「――おつかれさまです」 「……どっか行ったと思ったら、ひょっこり戻ってきやがる」 「ひどい傷ですね」 「死ぬほど痛ぇよ」 「死ぬほど痛そうです」 「何しに戻って来た? おまえへの依頼は終わってんだ」 「まだ仕事が残ってたので」 「聞いてねーなぁ」 「そりゃそうです。教えてませんし」 「何だ、その仕事って?」 「知りたいですか?」 「その前に、部下を呼んでくれねーか? 手先が痺れてきやがった」 「呼んで、どうするんですか? 手当てなら、私でもできますよ」 「ひゃは! 違うねぇ。そんなんじゃない」 「ありゃ、ハズレですか」 「俺はヤツに負けたんだ、これ以上生きてたって仕方ねーのよ」 「つまらない考え方ですね」 「そうかい」 「私だったら、勝つまでぶつかります」 「そうかい」 「…………」 「…………」 「……………………」 「……………………それで?」 「はい?」 「やり残した仕事があるって言ったろ?」 「あ、その話ですか」 「俺に関係してっから戻って来たんじゃねぇの?」 「まったくもって、その通りです」 「じゃ、聞いてやる。何だ、その仕事ってのは」 「先代オーナーからの伝言です」 「…………は?」 「あの人、死ぬ前に仕事を依頼してたんです」 「ひゃはは! あのジジィ! そう来やがったか!」 「ただじゃ死にそうにない人でしたから」 「違ぇねぇ。そんで、何だって?」 「『俺を殺しといて、生きてられると思うな』」 「…………食えねぇヤツばかりだな」 「…………」 「寒くなって来たねぇ。ルシールの冬は、これだから気に食わねぇ」 「…………」 「タバコ、吸ってもいいか?」 「堂内は禁煙です」 「カタいねぇ」 「おやすみなさい」 「…………クソが」
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