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時代錯誤 作者:pu-pa

第8回   第一部 第七話
―鳥の鳴き声が聞こえた。

「…ん?」

なぜか軋みをあげている、全身の筋肉と骨。

それを耐えて、痛む上半身を無理やり起こす。

―やはり。

目の前に広がる、野原の風景。

鳥が鳴き、ススキが揺れている。この季節にふさわしい、味のある景色だ。

「・・・・・。」

しばし、その風景を楽しんでいると、寝ぼけていた頭に、ゆっくりと思考が戻ってくる。

―起床した直後特有の、不快な粘膜が口内を覆っており、耐えられない。

口を、ゆすぎたいな。

そう。

―日常的にこなしている行動を思い出し、実行しようと立ち上がった瞬間、オレは覚醒した。

水が染み込むように、欠落していた昨日の記憶が頭に舞い戻ってくる…。

そして、何でこんなにも寝起きが悪いのか、と、自分にウンザリした。

―命に関わる。これではいつか、命に関わる。

…と。今はそんなコトを危惧している場合では無い。

何せ昨夜、冗談では無く、本気で命に関わる出来事に直面したのだから。

―昨夜オレは、鬼を切ったはずだ。

その光景どころか、握り締めた刀の感覚から、嗅いだ血の匂いまで鮮明に覚えている。

そしておそらく…。

―瞬間的に爆発的な運動をした為、気を飛ばしてしまったのだろう。

度々あるのだ、実際。剣士としては恥ずかしさを通り越し、危険な性でさえあるのだが。

―イヤ、もしかしたら鬼を切った、というのは錯覚で、本当は死んでしまったのかも。

「おい!!」

―兎に角、床で布団に包まって寝ていると言うことは、拾った者がいると言うこと。

ソイツに訳を聞くしかあるまい。…ゆえに、オレは大声で誰かを呼んだ。

―失礼だが、拾った者の名が分からぬ以上、仕方あるまい…。

「…おぉ。真。起きたか。」

―何と。

届いた声は、見知った、仲の良い友の声と酷似していた。

―というか…。

「…清明…。」

計らずも、彼女の声が口の端からこぼれる。

―その時オレは、不覚にも、安心を覚えてしまったのだ。

なぜなら、ココに清明がいるというコトは、生きている、というコトでもあり…。

…イヤ、違う。―正直に言おう。

オレは「鬼」に出会って、少し恐怖心が浮かんでいたのだ。

そこに彼女の顔。オレは、こらえようも無いほどに、安心した。―それだけの話。

「…おぅ。」

オレの言葉に、彼女はたった一言答えると、ニッコリと微笑んだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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