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「ここです」という名前の本屋さん 作者:麻野なぎ

第4回   第三夜
三日めが過ぎて、ぼくはちょっとだけ驚いてしまいました。
「ここです」書店のお客ってのは、とっても少ないのです。ぼくが、そう話しかけるとお店の人はなんでもないことのように笑います。

「そうね。ちょっと少なすぎるわね」
「ちょっとじゃないと思うけど」
「でもいいじゃない、ゆっくりできて」
「お店の人がゆっくりしてても、しょうがないよ」
「そうね。でも、いいの。気がつかなかった?」
「え?」
「ウチのお客様ってね、いいお客様ばかりだから」
「いいお客……って?」
「だってそうでしょ。大抵はなにがしかの本をお買い上げいただいておりますわ……ってね」
「でも、昨日は立ち読みだったじゃない」
「あら、あの人だって、ちゃんと買いに来てくれるわ。また来るって言ってたじゃない」
「信じているんですか?」
「もちろんよ」
「だって、昨日の男の人、ほとんど読んじゃったじゃないですか」
「それでも来てくれるわ。本当に読みたい本なんだから。お金ができるまで、お店であずかってあげましょう」

正直なところ、ぼくには良くわからなかったのです。でも、ぼくも、昨日の男の人はきっとまた本を買いに来てくれるだろうし、お客さんの数は少なくても、毎日、きっと誰かが本を買って行ってくれるような気がしてきました。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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