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The LAST WORLD WARS〜最後の戦い〜 下巻 作者:キラ

第12回   第33話〜平和共同連合会議〜
33話 平和共同連合会議



 “今立っている大地の底に、もう一つ大陸があるなんて誰が思うだろうか。
 地底大陸……かつて世界大戦が激しさを増してきたころ、人々は戦いの日を避けるために地下のあらゆる場所に巨大なシェルターを作った。シェルターの中にいれば戦争は無い…そう思った人間によって各シェルターは埋め尽くされ、少しでもシェルター内の空間を空けようと横へ横へとシェルターは広がっていった。
 次第にシェルターとシェルターはくっつきあい、やがて一つの、地上にある全ての大陸を合わせたより大きな超巨大シェルターとなったそうだ。それが地底大陸の起源である。
 地上は争いが絶えず、自らの大陸にも戦火が忍び込もうとしたとき、地底大陸は団結し、地底連邦を建国した。 地底連邦は地上との交流一切を禁じ、やがて地上人には忘れ去られていった。
 その後、地上で第五次世界大戦が勃発し、U-Puが使用された。その爆弾の強力な電磁波は地底大陸をも直撃し、罪無き人間、生物を殺した。地上の『サイコバリアシールド』で守られたこの一体を除いて地底連邦は死に絶えた。
 そして、本日会議を行う場、アンダグランドキャッスルの地底城が代わって政治の中心となったのです。”
 サフィアは平和共同連合会議次第の1ページ目にある地底連邦が提供した地底連邦の紹介を見ていた。 
 サフィアは今、アダナの地底連邦入口から地底連邦第一の都市、ルミネにいる。SPSにもあったエア・パイプラインがある建物の中にいる。
「サフィア騎士長、なぜわざわざこんなものを載せているんだ…って顔に書いてありますよ」
隣にいるSPE代表ニシャーンが言った。サフィアはラスト・ナイツの代表…そして、今はサフィアの左肩を枕にして寝ているブルースカイ陛下の護衛のためにここに来た(緊張感無いな…と思いながらもサフィアはソフィヤを寝かせている)。
「まさにその通りだよ、ブドー隊長」
サフィアが次第を閉じながら言う。
「なぜなら、地底大陸の存在を知らない人が多いからですよ。我々はロッジャーが地底連邦出身なので余りそうとは思いませんが、99.9%の人は知らないでしょう。だから簡単な説明をして、少しでも親近感を持たせたいのでしょう」
ニシャーンは最後に自分の推測を入れる癖がある。
「親近感…持つかなあ?」
サフィアは頭をカリカリとかく。
「でも、この説明によるとこの国は戦争をとても嫌うのに、なぜこの会議に参加したんでしょう?しかも会議の場まで提供してくれて…」
「確かに…。きっと、何か策があるんでしょう。急に戦意があがったとか」
「それは無い」
ニシャーンが真顔で言ったのでサフィアは苦笑いしながら言った。
「ですよね…」
急に隊長の顔がとぼけたのでサフィアはずっこけた。ニシャーンが意外とボケがうまい。
 鳥人王国から会議に出席する人たちがやって来た。SPS代表エーレ、SPL代表コール、鳥人王国議長パソナム…コンビニで飲み物を買ったりコーヒーを試飲したり(エーレのみ)…していたらしい。
 その時、目の前の自動ドアが開いた。このままドアの向こうに行けばエア・パイプに入り、目的地のアンダグランドキャッスルに到着する。
「ソフィヤ、行くから起きろよ」
と、サフィアは優しくソフィヤの肩を叩く。
 ゆっくり目を開けたソフィヤはサフィアの声にうなずき、フラフラおぼつかないもみんなと一緒にエア・パイプに入った




 サフィア達は地底連邦の首都、アンダグランドキャッスルのエア・パイプライン終着所に着いた。目の前には地球の中心につながりそうなほど深い大穴がある。
