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世界に願いを 作者:村雨

第1回   第1話 始まりは唐突に
ここは、現実の世界とはかけ離れた世界。
魔族、と呼ばれるものたちが住んでおり、エルフやドワーフ、ゴブリン等といった
亜種も存在している世界。しかし、この世界は平和そのものだった。
人々はエルフやドワーフと共存し、そして友であり、そして家族でもあった。
彼らと一緒に生活をし、人々は平和そのものだった。世界には多少であれ犯罪を犯すものが存在する。それを守るための騎士団はあるが、そこは活動することは殆どなく、自らの鍛錬に当てる毎日だった。世界は8つの大陸が存在し、そのうち7つは世界の平和と調和のバランスを保つ役割をしていた。
そう、あの悪夢の日までは・・・・・
唐突だった。それは何の前触れも無かった。魔族が、亜種が・・・・・
狂い始めた。その日から世界に悪夢が起こった。
魔族は狂い、魔族の中では禁断である人間喰いを始めたのだった。人を喰らった魔族は少しずつ凶悪になっていき、やがて魔族ではなく完全な魔物になっていった・・・・
7つの大陸の小さな村が崩壊して行き、残っているのは首都や大きな街、それに自衛団がしっかりしている村だけとなってしまった。そして王国ではその対策に追われる毎日が過ぎていった・・・・

ここは首都大陸アイルテア、王が住む首都アイリシアと、大きな街がある一番活気と生気にみなぎっている数少ない街、そんな街にも不安の影が訪れていた。少しずつ、ではあるが街の周辺に魔族が出ているという噂や報告が相次いでいる。そしてその噂がついに実現してしまった。人が数名行方不明になる事件が相次いでいる。
人々は噂する。
「・・・・ヒソヒソ・・・・この前・・・近くで・・・・」
またある人も噂する。
「やだぁ!・・・・ええ!・・・・・まさか・・・・・」
街ではこのような噂が絶えなかった。次第にこの国も終わる、だと言うことさえ噂された。王国では今だ対処方を思いつくことができず、途方にくれる毎日だった
「・・・大臣よ、何か打つ手はないのだろうか?」
王の近くに居る左側の大臣は言う
「お言葉ですが王様、やはり魔族と親交を結ぶなどという事自体間違いだったのではありませんか?」
「しかし、先祖代々受け継がれてきたことだ・・・・いまさらやめろといってどうにかなることではない・・・・・」
今度は右側の大臣が言う。
「では魔族全てを皆殺しにしてはいかがでしょうか?そうすればこの様な事件は二度と起こりますまい。」
「いいや、違う。今回は本質的なことで何かが違う。魔族の反乱等ではなく、大きなものが蠢いている・・・・しかし、それがわからぬのだ。」
王と左右の大臣は悩む。そして討論を繰り返す毎日だった。そんなある日のことである。一つの小さな進展が見られたのは
「王様!王様!!」
王は答える
「何事じゃ、騒々しい。」
「はっ、失礼しました。実は、今回の騒動について記された文献を書物庫倉庫にて発見いたしました!」
「何、それは真か!」
「はっ、その文献がここに・・・・」
兵士が差し出した本を王と大臣は持ち上げ、机の上に置いた。その分厚く大きい黒い本を持ち、中のページを読む。その本の内容量はすさまじく、一冊を読み終えるのに一日かかってしまった。
そして翌朝、王と大臣は話をする。
左の者が言った
「つまり、ですな王様。7つの大陸のバランスが崩壊してしまった、と。」
そして右の者が言った。
「そしてそのバランスを戻さぬ限り、世界はこのような混沌と争いの世界に成り代わる、と。」
「うむ・・・これは一刻も早く対策をとらねば・・・・騎士団長のゼラムを呼べ。」
そして大臣が同時に言う
「「はっ、かしこまりました」」
そして大声で
「「ゼラム!!騎士ゼラムは居らぬか!!!!」」
その王城の中に響き渡る騒音の後から数分後のことである
「はっ、騎士団長ゼラムはここに。」
騎士団長のゼラムと言う男が到着した。そして王は言う
「ゼラムよ・・・・今回の事件の真相が掴めた。」
「それは誠ですか?」
「うむ。7つの外大陸があるのは知っておるな?」
「ははっ。それは最初の騎士の教育で学びました。」
