17話 運命“後篇”
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さっきの悲鳴はソフィヤの悲鳴だった。 彼女は木の根の穴に隠れていたが、そこにフィーが現れてソフィヤが飛び出した所、例の弓と矢でまた宙に魔方陣を作り、アニメンス・ポニードラゴン(AP)とマーズ・オクトスパイダー(MO)の集団を呼び寄せたのだ。 ばるるる…と言う馬の様な排気音。ブィィィン…と言うビームソードの空を切る音。 そして、ソフィヤの正面にはフィーが弓を構えて立っている。 「さあ…ついにキサマの最後の運命が訪れたようだ…」 フィーが冷たい声で言った。(確認ですがフィーは女です) 「ここまでの…ようね…」 ソフィヤが荒い息を吐きながら言った。 「分かったか…。キサマの最後の運命は確か味方を裏切り、暗殺する。フフフ…今から我々の言う事に逆らうな。逆らったら何も言わずに殺す」 影で隠れたフィーの顔が不気味に映る。どうやらマジらしい。(更に確認の為、フィーは女です) ソフィヤの生き延びる為の道はただひとつだけ、もう敵の味方にならなければならない。 だからソフィヤは「…分かりました」としか言えなかった。 「よしよし…それではキサマは運命と同じようにあいつらがいる場所へ行き、5人全てを殺害して戻って来い」 「え!?そ…それはつまり…」 ソフィヤも分かっている。それはサフィア達との縁を切り、ましてや敵として殺す…そんな事ソフィヤにはできっこない。 「もちろんキサマがその任務をやっている間、数隊のドロイドを近くに忍ばせておく。分かるか?我々を裏切ったその瞬間、キサマの人生は幕を閉じる」 「そ…そんな…」 「分かったのなら…ゆけ!」 フィーが進めの合図を出した。 ソフィヤは少し立ってから歩み始めた。 彼女にも考えがある。SPEで何度も言われた自分の命を大切に…と言う事を第一にしての考えだ。 しかし、それはサフィアやロッジャー達を自らの手で殺すと言う事につながる。 一体どうやって…自分とみんなを共に救う手はないか…。 ついに木々の影からサフィアの影が現れた。
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彼女は立ち止まった。そして、また少し考えた。 その時、ある案が浮かんだ。自分も、仲間も一緒に救うただひとつの光りが――見えた。 「ソ…ソフィヤァ!」 スーが彼女を見つけて叫んだ。みんなも一斉に振り返る。 「だ、大丈夫か!?さっきの悲鳴でみんなここに駆けつけてきた所なんだ」 サフィアが少しソワソワしながら言った。 「全く、オイラ達は本当に‘みんなは一人の為に’じゃんね」 ロッジャーがため息を吐きながら言った。 「ロッジャーの言う通りだね。私達はあなたの為にここに来たんだから…」 シャスナが目を輝かせながら言った。 どうしよう…。ソフィヤは段々不安になってきた。 もし…みんな知らなかったら…ソフィヤの緊張が高まってきた…。 その時、耳の奥の方で誘う様な声が聞こえた。 ――殺せ…奴らを…皆殺しに…殺れ…殺るんだ―― ソフィヤの頭がくらくらしてきた。 「ソフィヤはん?どうしたんや?」 ネオンの声ではっとソフィヤは我に帰った。 「あ、いや…何でも無いわよ…ただのめまいよ」 ソフィヤはううんと首を横に振った。 ――殺せ…今すぐ皆殺しだ―― またあの声が聞こえた。 「さあ行こう」サフィアがそう言って後ろを向いた。他の4人も回れ右をした。 やるなら今しかない…彼女は父親の刀‘ハリケーン’を抜いた。 「我ノ…敵ヨ…立チ去レ――!!!」 彼女は全力でサフィアの背中に向かって走り出した。もう正気ではなくなっていた。 「死ねェェェ!!!」 ソフィヤの刀がサフィアの背に刺さる寸前、彼はまるでその攻撃を察知していたかのようにひらっと身を返し、彼女の突きは空をつらぬいただけだった。 「な…なぜ?」 「残念だがソフィヤ…もう一人の君が攻撃するサインを出したんだよ」 サフィアがニヤリとした。知らないうちにソフィヤの周りには今ここにいる武器を装備したSPE全員によって囲まれていた。 ドコッと言う鈍い音と共にバタリとソフィヤの身が倒れる音がした。 「ふう…あらかじめこういう場合を想定した訓練をやっててよかったな」 とても落ち着いた口調でサフィアが言った。 