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時代錯誤 作者:pu-pa

第10回   第一部 エピローグ
―宮から出てくる、数々の牛車の中には、貴族がのっている。

眉の辺りに、ポツンとだけ黒を垂らした、よくわからん「雅」な顔つき。

そして、豪華絢爛な衣。

―庶民が着ている服とはワケが違う。

彼らが着ているのは、売るだけで庶民の家が何軒か建ってしまうような代物なのだ。

オレなどの手に届く品では無いのはもちろん、仕事の関係で幾度か目にしたことがある程度。

若い頃は猛烈に憧れた物だ。今考えれば、あれはむしろ、執念や執着に近かった。

だが、年を重ね、宮中の裏側について詳しくなるにつれ、いつしか貴族の衣は、憧れとは程遠い物になっていた。

―しかし。

若い頃に憧れた品、とは言うのは、望まなくなった頃に、突然手に入るものらしい。

オレは今、その「貴族の衣」に身を包み、まさに宮中へ入ろうとしていた。

―ひょんなコトから陰陽師の力を開花させてしまったオレ。そして、オレを帝へ紹介した清明。

話はオレの知らない所でトントン拍子に進み、いつしかオレは帝に謁見するコトになっていたのだ。

「…いいか真。絶対に失礼があってはならぬ。」

耳元で囁く清明。その囁き声でさえ鬱陶しい。

―暑すぎるのだ。この服は。

「…聞いているのか。ほら、障子が開く。」

一応おさらいをすると、、確か、帝が「顔を上げてよい」というまで、顔を上げてはいけないのだ。

何がそんなに偉いのかは知らないが…。

「…ぉい真…!」

「うっせーな。わかってるよ。」

オレは、口うるさく注意する傍らの清明へ、小声で叫ぶ。

―ったく、お前は母親かっての…。

「真。わかって、、ないぞ…?」

―そこで、清明の声が聞こえる位置が、異様に高いコトに気づく。

「……。」

うながされて、ゆっくりと顔を上げて見る。

―やはり。

清明はすでに顔を上げており、周囲の貴族共が、扇で口元を隠しつつ、失笑をもらしていた。

考え事をしていて、帝の小さな、「高貴」な声が聞こえなかったのだ。

―本気で、貴族の「雅さ」に腹が立った…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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