 穴は風の吹かれて低いうなり声のような音が聞こえる。
「この穴以外ここらへんは何もないよ」
ソフィヤは不安そうに辺りをキョロキョロしながら言う。
「皆…この看板を見てくだされ。<↓地底城 →地底城城上町に続く螺旋エスカレーター>…だそうだ」
マピオンはいつも通り低い声で言った。
「ク…闇へしたたり落ちるコーヒーの水滴…俺たちはそれになるのさ」
エーレはブラックコーヒーをすすった。
「では、我々、行こうではないか」
コール隊長を先頭に王国代表者たちが後に続いた。

 しばらく穴の底に着くのには時間が掛かった。着いたのは30分後であったから、どうしても気が抜けてしまう。
しかも、底には城は無く、城上町が広がっている。看板にはこう書かれている。
<→地底城→東へ→1km→>
皆は、呆然と立ち尽くした。
「い、行こうではないか。そして、一刻も早く楽になろう。な、騎士長殿」
「な、何でここで俺に回ってくる!?」
どうも雰囲気が合っていなくて、場は沈黙した。代表者たちは静かに城へ歩き始めた。
 しばらく歩くと、地底城が見えた。と言っても、見えるのは入口のみ。地底と言う事もあり、地下へと伸びているのだ。
「では…入るぞ」
マピオンが門番の人になにやら身分証明書のようなものを見せるとそう言った。と同時に大きな大きな扉が滑りのよくないドアが動く様な音を出しながら開いた。
 内部はまず、螺旋階段で下に降りることになっている。そして、地下1階に着くと今までの陰気臭い湿っぽい館のイメージが払われた。
 ピカピカの床、清潔感のある壁、天井にはシャンデリア。ここは地底城のロビーらしい。
「あ、そこの皆さん。」
ロビーにいる従業員…王の下部だろうか、忙しく歩き回るメイドの一人が団体に呼びかける。
「ようこそいらっしゃいました!カストレ・サティ陛下の地底城です。えっと…あなたたちは、本日予定されている平和共同連合会議にご出席される方々ですね?」
メイドさんはそう言うと一人ずつ紙とペンを手渡した。もちろん顔はスマイルである。
「これに、サインと個紋の印鑑を押してください。」
みんなはそれぞれサインをし、個紋を押し、渡したメイドに返した。
 メイドさんは書類の数を数えるとスマイル顔で言う。
「承りました。鳥人王国、SPE、SPS、SPLの代表者の方々ですね。では、私についてきてください。」
メイドさんはスマイルを忘れずに奥へと歩き始めた。サフィア達も後について行った。
 地底城の広さは想像できない。なぜなら、地上ではなく地下に伸びているからだ。しかも内部は複雑で、全ての道、部屋を覚えるのは何年も掛かりそうだ。
 右、左、左、階段降りてまた左……。どれほどの長さを歩いただろうか、会議が始まる前から疲労を感じてきたころ、いかにも重要な部屋だと認知できる扉が目の前に立ちはだかっている場所まで来た。
「評議会場でございます。では、ごゆっくり。」
最後までスマイルを忘れずにメイドさんは礼をして、来た道を戻っていった。



 扉は開かれた。
 その瞬間、視界が一気に開かれた。地下へ何10mも続く縦穴のようだ。ちょうど城上町につながる大穴のようだ。さすが人類最大であった国、連邦国家だ。
 サフィアはまじまじと辺りを見渡す。縦穴の壁にへばりつくように一、二人座れるほどの元老員席が付いている。人々は少ない。いや、そう見えるだけかもしれない。ここにいる人は会議に出席する人々だろう。
 と、上から宙に浮く円盤の様な席が降りてきた。
「ようこそ、地底連邦へ。」
宙浮く円盤に乗っている女性が言った。ハデで大きな衣装からして、相当位の高い人物だろうとサフィアは思った。
「わたくしはカストレ・サティ。地底連邦の女帝でありますわ。」
サティ陛下は深々と礼をした。サフィア達も敬意を示す。
 女帝…つまり、女性の皇帝、帝王、天皇。そんな人物が
