14話 天の使者
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1時間後、会議ノ畳で行われている会議はまたいつもの様にほのぼのした会議に戻り、閉会した。 サフィアが1人だけで後片付けをしている時、会議ノ畳の扉がバーンと開いた音が聞こえた。 彼は驚いてその方向を見ると見知らぬ男がいた。 「だ…誰だ。どうしてここまで来る事ができたんだ?そして…名前を名乗れ」 サフィアは瞬時にベルトに掛かっている剣を引き抜いた。 「クッ…思ったより口が悪いな。サヒヤ」 そう、この男はなぜか1時間もかけてここまで来たあのブラックコーヒー大好き男なのだ。 「な…なんで俺の名前を知っているんだ?」 サフィアが尋ねた。どうも名前がなまり過ぎてる事は気にしないらしい。 「…で、何のようだ。用件と…名前を言え!」 「そうだな…サヒヤ、オメエと話がしたい。とりあえず名は『鳥神の使者』とでも言っておこう」 「は…はぁ?鳥神?使者?鳥神はソフィヤの事だろ?なのになんで俺の所にいるんだ?ついでに彼女は飲・食ノ畳にいるぞ」 サフィアが目を丸くして言った。 「ソヒヤ…クッ……」 ついにサフィアが怒った。 「お前…もしやDDDのスパイだな!ならばここで始末をして置かなければならない。覚悟ぉ!!!」 サフィアが手に持っていたフェニックソードを前に付きつけながら突進した。 そのころこの男…いわゆる鳥神の使者はと言うと、ゆっくりと何やら一見変わった銀色のマスク(前部は3本赤い横の筋が通っている。そこから辺りを見るらしい。後部は尖っている)…を装着した。 装着した鳥神の使者が言った。 「サヒア、今のオメエは絶対に俺に勝つ事はできない」 使者は上着のポケットからマグカップを一つ取り出した。 「これで十分だ。降参するなら今のうちだぜ…クッ」 「う、うるさい!スパイめが…」 サフィアはこの男に突き、斬り、はらいのコンビネーション技を繰り出した。 が…鳥神の使者はマグカップを器用に扱い、自分にかすり傷一つ与えずにポカリとサフィアのすねにマグカップで叩いた。 この一発でサフィアは何かに縛られたかのように身動きがとれなくなってしまった。 「まさか…このオレが…負けるなんて…マグカップごときにっ!さあ、殺るなら殺るが良い!!!降参だ」 サフィアは目をつぶり、歯を噛み締めて全身に力を入れた。 以外とあっさりしているサフィアである。こんな死ぬ寸前なのに…。 まだ動けない。そして痛さも無い。まだこの男がとどめを刺していないと言う事だ。 「どうした?なぜオレを殺さない?おじけ付い―― サフィアの顔面に何か熱い液体がぶちかかった。 何だろうとチラッと目を開けると目の前には真っ黒な言い香りのする液体。 ――ブラック・コーヒーだ。 「な…なんだ!これ――ブッッ!!!」 2発目のブラック・コーヒーが飛んで来た。 「サヒア…今日は何かおかしいぜ。オレが捜し求めた最高に美味いブラックだ。飲んで目ぇ覚ませ」 3発目のブラック・コーヒーが飛んで…来はせずにこの男がサフィアの目の前にマグカップ(他人専用)をコンと置いた。 「…言ったはずだ。オメエと話がしたいとな。もちろん怪我をさせるつもりは無い。ほら、立て。もう動けるはずだ」 サフィアはゆっくりと立ち上がった。もうどこも痛くは無かった。 「…そうか、わかった。じゃあ…えーっと…」 「名なら使者とでも言え」 「…失礼。使者さん、ここにでも座って下さい」 彼らは会議ノ畳の隅の方の椅子2つに座った。 「…で、俺に話したい事とは何ですか?」 「クッ…サヒア、仲間だ…仲間って何か知ってるか?」 使者はいきなり質問を繰り出した。 サフィアは考えた。仲間とは何度も言った事もある。だが仲間と訊かれてもスラスラ答えるほど正確な意味なんて知らない。 使者はサフィアの顔を見てニヤッと口をゆがませて次の質問に移った。 「サヒア、力…力とは何か知っているか?」 