部屋の片づけを終えたオレが、縁側に出ると。
…すでに西の空には僅かに朱が残る程度で、東の空に至っては、紫色の闇が都を包み込んでいた。
少し時間がかかりすぎたな、と、とりとめも無く考えていると、庭で洗濯物を取り込む薫と、目が合う。
「…真さん、肩。」
唐突に、薫はそのような感じの端的な言葉を言いつつ、己の肩を人差し指で示して見せた。
ほぼ、つられるような感じで、オレも肩に手をやる。
…すると、掌に何やらフワフワした感覚が伝わった。
そのフワフワを指でつまむ。
…小さな、綿ぼこり。
おそらく部屋の隅に積もっていたのであろうモノが、掃除の時に付着したのだ。
「…ね?」
ニッコリと微笑み、自慢げな顔を浮かべる薫。
たかが綿ぼこりを見つけた程度で、何とも嬉しそうな表情を浮かべるものだ。
「…あぁ。アリガトウ。」
「…ん。」
洗濯物をパンパンと足にうちつけつつ、薫はオレの礼に対し、再度微笑む。
…しかし。
薫はまたいつもの表情に戻り、これまた突然、不思議そうな顔をした。
「何だ。まだ何かついてるか?」
「…いや。何なんでしょう…。」
洗濯物を片手につかんだまま、アゴに人差し指をのせ、思案するような表情を浮かべる。
「…真さん、何か、悩み事とか、ありませんか?」
これまた突然言い出す薫。
…何だ、オレの表情とは、そこまで読みやすいものなのだろうか。
「…ねぇよ。」
少し乱暴な口調になってしまうのは、仕方あるまい。
オレは依然、不思議そうな顔でオレを見続ける薫を無視し、部屋の中へ戻った…。
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