「まずはあなた方のお席をお教えにならなければなりませんわね。それでは、この議長席にお乗りくださいませ。」
陛下が手を振ると宙浮く議長室がサフィアたちのいる扉によってくる。彼らはそれに乗り、ゆっくりと移動している。
「…この評議会場がいらないほど大きいか、おわかりになりますか?」
女帝陛下が前を向きながら呟いた。
「遙か昔…U-Puがまだ存在しなかったころ、ここのお席は全て元老員の方々で埋め尽くされていたのですわ。でも、U-Puの電磁波によってほとんどの人々が生命を絶たれました。この城ができたのはその更に昔。地上で核戦争が起きていたときに創建されましたわ。この評議会場のシステムもその時のものです。ですがわたくしたちの技術も衰え、今のわたくしたちにはシステムのシの字もわからない状況なのです。ですから、この会場を小さくしようとしてもできない…と言うわけですわ。」
陛下は独り言のように言った。
 サティ陛下ってマイペースなんだな…とサフィアは思った。
「さあ、着きましたわ。この席がSPE様のお席。その右側が『ラスト・ナイツ』様のお席。上にはSPS様のお席がありまして、右にSPL様のお席となっております。鳥神陛下のお席はSPE様のお席の上でございます。そして、パソナム議長様、ここにお座り下さい。では、そろそろ始まると思いますので、準備の方をよろしくお願いしますわ。」
そのサティはSPSの上の席に座った。隣は地底連邦の代表者らしい人だ。一人はメガネをかけている女性、もう一人は丸顔の青年だ。
 ちなみに、オーマン共和国代表はサフィアの右にいるヴァージニアス大統領。その隣がオッドル・マスト司令官だ。ニシャーンの隣に…あのヤンがいた。その上にはアクアマリン長老だ。2人の存在を知ると、なぜかサフィアはほっとした。
 ラック・コールの右隣には年老いた人物が深々と座っていて、その右側に、きりりとした軍服姿の男が座っている。どこかの軍隊の司令官だろうか。
 サフィアが後ろを向いていると、前方……議長席片手を叩く音が聞こえた。いよいよ始まるのだ。
「コホン、では、これより、第一回平和共同連合会議を始める。それにいたり、まずは各国、各団体の代表者の自己紹介をやりたいと思う。では、まず本日議長をやらせていただくマピオン・パソナムである。それでは、オーマン中立軍の代表者からお願いする」
マピオンが座り、前席最右のマストが立ち上がる。
「我はオーマン中立軍、正式にはオスマン中立軍110代総司令官、オッドルマストである。生命の父である地球を略奪するものは断じて許さない。そう決意してここにやってきました」
マストはゆっくり礼をして、着席した。
次にその隣の大統領が立ち上がった。
「私はロー・ヴァージニアス。オーマン台国の大統領です。戦争は断じて反対です。しかし、時には戦わなければ大切なものを失ってしまう。だから、皆さんの力をお借りして、私も皆さんの力になりたい」
次はサフィアだ。
「SPEラスト・ナイツ騎士長、サフィア。この騎士団は敵軍の司令塔を破壊するために組織されました。故に、命の危険が最もあると言ってもいいです。しかし、ナイトとなった選ばれし7人はその命を地球の為に役立てます」
サフィアにしてはソフィヤは感じていた。こんな軍人のようなサフィアは初めてだった。
「SPE3代目隊長ニシャーン・ブドーであります。我々SPEは恐らくこの代表者各位の中で敵と思われるDDDと一番多く戦っていると思われます。もちろん私も2、3度戦っております。だから、この経験を代表者各位にお教えしたいと思います」
ニシャーンの次は海底のヤンだった。
「アクアン・フォース、オーシャンのアンゼンベルポリス保安長ヤン・ユリアーナ。あたしら、強い。みんな、助ける」
サフィアはほっとした。あの時はとてもビクビクしてたのに、今はとても落ち着いている。しかも保安長。あの集落を守る長じゃないか!