力…権力だろうか?いや、違うな。 「ゆ、勇気…かな?」 とりあえず、なんとなく通じそうな…最低でも間違っては無いだろう事を言ってみた。 「クッ…やはり力とは何かも知らないか。教えてやろう。力…フォースとも言う。フォースは神秘的、宗教的な力。また力とはストロングとも言う。ストロングとは破壊の力。ただし、この2つを遙かに超える力がある。力とは仲間。仲間とは力なのだ」 そう使者が言うとコーヒーの香りを楽しみ、ゴクリと一口飲んだ。 「あの…意味、分かりません」 サフィアは目が点になっている。 「クッ…やっぱりそうだろうな。いいか、どんなに強く、邪悪な力を持っていても、どんなに神に祈っても仲間と云う‘絆’の力にはとうてい敵わないのだよ」 サフィアはそれでも意味が分からなかったが、とりあえず仲間が宇宙一の力である事だけは分かった。 「それはそうと今度はオメエの願いを訊きたいな」 そう言ってまたコーヒーを一口飲む。 「願い…ですか。そりゃやっぱり宇宙の平和にしたいですね」 「クッ…平和か…果たしてそんなものできるかどうか…」 使者は遠い目(マスクをかぶっているので分からないが)…で外の景色を見た。 「え?何て言いましたか?」 サフィアが聞き返した。 「平和になるには何をする?言っとくが平和になると言う事はきっとこの世で一番難しい事だ。平和と戦争。まずこの2つの言葉は同じと思わなければならない」 平和と戦争…平和≠戦争を平和=戦争にするとでも言うのだろうか。 「良いか、この世…地球じゃない。宇宙を平和にすると言うのならなお更だが戦争をしないで平和にする事はとうてい0に近いだろう。戦争をしなければ人間は…とっくの五千年前に滅んでいるはずだ。そのくらい戦争と平和は類似なのだ。クッ…自分でも何言ってるのか良く分からなくなってきたぜ」 確かにそうだとサフィアは思った。これからもSPEにいて、平和にするのなら戦争と言う悲惨はまぬがれられないのだ。 使者はちらりとサフィアの剣、フェニック・ソードに目をやった。 「クッ…いかん、忘れると事だったぜ。そろそろ…オメエに伝授させないといけない物がある」 目をやっていたサフィアの剣を使者はガシャリと持ち上げた。 「この剣…軽いだろ?」 使者が言った。 そしてサフィアは驚いた。 フェニックソードは1.5sもあるのにサフィアだけは持つとキーボードを持った様な重さになるのだ。 「何で知ってるんですか!?俺、何も言ってないのに…」 使者はこの質問をスルーした。 「この剣を使いこなすには思いタングステン級重武器と見るのではなく、マルテンサイト級軽武器として見るのはもちろんだ」 タングステンとは元素の一種で融点、密度が高い物質だ。この小説では主流の兵器原料である。 マルテンサイトは鋼の中でも一番の高度を誇り、強度はやや低いが軽い。こちらもこの小説では主流の兵器原料である。 「そしてこの剣は周りにいる人間の存在でも大きく左右する。周囲に仲間がいる時、仲間が傷ついた時、この剣は強くなり、周囲に仲間がいない時、大勢の敵がいる時この剣は衰える。そして、自分以外にもその仲間の願いをかなえる事ができるのだ。このサイキを習得すればな。クッ…これとは‘SKレンズ’の事だ。オメエなら使いこなせるだろう」 使者は目をつぶり(あ、この男はマスクをかぶっているので本当はつぶっているかどうかは分かりません。やれやれ、ややこしいですね。)…手に気を集中させるとほのかに黄味がかった白い光が放たれ、そのガ剣全体に伝わり、消えて行った。 「クッ…これでオメエはSKレンズを使えるようになったぜ。この呪文は自分ではなく、自分の仲間だけに効く呪文だ。仲間が困った時、この呪文を使うといいぜ」 使者は更に一口コーヒーを飲んだ。 「…SK…って、何でそんな事知ってるんですか!?それにこのフェニックソードの事も…オレより詳しいじゃないですか!」 サフィアがそういえばと言うかのように尋ねた。 