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時代錯誤 作者:pu-pa

第32回   第四部 第五話
―刀を、握り締める。

時刻は子の刻を、幾ばくかすぎた頃。

…約束の丑の刻までは、残り僅かだ。

傍らで眠る薫を起こさぬように、ゆっくりと布団を出る。

廊下に出て、冷たい床の上を、音も無く歩ききる。

今晩は清明も泊まっているが、気づかれる心配は無いはずだ。

―その為に、秘蔵の酒を空けたのだから、今頃グッスリなはずである。

角を曲がり庭へ降りる。

ここまで来れば、完璧に気づかれる心配は無い。

オレはココで初めて肺にたまっていた空気を吐き出し、夜の澄んだ空気と入れ替えた。

「……。」

「……!?」

突然目の前に現れた、蒼。

…なぜ、この男がこのような所にいるのか。

百虎は、目を見開いたオレの目の前に立ちながらも、全く動じず、それどころか一言も発する事無く、ただ、立っていた。

「…通せ。約束があるのだ。」

何も喋ろうとしない百虎に、オレは軽く苛立ちをこめて言い放った。

…すると、突然襟元を百虎に掴まれたのだ。

見上げると、いつもの金色の瞳がオレを見下ろしている。

…その瞳は、見覚えがあった。

初めてあった夜。

とんでもないコトを、尋ねてきたときの目だ。

…オレは悟った。

この男はまたも、オレに尋ねているのだ。

おそらく、すべてを知り尽くした上で。

「…行く。お前の力は、借りんよ。」

そんな彼に、たった一言答える。

…それで十分であり、それ以上必要ない。

百虎はオレの襟元から手を離すと、半歩横にずれ、道を空けてくれた。

珍しいコトだ。

「…馬鹿が…」

通りすがる瞬間、耳元に忍び込んできたその言葉は、、

―なぜか罵倒の言葉とは思えないほどに優しかった…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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