三日めが過ぎて、ぼくはちょっとだけ驚いてしまいました。 「ここです」書店のお客ってのは、とっても少ないのです。ぼくが、そう話しかけるとお店の人はなんでもないことのように笑います。
「そうね。ちょっと少なすぎるわね」 「ちょっとじゃないと思うけど」 「でもいいじゃない、ゆっくりできて」 「お店の人がゆっくりしてても、しょうがないよ」 「そうね。でも、いいの。気がつかなかった?」 「え?」 「ウチのお客様ってね、いいお客様ばかりだから」 「いいお客……って?」 「だってそうでしょ。大抵はなにがしかの本をお買い上げいただいておりますわ……ってね」 「でも、昨日は立ち読みだったじゃない」 「あら、あの人だって、ちゃんと買いに来てくれるわ。また来るって言ってたじゃない」 「信じているんですか?」 「もちろんよ」 「だって、昨日の男の人、ほとんど読んじゃったじゃないですか」 「それでも来てくれるわ。本当に読みたい本なんだから。お金ができるまで、お店であずかってあげましょう」
正直なところ、ぼくには良くわからなかったのです。でも、ぼくも、昨日の男の人はきっとまた本を買いに来てくれるだろうし、お客さんの数は少なくても、毎日、きっと誰かが本を買って行ってくれるような気がしてきました。
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