「同じくアンゼンベルポリス長老ホフ=フォット・アクアマリン。おれたち、凄い力ある。みんな、守てやる」
長老の次はソフィヤだ。
「え、えっと…私はソフィヤ。ソフィヤ・ブルースカイ。……DDDの科学は地球より進歩してるから………とにかく、気をつけて下さい!敵は強いです」
ソフィヤは顔を真っ赤にしながら座った。自分の役どころを言ってないことに自分自身は気付いてないようだ。まあ、ブルースカイと言う苗字さえ言えばソフィヤの場合わかるのだが……。
 あいつ、緊張してるな。とサフィアは心の中で思った。
「クッ……俺はエーレ。SPSから送られた使徒。地球防衛長でもあるな。コーヒーをこよなく愛するぜ。おっと、勘違いするなよ。俺はこれが真面目なんだ」
エーレが普段と変わりなく言った。確か、エーレの後ろには地底連邦の女帝がいるはずだ。よく無礼なことを言える。……と、これがエーレなのか。
「我こそはSPL隊長並びにSPLスターランス連隊総司令官ラック・コールである!皆様、以後よろしくお願いいたす」
コール隊長は敬礼をして座った。
 この次からサフィアに見覚えがない人たちである。
 年老いた老人が杖を支えにゆっくり立ち上がった。
「ワシはチュイスタンの王長タージ=ウル・ラパントじゃ。年はもう忘れてしもうた」
タージ=ウルはそれだけ言うと杖を支えにゆっくり座った。
 その次は、きりりとした軍服姿の男だ。
「我輩はコーティス=ア・ディルス、チュイスタン防衛本部本部長だ。チュイスタンの防衛ならばお任せあれ」
コーティス=アはゆっくり敬礼をし、ドスンと座った。
 次は最後尾席の右側の人物だ、一人はメガネをかけている女性は立ち上がった。
「皆さん、地底連邦へようこそ。私はリアン・マクシミ外務です。皆さんのお力になれて光栄です」
マクシミが座り、今度は最後尾席左側の人物、丸顔の青年が立ち上がった。
「僕はアド・ケイン。地底連邦の国防長でルミネ騎士団の団長でもあります。多分、守りに関しては地球の中で一番かたいと思います。井の中の蛙かもしれませんが」
ケインは座り、いよいよ最後、女帝陛下だ。
「わたくしはカストレ・サティ。わが国の女帝でありますわ。あと、ほんの少し言いたい事がありまして…よろしいかしら、議長様」
「ム……サティ陛下、発言を許す」
マピオンがうなずくと陛下はソフィヤの方を向いた。
「あの……あなたは何をやってる方なのですか?」
「え…私ですか?鳥神…ですけど。鳥人王国の鳥神です」
ソフィヤの顔が冷や汗で光った。
「鳥人王国…ああ、空飛ぶお国でございますわね。そこの神様……わたくしのようなものですわね。それと……」
陛下は下を見下ろす。
「そこのコーヒーの香りを撒き散らしているゴーグルのあなた」
「クッ……ニゲェ」
「議事中だけでも集中して下さいませ」
「存じてるぜ」
そう言うとエーレはコーヒーを味わう。
 サフィアはなんか、不思議な雰囲気を味わった。この女帝は…まだ幼いのかもしれない。
「では…議事に移る。まずは敵軍の進行を阻止する防衛都市の選考……」



 会議は長く続いた。議事は8項目あり、一項目につき1時間ほどかかったように感じる。
 一つ目、敵軍の進行を阻止する防衛都市は鳥人王国からエベレストランドにあるファー。オーマン台国からトルコ半島の先端にあるドルカ、港町アダナに決まった。首都アンカラを防衛するには第3の都市、アダナを焼け野原になってでもそこで戦わなければならない。チュイスタンでは西ハイデラ、ダッカに決まった。両方とも、チュイスタンの主力兵器ヒマラヤ砲台とは少し離れた場所にあるため、二重のバリアにするには適しているのだ。東部アクアン・フォースではオーシャンに決まった。西部アクアン・フォースと面していて、アンゼンベルポリスがあるからだ。地底連邦はルミネ、ビルジェント、ホールイーに決まった。全て地上とつながる道がある都市だ(ルミネはアダナ、ビルジェントはチュイスタン最北端のファイザー、ホールイーは神聖渓谷)。
