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時代錯誤 作者:pu-pa

第21回   第三部 第一話
「…真。」

「…んぁ?」

暗い中、片手に松明を持って梯子を上がるのは、それなりに面倒くさい。

何せこの梯子ときたら、所々が腐っており、一歩一歩に気を配らなければならないのだ。

…だからオレは、上から降ってきた清明の声に、少し荒っぽく答えてしまった。

「…「んぁ」じゃない。返事はハイ、だ。」

その途端、清明の説教が始まる。

…何も梯子を上がりながらするコトもないだろうに。

「…うぃ。」

「この・・・!」

―陰陽師として、清明の部下となったオレ。

それが決定してからというもの、清明のオレに対する態度は、変わりつつあった。

勿論、表面にハッキリと現れるものでは無く、行動の節々にだ。

―まぁ確かに今のオレの陰陽師としての力量は、清明からすれば、稚拙なモノに映るだろう。

ゆえに清明の変化は、仕方ないコト、とも言える。

何せ清明は、都どころか、日の本一の陰陽師。

…天候を操り、昼夜を逆転させるほどの実力者なのだ。

「…真、この上には、鬼の気配が確かにある。」

清明が冷静な声で、空中でオレに指示を下す。

―オレが気づきもしない“気配”とやらに、清明は気づいているようだ。

さすが、と言った所か。

「……っ。」

オレが空中で待機する間に、清明が梯子を一気に上がりきった。

体重の軽い清明は、オレのような不安を感じないで上れるらしい。

…そして、オレは、清明の足が楼閣内部へ消えるのを見届けて、指示通り、松明の火を下に投げ落とす。

「……。」

そしてオレも、楼閣の中へ一気に飛び込んだ。

…気配を消すのは、朝飯前だ。何せ前職で必須だったのだから。

「……。」

暗闇に浮かぶ、清明の白目と瞳を合わせ、ゆっくりと前進する。

…この分なら、鬼に気づかれずに接近し、そして、一撃で葬れるかもしれない。

そうすればまた、今宵も酒が飲めるな―。

オレは家でおそらく、夕食を作って待っているであろう薫に、思いを馳せた。

その時。

唐突に、前方から、重いものが地面に接触する音が鳴った。

―反射的に視線を上げると、清明が尻餅をついている。

「……?!」

何とも珍しい。清明が失敗するとは。

オレは鬼の動向を量りかねながらも、ゆっくりと清明に歩み寄った。

―気づかれていても、清明がいるから大丈夫、と思う気持ちがあったのかもしれない。

「…ぅあ…。」

赤子のような声。

…何と、清明のものだ。

肩を掴んでみると、なぜか、汗でビッショリ濡れている。

知っている。

この汗は、冷や汗だ。

「……。」

ゆっくりと視線を前へ向けてみる。

・・・・・。

確かに、いた。

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