「クッ…そんなに教えて欲しいのか、サヒア。それはだな…オレは鳥神の使者だからだ」 「ふーん…って、それはもう言いましたから!」 サフィアが突っ込んだ。 「分からないか?サヒア。オレは鳥神の使者なんだぜ。クッ…鳥神ってのはあの鳳凰の事だぜ。神聖渓谷の奥深くに今も居ると思うぜ」 「……」サフィアは何も言わない。 「クッ…ブラック・コーヒーと言う訳か」 使者が言いたい事はブラックコーヒーの様にシーンと暗くなってしまったな…と言う事らしい。 「ついでだ…お前の運命(フェイト)…訊きたいか?運命を知る事は…時に人を幸せにし、時に人を滅ぼす事もある。オレはどっちでも関係無いぜ」 「俺は…一度運命を知って危うく身を滅ぼしかけた事があった。しかし、俺は変わらない。自分の運命で死ぬのなら悔いは無い。それは自分の責任だから…教えて下さい。ついでにあなたの本当の名前を教えて下さい」 「クッ…いいぜ」 使者は残りのコーヒーをグビッと飲み、サフィアも続いて全部飲んだ。かなり苦かった。 使者は2つのマグカップをしまうと言った。 「サヒア、オメエは今人生最高に輝ける時期だ。この時期は…今年中に終わる。それはオメエの願っていたものが打ち壊されるか…達成できたからだ。そしてこの時期の話をすると…まずオメエらは最大の敵の重要な弱点を知る事になる。その後、最後のオメエの仲間が加わる。それからオメエの人生最後の戦争が起こる。その戦争でオメエは死ぬ…もしくは勝ち、地球の英雄となる。そして最後になるが…俺の名前は‘エーレ’…それだけさ。クッ…じゃあな、サヒア。オメエとのコーヒー美味かったぜ」 コーヒー好きな男…鳥神の使者ことエーレは言い終わると席を立ち、そそくさとこの会議ノ畳を出て行ってしまった。 「ちょ…エーレさん!待って下さい!」 サフィアはエーレの後を追って会議ノ畳を飛び出したが、なぜかこの50mはある廊下には人っ子一人いないのであった。 「…不思議な人だった。初対面で最初はスパイかと思ったのになぜか最終的にはなんかずっと前に会った様な気がしてならない人だ…。それになぜ俺にあんな分かりやすい嘘を付いたんだろうか…」 サフィアが嘘だと思っている場面とは、 <この剣の事…オレより詳しいじゃないですか!> サフィア言ったのに対し、 <オレは鳳凰の使者だからだ> と言うエーレが言ったことが嘘だと思っているのだ。 「隊長も俺よりこの剣の使い方を知っている訳が無い。この剣は俺が目覚めた時からずっと俺が持っていたはずだ。この剣の性質を最も知っている人物は…フェニックソードを作った人物だ…」 サフィアは自分の言っている事が良く分からなくなってきた。 フェリスターの戦い帰還中にソフィヤに言われたあの事と重なって…。
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しばらくするとここにソフィヤがやってきた。 「何してるの?もう朝食終わっちゃったよ。…ど、どうしたの!?」 サフィアがボケッとしているのを見てソフィアが目を丸くして言った。 サフィアはやっと我に帰った。 そして彼女に今あった事を話した。 「ふーん…そんな気にする事じゃないよ」 「な…なんでだよ」 ソフィヤが普通に言ったのでサフィアは不思議に思った。 「だって…人の未来が分かるなんてどう考えたっておかしいでしょ?」 「まあ…確かにそうだけど」 でも彼はどう見ても本当にその事は起きそうな気がする。 「でも…」 「でも?」 サフィアが訊き返した。 「1つだけ…可能な事がある」 「な…なんだって!」 「でもそれは下手したら自分の身を滅ぼしてしまう。使いこなせる者は運命師と言う人だけ。100%当たる占い方法なの。でもそれは逆に人の運命を大きく変えてしまう力がある危険がある…とても違法性が高いのよ」 ――運命師―― 新しい真実がまた見つかった瞬間だった。 「運命師…もし彼がそれだったならば…」 「彼が運命を変えない限りあなたはその通りになるわね。