 次の議事、各国の大戦時司令都市は鳥人王国からエレン・シティ(要塞エレンの中にある都市)、オーマン台国からトルコ半島のほぼ中央にあるオーマンの首都アンカラ、チュイスタンはファイザーのすぐ南にある首都ランマ、西アクアン・フォースはオーシャン、地底連邦はここ、アンダグランドキャッスルに決まった。
 議事Uから連合軍総司令部は防御もかたく、科学技術があるのでアンダグランドキャッスルに決まった。
 議事Wの移動手段については国際鉄道を迅速に作ることと地底連邦のエア・パイプラインの使用で合意した。
 次の物資の共有については、物資にかける税をなくし、それと同時に国境も無くす事でパスポート無しで連合国内ならどこでもいけるようにした。
 SPLやSPSは戦闘時に援軍を送る形になった。西アクアンフォースは軍事力等配慮の上で自国の防衛のみとなった。
 戦闘時、サフィア達7人の騎士たちはそれぞれ、各国に配備される事になった。鳥人王国にソフィヤ、オーマンにサフィア、チュイスタンにシャスナ、地底連邦にロッジャー。ネオンとスーは敵本拠地に乗り込む懸軍としてスターランス小隊と行動し、リンは死神退治として各所に移動することになった。
 そして、これらの会議で決議したことをまとめた条約が作られた。

平和共同連合条約
T
この条約が適応される国は地底連邦、鳥人王国、オーマン台国、チュイスタン、アクアン・フォース西部である。そして、適応されるS☆PはSPS、SPE、SPLである。
U
連合国軍総司令部は地底連邦アンダグランドキャッスルである。
V
各国の大戦時司令都市は以下の通りである。
地底連邦:アンダグランドキャッスル
鳥人王国:エレン・シティ
オーマン台国:アンカラ
チュイスタン:ランマ
アクアン・フォース西部:オーシャン
W
防衛都市はルミネ、ビルジェント、ホールイー、ファー、ドルカ、アダナ、西ハイデラ、ダッカ、オーシャンである。防衛都市とは敵軍の進行を阻止するための都市である。
X
国際列車は大戦中、物資、兵器、兵士等の輸送を優先させるが、大戦終了後は民間、物資のみの輸送になる。
Y
連合国内での物資の輸送等で税をかけることは大戦中、国境がないので禁止にする。ただし、資金援助や食糧援助は自由にする。
Z
SPS、SPE、SPLは各戦闘で援護要請が出たとき出動する。ただし、援護でなくとも進撃、防衛等の戦闘は一向に構わない。
[
ラスト・ナイツは激戦地に配置するよう配慮する。
\
この条約は大戦終了と同時に廃止される。

 条約はこれに更に細かい物が付け加えられた。
 そして、明朝、この条約に5カ国と3つの団体の印が押され、条約が完成した。
「コホン……それでは、閉会の言葉、カストレ・サティ陛下、よろしくお願いします」
マピオンの暗く、クールな声の次に、陛下の高い声が出始めた。
「皆様、本当にお疲れ様です。わたくし達もこのように長い会議は初めてでございます。それでは、この長い時間をかけて作りあげた条約を尊重していきましょう」
陛下は深々と頭を下げた。これで……世界の運命は変わるのだろうか。



 評議会場第7控え室
 この十二畳ほどの殺風景な部屋にサフィア、ソフィヤ、エーレが休んでいる。ここで仮眠をとってから帰るのだ。
……と言うものの、エーレはブラックコーヒーを飲み続けているし、サフィアは事務的なことをしている。実質3つある寝床で横になっているのはソフィヤのみである。そのソフィヤも目を開け、一点を見つめている。
