34話(最終回) 第六次世界大戦
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平和共同連合会議から20日後。鳥人王国、天空要塞エレン。 この頃になるとエレン内部も9割方わかってきた。 エレン探索の中でも鳥人王国……いや、世界を揺るがしたのはレーザーではない、砲弾を発射する3連装45口径46cm砲が発見されたことだ。エレンの3段目の円周に六つ均等に設置されている。 しかもその砲に必要な砲弾を大量に保管されている一室も発見された。防錆加工がされ、強度的にも問題がないとの検査結果だ。もちろん巨大な砲も同様の結果だった。砲弾製造技術がない現在、この砲弾保管室の存在は大砲の持ち腐れではなくなった。 これほどの兵器が鳥人王国のみにあることは他国から反発の声もあがった。ただし、砲弾自体すでに考えが古く、レーザー砲に比べるものがないほどレーザーの方がハイテクになっている。だから砲弾を使用する大砲がいくらあろうとどうでもいいと言う事が一般論だからだ。 なので、連合軍から3連装45口径46cm砲排除命令は下されなかった。 大砲を軽視している世間だが、ニシャーンは違った。 「故きを温めて新しきを知る……。多分この要塞は連合軍にとっての秘密兵器、最後の切り札となるでしょう。」 ニシャーンはSPEに入隊するまえ、ある人を師に武道を学んでいた。その中で師はいくつもの言葉を残してきた。そしてそれは、どれも重要な意味を持っている。どんなに時が経とうがその価値は薄れない。 そして今、ニシャーンはこの要塞の最上階、SPE新本拠地の通信室にいる。 「変化はあるか?」 隊長が援護部隊の司令官ブロンデル・ブローライナーに尋ねた。 「只今異常無」 ブローライナーが呟くように言った。が、その報告は一瞬にして取り消された。 “SPE全隊員に連絡!エベレストランド、ファー地区、DDD連合軍によって占拠されました!” 「なんだって!」援護部隊隊員の通信にSPEは緊張が走った。「敵が何か、特定できるか?」 ニシャーンは通信兵に言った。 「はい。スティックストライクをベースに、ショートナイト、オクトスパイダー、ポニードラゴン、所々にサークルピラー、死神、そして……ムテダ・アスルムさんがいく人も……?」 「ムテダ?オーマンの外務大臣が何人もか?」 異様な空気に包まれた。ちなみにこの放送はSPE全員が聞いている。これは一体……? と、ニシャーンの通信機からサフィアの声が流れてきた。 “聞きましたか?今の” サフィアは今鳥人王国中心塔の自分の部屋にいる。恐らく、窓からファーを見ているのだろう。 「ああ、一体なんだと思います?」 サフィアはニシャーンの声を聞いて笑った。ニシャーンは真剣に聞いたつもりだったのだが。 “簡単な事、カンパンマンですよ” サフィアが即答した。確かに……もう半年ほど前になるが、ニシャーンもカンパンマンと遭遇した事がある。 「……そうだったな。サフィア。」 ニシャーンが真面目顔で言った。 と、通信兵の緊張した兵士の声がSPE内に響き渡った。 “SPEに緊急報告!オーマンのアダナ、バグーダ、チュイスタンのカッチ、ドラム、ダッカでファー同様の敵連隊が攻撃中!すでにカッチでは略奪が始まっているとの情報です!” 通信室前方にある大画面モニターに5つの都市の悲惨な動画が送られてきた。特にカッチは数秒に一度、スティックストライクがレーザー銃を住民向けて連射している。1分前の動画と、30秒前の動画と現在の動画、紅い色の割合が段々と増えていることがわかるほどだ。吐き気を伴うほどの残虐な光景だ。 “連合軍はS☆Pに援護を要請しています!” 兵士の通話に、ニシャーンは舌打ちをした。 「わかってる。すぐに各都市に1連隊を送る。それとサフィア。ラスト・ナイツはまずファーの司令塔を撃破しろ。それから各都市に行くのだ。」 “わかりました。” サフィアはそれだけ言い、通信を断った。 ニシャーンはモニターを見つめた。ずっとずっとその一点だけを見つめている。 「第六次世界大戦……ついにこの時が訪れてしまったのか。人類は、地球は、宇宙は……この大戦で全てが変わってしまうのかもしれないな……」 ニシャーンは一点を見つめながらポツリと呟いた。
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空間……。 時間……。 果たして、‘この’世にその2つはあるのだろうか。 何も存在しない空間。それは、逆に空間が無いような錯覚をもたらす。 何も存在しない時間。それは、時が動かないような錯覚をもたらす。 しかし、空間は存在している。時間も未来へと進んでいる。 ‘この’世には香りが充満している。 ほのかで、コクがあって、まろやかで、苦味があって、酸味がある香り。 コーヒー。 エーレ。 ‘この’世にはエーレが存在する。 エーレがいることで、空間が存在し、時間が進んでいる事を実感する。 「クッ……」 エーレはニヤッと笑い、コーヒーをすすった。バイザーから発せられる赤い5本の横線の光が鮮やかに光る。 「俺はエーレだ。アンタら、これから言うことで少し驚くかも知れねえが、俺の話を聞いてやってくれ。いいな?」 エーレはマグカップを揺らした。中のコーヒーが波を打って揺れる。 「これで、The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜は終わる。ここまで読んでくれてありがとうよ。感謝するぜ。」 一瞬、空間が揺れたようだ。又は、時間がゆっくりと進むように感じているかもしれない。 「なぜかって?それはな、『WISHES to The WORLD〜星に願いを〜』、『THREE STARS and the EARTH〜他星への進出〜』、『The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜』から生まれし小説、『ワールドフューチャー サーガ、ファイブエピソード』をこれの作者が作るからだそうだぜ。全く、気まぐれな奴だな。」 いつも通りゆっくりと呟く。その姿は『クール』と言う言葉が似合うだろう。 「ワールドフューチャーは5つのエピソードに分かれる。そして、俺が登場するのはエピソードXらしいぜ。クッ……驚くんじゃねえぜ。エピソードXは、ワールドフューチャーで最初に公開される作品らしい。ワールドフューチャー……、直訳で世界の未来、未来の世界。最も遠い未来に当たる俺たちの世界。そこから現代へ遡るようにこの作品は進むんだとな。」 エーレは一歩、二歩と歩んだ。 「クッ……『The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜』、まだまだ謎は多く残されている。第六次世界大戦の行方は?DDDは?登場人物たちの過去は?Drハカセ……?SFAはだれ?俺のこと。影のキーマン、アナ。DDD、そして、恋の行方……。全ては謎のままこの小説は終わってしまう。しかし、この終幕は次のスタートでもある。始まりは全ての原点。原点とは、宇宙。宇宙にある一つの星、地球。地球の世界。世界の未来、ワールドフューチャー……。全ては、ここでわかるだろうさ。」 エーレはコーヒーを一口、二口飲んだ。そして、きびすを返す。 そのままエーレは闇の中に溶け込んだ。そう、まるで恋するブラックコーヒーの一部になるかのように……。 空間は空間で無くなり、時は時で無くなった。 そして、‘この’世は‘また’閉ざされた。
遙かなる時の神殿……場所も時も、空間も存在しない、神秘なる神殿。
Doesn't End. To Be Continued.
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