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時代錯誤 作者:pu-pa

第7回   第一部 第六話
―その瞬間、「鬼」は思いもかけず、突然速く動いた。

しかし、オレの足はすでに地を離れている。

―どんなに戦いなれていようと、空中で方向転換など出来るはずがない。

体全体の神経が泡立った。―死の直感。

「グォォオオォ!!」

地震でも起きたかのような地響きを思わせる、叫び声。

鬼は大きく吼え、気合をのせた斬撃を、ちょうど頂点まで飛び上がったオレに向けたのだ。

オレの瞳には、その動きはスローモーションに見えた。

迫り来る刃。それが我が身に触れた瞬間を予想する。

―その瞬間、絶望に打ち震えたオレの中で、何かが弾けた。

意識したわけでは無い。

それは言わば本能。

「っォォオ!!」

―オレは獣じみた雄たけびを気づかぬうちに上げていた。

戦いに明け暮れ、人を幾人も切ったオレの、本能。そう、「生存本能」だ。

―風を裂き、オレへと飛来する大刀に、己の刀を這わせる。

逆らわないように、反発しないように。

ギィンと、金属と金属が擦れる不快な音と共に、オレの体は地面へ無事の帰還を果たしていた。

―いなした。

防いだのでは無い。避けたのでも無い。いなした、のだ。

―一瞬の出来事。コンマ一秒の世界。

「鬼」が、驚いたような目で、こちらを見つめる。

―当然だ。

「…っ!!」

今度の雄たけびは、獣の類が上げるような、―先ほどオレが上げたモノとは違う。

息を吸い、そして吐く。

剣士だけでなく、武道を志す者達の、呼吸だ。

―先ほど危機を乗り越えたことで、オレの頭は闇夜を貫いて、青空のように冴え渡っていた。

鬼だろうと何だろうと関係無い。切って見せようじゃ無いか…。

「……!!」

「鬼」の丸太のような足に、オレの相棒が食い込む。

―そして切り裂いた。いや、切り倒した。

鬼が叫び声を上げたような気がするが、聞こえない。

―頬に飛び散った血など、関係ない。

必要なのは、足を切り落としたコトで、鬼の頭部が下がってきた、というコト。

「つぁ!!」

オレは一息に、そいつの眉間に刀を刺し込んだ…。

―想像以上の血飛沫。

鬼の広い眉間から、天を染めんばかりに、朱の液体が噴出していた。

比喩の表現では無く、まさしく「噴火」しているのだ…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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