「せやな」 ネオンも言った。こちらも落ち着いた口調だ。 「ソフィヤさん…大丈夫でしょうか…少し強く殴っちゃいましたけど」 シャスナがライトラッシャーを見つめながら言った。幼いのに言う事は強烈だ。 「大丈夫じゃん。シャスナ、みんなみねうちで急所を狙わずにやったからさ」 ロッジャーがフウッと鼻息を吐きながら言った。 「それにしても…やけに静かだなぁ」 スーが辺りを見渡しながら言った。耳の良いスーでも何の音も聴こえないらしい。 シーンとなった。しらけたのではない。みんなも聞き耳を立てているのだ。 「敵は…大軍が遠い所にいるか少人数のドロイドが近くにいるからだな」 サフィアがひっそり言った。 その時――目の前の木の影が赤く光った。ドロイドの目の光だろうか…。 「敵は…近いらしい。レーザー…防げるか?」 「大丈夫」「平気よ」 5人は気絶したソフィヤを中心にして外側を向いた。 その時、スーっと7体ほどのマントを付けたMSが木々の影から現れた。 それらは立ち止まるとマントを広げ、その両手からビームソードを出した。 サフィアは剣を抜き、ロッジャーはブーメランを構え、シャスナは杖を取り出し、ネオンとスーはビームソードを出した。 「さあ…戦おう!」 サフィアが身を乗り出した瞬間、後ろに大きな影がある事に気が付いた。 「マ…マーズ・オクトスパイダーじゃん!」 ロッジャーが叫んだ。 「な…なんやて!あのタコはその…なんとかって名前なんか?あいつは強すぎる…。手ェ出さん方がええで」 ネオンの緊張した声が響いた。 「そんな…もう…終わりなの?」 「…悔しいが…打つ手が無い」 サフィアが言った。 あのネオンが苦戦するほど強いドロイド。勝てる訳が無い。勝てたとしても数人は犠牲となるだろう。 サフィアが武器を置いた。みんなも武器を置いた。 サフィアが目覚めた時…一体俺達はどうなっているのだろうか…。
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「ハッハッハ!もっと早く我々に従えばよかったのだ。何?キサマら、どんな言い分があっても銃殺だ」 サフィア達はあれからドロイド兵に捕まり、フィーがいる所まで引っ張られてきたのだ。 どうやらサフィア達の命も後少しになってきてしまったらしい。運命は変わらない…と言う事だろう。 「歴戦の覇者、S☆Pの端くれはこんなにも弱いとは…」 「S☆Pと言えば…SPLはどうなんだ!」 サフィアが叫んだ。 「ああ…Lか。そんなものここまでの情報が行く訳無い。ついでに言うとここら辺の周囲十qには俺様の占いにより旅行なり病死なりで誰もいないのだ。残念だったな」 フィーが不気味に笑った。(とりあえず言いますがフィーは女です) 「さあ、処刑場にコイツらを連行しろ!」 フィーがドロイドに指示を与えた。ドロイドは指示に従い、テキパキと事を進めた。 処刑場の台にサフィアが立った位の時、遠くから銃声が聞こえた。 「な…あいつら、命令も無しで何かやってるな?」 フィーが背伸びをした。 何やらと奥でガヤガヤとうるさい。 「とうとう壊れちまったか…オンボロめ」 段々その騒ぎの集団が近くにやってくる…。 どうもその騒ぎのザワザワはドロイドが発する音では無いらしい。 そして、懐かしい、あの声が聞こえた。 「諸君、我々の武見せつけるときよ!!!皆の衆、一斉攻撃!!!」 林の奥からあのSPL隊長のラック・コールが大軍を引き連れてやってきたのだ。 まずラックコールが先頭に出、叫ぶと後ろからわぁ〜っと数百の歩兵と数機の戦車がドロイド軍に向かって突撃して来たのだ。 「ま、まさか!そんな事が…あるなんて!」 フィーが震えながら言った。 戦車が火を吹き、数10m先のドロイド数隊に当たって爆破した。ドロイドが逃げ出した。 「オ…オイ!待て、戦わんか!戦え!キサマらの命などいらない!突っ込め!」 フィーが一喝すると全ドロイド軍はクルリと向きを変えてSPL軍に向かって突進した。 歩兵達が何やら黒い空き缶の様な物を取り出し、その上面からビームソードが出てきた(そう、まるであのSFの様な物です)。 「す…凄い」 ネオンが呟いた。 「SPE諸君、無事であるか」 どうやってこの戦線を掻き分けたのかは知らないがコールがサフィア達の所までやって来た。 