家に帰ってきた二人。
…籠の中には、旨そうな魚が入っている。
しかし、彼らはもう一つ、土産とは言いがたいモノをも伴ってきていた。
清明。
…市の途中でたまたま会い、そのまま付いてきたのだそうだ。
最近の薫は、すっかり清明に懐いてしまっており、何だか気に入らぬ。
例えばオレが間違いを犯した時、清明と薫は手を組み、オレを責めるのだ。
…それに、薫にいらぬ「技術」を吹き込んだのも清明。
薫は清明に会うたびに、色々な「技術」を覚え、オレにオネダリする時などに使用してくる。
何ともやりにくい。本当に。
「…よぅ真。今宵は一緒させてもらうぞ。」
玄関に上がり、草鞋を脱ぐ清明。
まるで自分の家に上がるかのように、違和感の全く無い動作だ。
「…あぁ。」
その一つ一つが、いつもなら苛々とするはずなのに。
なぜか今日は、清明の悪びれる様子も無い無邪気な瞳を見ていると、無性に悲しくなった。
「…む。不満か?」
清明がオレを見上げ、眉をひそめて問いかけてくる。
…どうやら、オレの渋面の持つ意味を、勘違いしているらしい。
「…イヤ。もう少し、女らしく履物を脱げぬものか、と考えていただけだ。」
何やら悶々と悩みを抱える頭だが、その程度の受け答えはできた。
…清明はオレの言葉を受け、一度オレの頭を小突き、そのまま家に上がっていく。
今日も夕飯までの間、薫と「修行」するつもりなのだろう。
議題はもちろん、オレの「弱点」について、だ。
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