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時代錯誤 作者:pu-pa

第22回   第三部 第二話
月明かりにに浮かんだ、奴の姿。

蒼髪に、金の瞳を持つそれは、少なくとも、日の本の人間では無い。

というよりも。

…オレは今、魂を飛ばしかねないほどの恐怖におそわれていた。

清明がいるから、逃げられないとか、そういう訳では無い。

…動かないのだ。足が。手が。視覚を除いた残りの感覚がすべて吹き飛んでいた。

いつの間にか、自分も清明と同じ体勢で座り込んでいることに気づく。

圧倒的、という次元では無い。

先が見えない。限界が見えない。見えないのだ。

…地で生を営む、すべての生き物を遥かに凌駕した、存在。

「…何だ、貴様ら。」

…ゆっくりとこちらへ歩み寄ってくる、奴。

未だに手足は機能を失っており、凍りついたかのように動かない。

恐怖で千切れてしまった、という、あり得ない想像さえ浮かんでくる。

「…陰陽師、か。」

今や目の前まで迫ってきた奴は、座り込むオレの清明に、目線を合わせるかのようにしゃがんだ。

…そして、じっくりとオレと清明の瞳を、交互に見つめ始める。

「…低級なカス共ばかり相手にして、楽しいか?」

―金色の瞳の奥には、試すような光など、一切無い。

単純に、ただ単純に質問しているのだ。

…そういう意味では、そこら辺で道を尋ねる一般人と変わらない。

問題は、天を貫かんばかりの、気魂。そして、閃くような、金色。

―本気で尋ねるような内容では無い。

「…なぜ、お前ほどの者が、かような所にいるのだ…?」

オレが恐怖に打ち震え、心の臓が荒波のような脈動を奏でている中、、

隣の清明は、豪胆にも、掠れた声で言い放った。

…その質問に対し、わずかに目を細める奴。

「…質問しているのはオレだ。答えろ。」

清明の、勇気を振り絞った問いに対しての答えは、叩きつけるかのような言葉だった。

「…っ。」

喉をつまらせる清明。

触れ合ってなどいないのに、清明の体の震えが、空気を介して伝わってくる。

「…ちっ。」

奴はかすかに首を傾け、清明の顔を見、舌打ちを一つ、ついた。

…そして。

気だるげにゆっくりと腕を振り上げ、拳に力を込める。

…輝いている。

まるで、日輪のように。

松明を捨てたことにより、月明かりのみが照らしていた楼閣の中が、昼のように明るくなった。

…常識を、陰陽道という物理現象を、悠々と無視した量の気魂。

伝わる破壊力。

「…オレの問いに答えられねぇなら、死ね。」

…「死」。

簡単に口にして良い言葉では無いし、素手の拳を振り上げて語る言葉でも無い。

…しかし、コイツは、それを可能にするのだ。

何とも簡単な事。

今振り上げている拳を、振り下ろせば良い。

それだけで、清明を含む、周囲の生き物すべてが、死滅するだろう。

「…っあ!!!」

気づいたときには、オレは座った状態のまま、奴の胴体に、居合い抜きをしかけていた。

―恐怖に駆られた、愚かな行動。

…オレの見ている前で、数多の人を切り裂いた我が相棒が、簡単に砕け散った―。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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