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時代錯誤 作者:pu-pa

第16回   第二部 第五話
新築されたばかりのこの家の門は薄情にも、音を立てる事無く、開いたらしい。

―そして、廊下をこちらに向かってくる音もほとんど聞こえぬ。

間違いなく、「仕事」に慣れた、手練れだ。

―傍らで寝ている薫を一瞥し、枕もとの刀を取る。

布団からゆっくりと出て、刀を抜き払う。

襖へ歩み寄り、ゆっくりと開く。

…近づいてくる気配。

自分と相手の間にあるのは、曲がり角が一つのみ。

鞘を床におき、曲がり角の方を向いたまま、目を閉じて、待った。

一歩。二歩。三歩。少しづつ、距離が縮む。

―相手もこちらに気づいたらしい。

気配を消すのを止め、水を汲んだ桶のような、スッと張るような殺気が満ちる。

夜の闇を貫き、オレの方へはっきりと放射されているのを感じた。

―目を開く。男が、角から姿を現した。

覆面で顔を隠しているが、あちらもすでに抜刀している。

―これだけの男を雇えるとは、どれほどの者なのか。

「……。」

「……。」

唐突に、相手の目が細まり、そして、廊下を音も無く駆けてきた。

―僅かに空中へ浮かんでいるのではないか、と疑うほどに、見事なまでの、無音。

オレが得意とするコトだ。

…だが。

「…っ?」

相手の男は、驚いたような、かすかに疑問符を感じさせる「悲鳴」を上げた。

…手慣れているのは認めよう。しかし、珍しいほどじゃない。

オレは、刀を握ったままの男の片腕を、音を立てぬように地面へ置き、通り抜けて今は背後に居る奴を見た。

「…っ!」

男が、オレが手に持っていた腕を見た後、自分の腕を見、それから、絶句する。

―オレはそいつの口を塞ぎ、本格的な悲鳴を上げさせないようにしてやった。

…それから、耳元へ優しく囁きかける。

「・・・・。」

男は、簡単に口を割った。

雇い主の名、その住所。

―そう。苦しまぬ、楽な「死」と引き換えに。

オレは薫が目覚めぬ内に、庭へ男の屍を埋めておいた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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