―鳥が、宙を舞う。
くるくると、仲間同士で円を描き。
果てしなく青い大空を、その輪の中に閉じ込めてしまおうとしているかのように。
オレはその光景を、家の縁側で見つめていた。
…広いこの家にも慣れ、以前していたように興を感じる事も出来るようになっている。
今、家の中にはオレ一人。
薫は百虎と共に、買出しに出ている。
「…フゥ…。」
出掛けに薫が淹れていった緑茶を一口、口に含む。
…ほど良い渋みが広がり、この光景とあいまって、何とも心地良い。
例えようも無く、幸せだ。
ほんの少し前のオレでは、どんなに強く望もうとも、絶対に手に入らなかったモノ。
…それが今、腕の中にあるのだ。
しかし。
オレにとってそれは、幸せであると同時に、絶対的な不幸でもあるというコト。
幸せとは、いつ失せ消えてしまうかわからぬ、何とも不明瞭で不安定なモノだ。
…ましてや人を幾人も殺めた男が、肩に背負い胸に抱く咎は、とてつもなく、重い。
それを知っているから、忘れてはならぬから、オレは酷く、辛いのだ。
ゆえに、今の状態は、幸せであり、不幸。
「・・・・。」
いつの間にやら、鳥の輪は崩れ、一羽一羽がはらはらと、好き勝手に飛び回っている。
オレは虚空に手を伸ばし、飛び回る鳥達を、手の中に包んでみた。
…しかし、開いてみても、鳥達の輪が元に戻ることは、もう無かった―。
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