「痛い……よく地べたで寝れるよね。フトンなんて誰が発明したのかしら?それに、狭いから翼に変な癖がついちゃうよ」
なれない寝室のため、落ち着かないのだろう。
「我慢しろよな……」
サフィアが苦笑いをした。
 そう言えば、ソフィヤは鳥人王国の鳥神だ。その前は姫。あの鳥人王国中心塔最上階にずっと住んでいた。学校に入っているが、少し民間人とは感覚が違うのかもしれない……。そうサフィアは思った。
「ねえサフィア」
ソフィヤがさっきより静かに言った。
「私、鳥人王国の代表って言える人だけど、私ってなにもないのよね。だって、私16歳だよ!できるわけ……ないじゃない……」
サフィアはここまで感情の変化が激しいソフィヤを見るのは初めてだった。
「ソフィヤ……」
サフィアは彼女の名を言う事しかできなかった。ソフィヤの言う事が自分にも当てはまるからだ。
「サフィアだって思ってるでしょ?私はイザナギにも勝てなかった。私は弱い。だから一番安心できる鳥人王国に置いたんでしょ?」
「違うよ……俺は、ソフィヤは死んじゃいけないから王国に置いたんだ」
「私が死んだら王国は大打撃を受ける……だから、私を王国に置けばDDDが王国を占領されても……」
ソフィヤはここで口を止めた。もう何を言っているのか分からなくなっているのだ。
「ソフィヤ……目を閉じて。俺は、ダンスパーティーの時に約束したはずだよ。だから……俺を信じて、な」
ソフィヤは動かなかった。少しサフィアが近づいてみると、ソフィヤは寝息を立てていた。
 サフィアはほっと一安心して床に座った。
「クッ……仲良いな。本当の意味で……」コーヒーをすすりながら言う「ブラックに油を注ぐと油が浮き出す。混ざり合わないしまずくなる。逆にブラックにミルクを加えるときれいなクリーミーな色になる。味もまろやかになる。アンタは油じゃなく、ミルクなのさ」
エーレはマグカップをゆっくり回している。
「あの……意味わかりませんけど」
「意味なんてねえさ」
その一言で、サフィアはずっこけた。
「だがな…………守ってやれよ。あいつにはもうアンタしかいないんだからな。父はブレインに殺され、母は7年前のダンスパーティーの数日後消えた。あいつは不安を今まで隠してきたんだろうな」
エーレの言葉を聞き、サフィアはソフィヤの寝顔を見た。気のせいだろうか、うっすら涙を浮かべてる。
 サフィアはもう一度エーレの方を向いた。
「……なぜエーレはソフィヤの過去のこと知ってるんですか?」
「クッ……知っているものは知っている。知らないものは知る必要がある。だから俺は知っているのさ」
エーレの説明は少し分かりにくかったが、サフィアはうなずいた。
「ありがとうございます。あ、じゃあ俺は寝るから……エーレも早く寝ろよ。コーヒー飲んでないで」
「気にかけてくれてありがとうよ。だが、俺の恋人を飲んじまったら、当分寝ることはできねえのさ」
そう言って、エーレはコーヒーをすすった。エーレの恋人はコーヒーだ。
 サフィアはフトンの中に入り、ゆっくりと目をつむった。
 今日の会議の内容がぐるぐる脳裏を駆け回ったが、やがて渦は乱れ、消滅し、サフィアは眠りに落ちた。
 それでも、エーレはコーヒーをすすっていた。


アトガキ
ドモ、城ヶ崎勇輝です。
今回は動きがありませんでしたね。あ、でも次回から動きまくりです。もう戦争ですから、悲惨な予定。
しかし、第六次世界大戦の大半は省略するため、予定より早めに最終話に行くと思います。
世界大戦の詳細はワールドフューチャーX(仮)でやります……多分。
次話、第六次世界大戦 です。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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