彼は即逮捕しなきゃいけないわ」 「待て!そいつを逮捕してはダメだ!」 考えるより先になぜかサフィアは言ってしまった。 「何で!?運命師は時間が経てば経つほど被害が大きくなるのよ!今逮捕しなくていつ逮捕するの!?」 「もし…エーレが運命師じゃなかったらどうする?一度その事を聴いてしまったらもう言い訳にしか聞こえないけどエーレは運命師なんかじゃない!昔の親友の様な…そんな人なんだ!」 「でも、どっちにしろ事情を聞かなきゃ!この王族の間に入り込んだのもかねて」 「だからそれはオレとコーヒーを―― この時、非常ベルがなった。 <宇宙からの交信が届きました。地球に着陸志願を出しています> 2人は顔を見合わせた。 「この件は後にしよう。とりあえず調査衛星で調べさせてOKだったら許可を入れよう」 とりあえず2人は会議ノ畳を出、3つ下の階の外部管理の間に行った。
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調査衛星は無事に調査を完了し、不審物が出てこなかったので着陸志願を受理した。 この宇宙船は鳥人王国の貿易島の飛行場に着陸するらしい。 SPE幹部…今回はサフィア、ソフィヤ、ロッジャー、シャスナ、ネオン、スーの6人が宇宙船を招く為に一緒に付き添った。 宇宙船はもう飛行場に着陸していた。 宇宙船から丸で雪の様に何もかも真っ白な女性が出てきた。女性と言っても歳はほとんどサフィアと変わらない位に見える。 「ようこそ、我々の星、地球へ」 宇宙外務大臣カンプ・シェルが言った。 「私の名はステアリン・グリセリル。ディマクラ・スターからやってきました」 「ディマクラスター?聞いた事無いな」 シェルが言った。 「それはそうでしょう…ディマクラ・スターは衛星なのですから…この星で言う月のような物です」 ステアリンが言った。 「なるほど…で、何の様でこの星までいらっしゃったのかな?」 「それは、この星にはSPEと言う宇宙警察があると聞いたのですが、そこの総隊長となるサフィアさんと言う人はいますか?」 「あ、サフィアはオレの事だけど?」 サフィアが人を掻き分けて先頭に出た。 「私達の星に招待したいのです。何かの商談かなんかだそうです」 「商談ですか…でも俺独りで他星に行くのか?ちょっと人が違うけとオレ、独りじゃ心細いんだわ」 サフィアはチラッとスーを見た。スーは苦笑いをした。 「それなら…この宇宙船10人乗りで私達も入れると…他に5人乗る事ができますね」 5人か…待てよ、この人々の中でちょうど俺を除いて5人になるグループがあるぞ! 「じゃあ…ソフィヤ、ロッジャー、シャスナ、ネオン、スー。お前らも一緒に行こう」 「え…オラ、フェリスターの時は仲間が何百といたけど、今度はたったの5人だよぉ。心細えよぉ…」 スーは自分の役割を良く知っている様だ。 「じゃ、別にお前を地球に置いて行ってもいいんだぜ。ただし、オレが留守中はSPEの総隊長の座をゆずる。ただし、俺が帰ってきた時にSPEが崩壊していたらどうなるか分かってるよねぇ?」 サフィアと他の4人がニヤリと笑った。 「お…おっかねえ!行くッぺ!行くッぺよ!」 スーが冷や汗を掻きながら言った。 「よーし、みんな、任務はオレの護衛だ!」 「ラジャー!!!」 サフィア含む6人は宇宙船に乗り込んだ。 これは、後に重要な第一歩となる事なんて…誰も分かる訳無かった。
アトガキ 始めに言いますがこの中に少し名前を借りていた場面がありましたがそこの所は深くお詫び申し上げます。 あ…ドも、チャイナです。 この天の使者はこの小説(上・中・下全ての中で)最も重要な場面だと思っています。 …現時点では(オイ!!! 次作、光と星ではついにSPLが登場!!!…するつもりです、はい…(段々暗くなる。
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