薫が、トコトコと危なっかしい足取りで、お茶を運んでくる。
一つはオレに、もう一つは、清明に。
そしてもう一つ。
―百虎に、だ。
お茶を各々に配った後、薫は茶を乗せていたお盆を抱き、オレの隣に、ゆっくりと正座した。
オレの家の居間で、円陣を組んで座る、オレと清明と、百虎。
―昨夜の事を思うと、あり得ない光景だ、と、我ながら思う。
まさか、忘れたのだろうか。
羅生門でオレと清明に与えた、耐え難い苦痛の数々を。
「・・・・・。」
「・・・・・。」
「何を睨んでいる?」
オレと清明が、マジマジと百虎を見つめていると、唐突に、百虎が口を開いた。
「…貴様、なぜ?」
―百虎の勢いに負けじと、清明が問いかける。
…その通り。
質問が多すぎて、的確な言葉が見つからない。
よって、端的な質問になるのは、仕方ないだろう。
「…楽しそうだからだ。」
そんな清明の問いに対する、百虎の答えも、これまた端的なもの。
「楽しそうだから。」
この言葉は果たして、答えになっている、と言えるのだろうか。
―イヤ、確かに、この男からすれば、その程度のものなのだろう。
羅生門でオレの腕を折ったのも、清明の足を折ったのも、、
―ましてや、オレの式神となるコトを決めたのも。
すべては、己が好奇心の赴くままに動いた結果でしかないのだ。
この男を、制御する自身など、生まれる余地も無い。
―しかし確かなのは、これからの生活が今までよりも、さらにさらに面倒くさくなる、と、そう言うことなのだ…。
…オレは、オレと清明と百虎を、交互にキョロキョロと見まわしている薫の頭を撫で、一つ、ため息を吐き出した…。
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