、DUに任命し、ここに連れてきた。そして戦力を高めながらたくさんの原始人が住む星々を占領した。それから数年、フェリスター略奪中にキサマがやって来た。地球からな。キサマが来て我々は気がついた。御先祖様はなぜここに来たのか?それは地球が滅びた時に新しい地球を創るからだった。だが、地球は滅んでなんかいなかった。裏切られたような気がした怒りと憎しみが込み上げてきた。キサマが来てから地球への侵攻計画が始まったのだ」
アストロは息荒げに言った。そして、ゆっくり深呼吸をしてまた話し続けた。
「俺様は確実に、素早く地球を占領したいと思った。そこであの有名なデススター科学文明の進んだアニメンス・スターに協力を申し立てた。アニメンス星は思ったとおりすぐさま応じた。デス・スターはきっと応じないと思っていたが、どういう風の吹き回しか、応じてくれた。しかも両星は我々の一部の国として協力…つまりDDD帝國は連邦化したのだ。かくして、今のDDD帝國連邦が出来たと言うわけだ。分かったか?ブレイン」
アストロはブレインの方へ振り返った。
「今…今こソガ復習の時なノデスな」ブレインはカタコト声でまとめた。
「そう言う事だ。最強の兵士死神。ドロイドの種類は5種。兵器は数十。地球一部を占領した地域を入れると数百あるかもな」
アストロは不気味なほどの笑みをもらした。
その時、アナウンスが聞こえた。
“スペース・ムーン行最終便20分後に離陸します。皇帝陛下、並びに将兵一同お早めに宇宙船に乗り込みください”
しばらく静かな時が流れた。
そして、皇帝が呟いた。
「さあ、行くか。最終決戦にな」
「了解。陛下。死と闇と恐怖を我が宇宙に」
2人は共に玉座の間から出た。

アトガキ
お久しぶりです。そろそろ体育祭が近づいてきましたね〜。
あ、ドも、ノベリスっす。
今回はなんかアストロがずっと話していたような…。長ったらしくてすいません。
DDDの過去を入れたほうが良いかなって思いまして…。
しかも26.5話って…初めての番外編みたいな話です。予定ではあともう一度 .5話があります。
次回はサフィアがやっとの思いで地球に帰還します。そこで待っていたのは…。続きは待て!

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Novel Editor by BS CGI Rental
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