「ああ、このソフィヤは気絶しているが後はみんな無事だ。ところであなた達の軍隊は凄いですね」 「この兵達は我々SPLの中でも特にエリートな人々を集めた他のS☆Pでは無い階級…‘スターランス中隊’である」 「スターランス中隊…あの有名な!凄い…凄すぎる」 サフィアが感動している。珍しい…。 「そうか、ならよろしい。そこで諸君達の一つ手助けをして欲しいのだが…よろしいか」 「何でしょう」 「実はだな、我々が戦っている間にこの軍隊の司令官であるフィーを逮捕してくれたまえ。不意をつく作戦である」 「なるほど…分かりました」 その時、ソフィヤが目を覚ました。 「う〜ん…ここはどこ?みんな…大丈夫?」 「ああ、平気だよ」 サフィアが言った。その時、ある考えが浮かんだ。 「そうだ!ソフィヤ、前にフィーに捕まったんだよな?」 「え?…ええ、そうよ」 「なら話は簡単だ。お前がフィーを逮捕して来てくれ。俺達が捕まった時、お前は気絶してたからフィーはきっとまだお前がフィーに従っていると思っていると思う。だから…」 「不意打ち…ね」 「そう言う事…頑張れ」 「了解」 ソフィヤは敬礼をしてフィーのいる本人に向きを変えて歩き出した。
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ソフィヤは自分がフィーに捕らわれている時の事を想像した。 そして、その感じを顔に映してみた。なんとなく無表情になった。 ついにフィーのいる本陣に着いた。 「おお、ソフィヤ…。とっくに死んだかと思った。」 フィーがおおらかに言った。フィーはまだ何も気が付いていないらしい。 「私が死ぬ訳ありません」 ソフィヤが冷たく言った。フィーはニヤリとした。 「ほう…ついに我々の味方になってくれるのか」 「ええ…もちろんです。閣下」 「そうかそうか…。で、あのやろうどもは抹殺して来たのだろうな?」 「やりました。閣下の言う通りです」 フィーが後ろを向いて言う。 「ついに我々運命師の全盛期がやってくるのか…。我々を保護して下さったDDDのご恩を少しでも―― ソフィヤは音も無くハリケーンを2本抜いた。 ――お返しいただければ良い。そう思うだろ?ソフィヤ」 そう言いながらフィーはクルリとサフィアの方を向いた。 しまった…ソフィヤが刀を隠したがもう遅い。フィーは歯をギリギリ鳴らしながら言った。 「ほう…キサマは我の手柄を独り占めしようとするのか」 「いえ…ち、違います!」 ソフィヤが戸惑いながら言った。 「いや、そうだ。顔にそう書いてある。ドロイド達よ、この女を殺せ!」 数隊のドロイドがこっちに走ってくる。しかし、その部隊はSPLのスターランス中隊の援護攻撃によって一瞬で壊滅した。 「みんな!ありがとう!」 ソフィヤが嬉しくてついつい叫んだ。 「な…キサ…マ…寝返ったな!?」 フィーが弓を構えた。身体全身から殺気が満ちている。 「いえ、寝返ってなんかいません。私は戻ったのです。私の家に…。そして、あなたを逮捕する!」 「やるなら…やってみろぉぉ!!!」 フィーの弓から数本の矢が一斉に発射された。この弓は以外にハイテクらしい。 ソフィヤは軽々その矢を避けた。 そして、走りながら刀を抜き、あの父から伝授した大技『イアイギリ』でフィーの両腕を切断した。(弱!!!) 「ハガァァッう…腕が!!!」 フィーが痛さでもだえた。 ソフィヤが彼女の首にハリケーンの先端をつけた。1pでも前に押せばフィーの首に刺さるだろう。 「フィー…あなたは宇宙法第1425条運命無限法とその他多数の罪で現行犯逮捕する!あなたの身柄は速SPSに送検されます」 ソフィヤはフィーの足に手錠…いや、足錠をかけ、腹部をロープで縛った。 「それじゃ、今からサフィア達のいる所まで行きます。もちろん、逃げる事はできませんよ」 ソフィヤはロープを引っ張って普通に歩いていたが、フィーは足に錠が掛かっている為、最終的にはズルズルとソフィヤが引きずって行き、フィー全身が泥だらけになったが、ソフィヤは気にしない。 みんなの…フィーに殺された人々の恨みを晴らしているかの様に…。 そしてなぜか、フィーが捕まって戦意が無くなったと同時に全ドロイドが停止してしまったのだった。
