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Two DOGs and The DOG 作者:ナコソ

第11回   サヤちゃんとビル

「――おつかれさまです」
「……どっか行ったと思ったら、ひょっこり戻ってきやがる」
「ひどい傷ですね」
「死ぬほど痛ぇよ」
「死ぬほど痛そうです」
「何しに戻って来た? おまえへの依頼は終わってんだ」
「まだ仕事が残ってたので」
「聞いてねーなぁ」
「そりゃそうです。教えてませんし」
「何だ、その仕事って?」
「知りたいですか?」
「その前に、部下を呼んでくれねーか? 手先が痺れてきやがった」
「呼んで、どうするんですか? 手当てなら、私でもできますよ」
「ひゃは! 違うねぇ。そんなんじゃない」
「ありゃ、ハズレですか」
「俺はヤツに負けたんだ、これ以上生きてたって仕方ねーのよ」
「つまらない考え方ですね」
「そうかい」
「私だったら、勝つまでぶつかります」
「そうかい」
「…………」
「…………」
「……………………」
「……………………それで?」
「はい?」
「やり残した仕事があるって言ったろ?」
「あ、その話ですか」
「俺に関係してっから戻って来たんじゃねぇの?」
「まったくもって、その通りです」
「じゃ、聞いてやる。何だ、その仕事ってのは」
「先代オーナーからの伝言です」
「…………は?」
「あの人、死ぬ前に仕事を依頼してたんです」
「ひゃはは! あのジジィ! そう来やがったか!」
「ただじゃ死にそうにない人でしたから」
「違ぇねぇ。そんで、何だって?」
「『俺を殺しといて、生きてられると思うな』」
「…………食えねぇヤツばかりだな」
「…………」
「寒くなって来たねぇ。ルシールの冬は、これだから気に食わねぇ」
「…………」
「タバコ、吸ってもいいか?」
「堂内は禁煙です」
「カタいねぇ」
「おやすみなさい」
「…………クソが」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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