オレとしぃは今、とある映画館の前にいる。 ここまで来た理由は、数時間前にさかのぼる
―――数時間前、ギコとしぃ宅
『この季節、最高のラブストーリーをあなたに・・・』 相変わらずテレビから流れているのは、有名監督と一流男優、女優が出演したことで有名な映画の売り文句だった。
ラブストーリー
その言葉はオレにとって別になんともない言葉だったが、この場にそうでない人物がいる
「ねぇねぇギコくん、らぶすとーりーってなぁに?」
この家にはオレとしぃしかいないのだから、その人物とは当然しぃのことだ。
「えーっとなぁ・・うーん、なんと説明していいやら・・・」 しぃはまだこの世界に慣れていないため、あまり難しいことは教えられない。 だからオレにはなんと説明していいかもわからない・・・困った。
「でもよくわからないけど、この映画おもしろそうだねっ♪」
「あぁ、そうだな」
・・ん? そうかっ!それだ!
「よしっ!<ラブストーリー>を理解するために見に行くぞっ!しぃ!」
「えっ!やったぁ!ギコくん大好きっ」
しぃの<大好き>という言葉と素直な笑顔にオレは思わず萌え死ぬところだった。
そして、冒頭の映画館前に至る・・・。
オレは自分の分としぃの分の映画鑑賞券を買って映画館内に入る
すると何かがオレのわき腹あたりの服を握っている気がした ふと振り向いてみると、しぃがオレの服を握っていた。
はぐれないように、という意味でやっていたとしてもそれはとてもドキドキするものだったし、なんかデートみたいな気分になってくる。
そして、少し歩いたところに「6」と書いた部屋があったので重い扉を開けてオレたちは入る。
「わぁっ!すっごぉい!おっきな部屋だねっ、・・あっ!たくさんイスがあるーっ」 初めて来た映画館にしぃは興味しんしんだ。
――18歳の女の子には見えない純粋な笑顔 そこも彼女の魅力なんだな、とオレは思った。
そしてオレたちは席に座って映画が始まるのを待った。
―――1時間45分後
映画のクライマックスシーンに入り、見ている観客にも緊張が走っているのがわかる。
「私、ずっとあなたのことが――・・・」 という女優の声が映画館によく響いている。
しぃはスクリーンの映像に釘付けだ オレも一応映画は見ているけど、隣にいるしぃのシーンによっての表情変化もこの映画に劣らず興味深いものだった。 (なんかオレ・・・変態みたいだな^^;)
そして映画が終わって、オレたちは帰路についた。 「すっごくおもしろかったねっ!ギコくんっ」
「あぁ、あーゆーのがラブストーリなんだ。わかったか?」
「うんっ!ちゅーするとことかすっごい泣いちゃった」
「あぁ・・ラストのシーンか」
「うんっ、あのちゅーっていうのの意味はよくわからないけど、なんか泣いちゃった」
さっきからしぃは「ちゅー」を連呼している、本人は意味がわかってないけど聞いているオレが恥ずかしくなる。
「私もちゅーしてみたいなぁっ」
「なっ!」
彼女がとつぜんそんなことを言うものだから、オレは飲んでいたジュースを噴いてしまった。
「大丈夫?」
「あぁ・・・しぃ・・チューの意味わかって・・・・」
すると瞬きをした瞬間しぃの顔があと3cmもない位置にあった
言葉をあげる暇もなく、オレの唇にしぃの唇が触れた。
「!」
そして声にならない声をあげて、すぐに唇が離れた
「へぇ〜ちゅーってオレンジジュースの味がするんだねっ」
それはきっとオレがさっき飲んでいたジュースの味だ
呆然とするオレを不思議そうに見つめる彼女はこの行為の意味を知らないんだろう
その真実がますますオレの顔を赤く染める。
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