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フィーはロッジャーのパーソナルソルドテレフォンで宇宙警察総務署…SPSに送られた。 動かなくなったドロイドの処分は全てSPLに任せた。
地球時間(鳥人王国)3460年 6月10日 午後8時43分 ライトスター宇宙大飛行場 ロビー 「お勤め、ご苦労である!我々の到着の間、ドロイド軍との死闘、なのに一人も犠牲を出さずに戦うなんぞ…、まさに神業級の技術である」 ラックコールのお褒めの言葉だ。 「あ…ありがとうございます」 サフィアが言った。 「SPE幹部諸君、これからディマクラ・スターに行くのかね?」 「ええ、そうです」 「ディマクラスター…我々も訊いた事が無い。何かの為に我が部下もその星に行っても良いのだが…どうするかね?」 ラックコールが尋ねた。 少しサフィアが考えた後に言った。 「いえ、結構です。あの星と俺達の星との極秘会談。しかも極秘っぽいから…。きっと向こうの星が許さないと思うよ」 サフィアがそう言うとコールは声を出して笑った。 「ワッハッハ!そうだろうな。そりゃそうだ。それでは頑張りたまえ。健闘を祈る!」 「いや…だからね…戦わないじゃんよ。全く、これだから軍事オタクは嫌いなんだ」 ロッジャーがムッと言った。 「サフィア殿、そちらの狸はどこから紛れ込んだのかね?」 「オ…オイラは狸じゃない!オイラは…オイラはァァ―― ロッジャーが言葉を詰まらせた所でアナウンスが聞こえた。 <サフィア一行様、サフィア一行様、乗車準備ができました。滑走路まで来て下さい> 「やあ…乗車準備ができたって言ってるじゃん!早く行こうじゃんよ!」 ロッジャーが急かした。 「分かった分かった…。それではコールさん、今日は本当にありがとうございました。これからもがんばって下さい」 サフィア達が敬礼をした。(ロッジャーはあかんべぇをした) 「ウム、その言葉を裏切ぬ様、全力を注ぎ、この星を護る事を約束する」 ラックとスターランス中隊が一斉に敬礼を返した。
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サフィア達が宇宙戦闘機、『]・スペースファイター』に乗り込んでいる時、それを崖の頂上でその様を見下ろしている2人の影があった。 2人とも年寄りだが1人は白衣を着た研究者、もう一人はまだまだ現役の戦士だ。 「フォッフォッフォ…ナルクワよ、見たか…。ワシの衛星で映したさっきの戦闘じゃ。今乗りこんどる少年少女たちが戦っておるな」 白衣の方の影が言った。 「そうか…それで、なんで俺を呼んだんだ?ガセット」 ナルクワと呼ばれる戦士が尋ねた。 「そなた達は…才能がありそうじゃのぅ…ほれ、ナルクワ、あの戦闘機をを追跡したらどうじゃ?」 白衣のガセットが言った。 「で、その情報を送れと?…分かってるって、久しぶりに実力が発揮できるからな…」 「おお、そうかそれは良かった。では…今すぐ準備して行くのじゃよ」 「へっ…うるさいな…ガセット、そんな事言われなくてももう準備はしてある。すぐ出発してくる予定だ」 「ほぅ…アパテルの子はみんな準備が早い」 ガセットが独り言を言った。 「ガセット!発射OKだ」 「よし、ナルクワ…わし達の母星『アニメンス・スター』の為にも、闘ってくるのじゃよ」 「あれ?闘うのか?」 ナルクワが尋ねた。 「フォッフォッフォ、どちらでも良いではないか、ほれ、もう文字数が少ない、行くがよい」 ナルクワは何も言わずに一人載り宇宙船のエンジンを入れると、音も無く浮き上がった。 そして、空高くへと舞い上がった。
この男、ナルクワ・アパテル。そしてこの研究者、ガセット博士。この2人が今後、サフィア達とは違う所で活躍するとは…誰にも分からないだろう。
アトガキ あ、ドも、チャイナです。 予定ではあと2話で中巻が終わる予定です。 まあ…。悪魔で予定ですからね。 さて、最後に出てきたガセット博士とナルクワ・アパテル。まだどんな活躍するのか決まってません(な…何ィィ!!! まあいつか(下巻あたり)…出てくる予定です。待ってて下さい。 あまり書く事無いのでここら辺で失礼します。またいつか〜。(ゑ
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