「うむ。そしてその7つの大陸にはどうやらこの世界のバランスを保つシステムというのが存在しているらしい。しかし、どうやらそのシステムは数百年単位で一時的に止まってしまうようだ。そして、今がその時期に当たる。ゼラムよ、今から旅立ち7つの大陸の調和を元に戻すのだ!!」
「はは、騎士団長ゼラム、命と国の名誉を掲げ、必ずしやこの世界を救ってみせます!」
王は言う
「頼むぞ!ゼラムよ!」
しかし、その言葉を遮るように右大臣と左大臣が同時に言った
「「お言葉ですが、王様。ゼラムという大きな指揮官を今失うことは王国の存在に関わりまする。ここは騎士団の数名を行かせるのが得策かと・・・・・」
「うむ・・・・確かに。今この王国も多数の魔族と魔物に襲撃が噂されておる。もし、ここでゼラムが居なくなった場合、数少ない指揮官が消えるどころか、士気も薄れていく・・・・ここは騎士団の数名を行かせるしかないか・・・・」
そして、その会議の後から数時間の後である。王の玉座に数十名の騎士が集められた。
左右の大臣が同時に話す
「「今から、この国の存続とこの世界の存続を懸けた話を王がする、みなの者、心して聞かれよ!!」
ザワザワとざわめく騎士達・・・・そして王の言葉
「皆者、この世界が大変重要な危機にさらされているのはわかっておるだろう、しかし、つい先日その事件を解決する重要な文献を発見した。その文献によれば世界は他の7つの大陸でバランスを守られておるのだ。そのバランスが数百年単位で一時的に停止し、今がそのときである。そのバランスは自然に戻ることは無いらしい。そこで騎士達よ、そなたたちに問う。そなた達の中で死と隣り合わせになるかもしれぬ大いなる7つの外大陸に向かい、そしてこの世界の平和のために7つの大陸に旅立つ者は居らぬか!」
ざわめく騎士達・・・・
「「褒美ならいくらでも取らそう、その日その日に金銭や食料や武器等も支給されよう、そして生きて帰れば国の大いなる名誉を与えられよう、誰か!誰か居らぬのか!!!!」」
そして騎士達は小声で話をする
「お前どうする?」「嫌だよ・・・だってどうせ死ぬもん」
「ミーシャ、あなたはどうする?私は行こうかなー」「無理無理。どうせ途中で死んじゃったりするんだわ・・・・お嫁にも行けないでね・・・・」
「「ええい、腰抜けどもめ、誰か、誰か居らぬか!!!!!」」
そんな中である。一人の騎士が名乗り出た
「私が行きましょう。」
みんながその立ち上がった男の騎士に目線を向けた。その騎士はまだ他の騎士とは少し違う初々しい雰囲気を出す、昨日入ってきたばかりの新米騎士だった。
「おお、祖国を愛する者よ。お主のような心強き者が他にも大勢居ればよいのだが・・・・」
しかし、ここで一つの声
「無茶だ!」
「そいつは昨日入ってきた新米の騎士だぜ、成績は試験で一番だったが、いくら切羽詰まってるとはいえ、新米の騎士に任せることは無いのでは・・・・・」
しかし、ここで王のきつい渇が
「虚け者!!確かに我も知らぬ名も未だわからぬ騎士よ。しかしな、命を捨てるような危険な旅に名乗り出た者の勇気は偉大である。貴様の様に文句を言うばかりで名乗り出ぬ者なぞ、貴様それでも騎士であるか!貴様の様な騎士より、今名乗り出た騎士の方が大いに偉大であるぞ!!!」
それを言うとその文句を言った騎士が黙ってしまった。そして王がまだ話を続ける
「して、そなた、名を何と申す?」
「私の名は、アルク。アルクトゥルース=ライル=エンディミオンです。」
「ううむ。獅子の様に勇ましく勇敢な名である。」
そして王はまだ言う。
「誰か、この者と同じような志を持つものは他には居らぬか!!」
すると
「俺も行くぜ!」
「あたしもよ!」
「あたいだって!!」
「オラだって!!!」
「新人にいい格好、させられちゃあね・・・・」
一番最初にアルクに押されてか、数十名の騎士から僅かとは言え騎士達が名乗り出た。
「おお、それでこそ祖国を愛す者たち。しかし、これからは常に死と隣り合わせである。それでも行くというものは居るか?」
先ほど立った騎士達もざわめく。しかし、アルクはこう答えた。
「僕は行きます。祖国のお役に立てるならば、この命、惜しくなどありません。」
「すばらしい答えであるぞ!」
そして立ち上がった騎士達は一斉に言った
「この命、祖国のお役に立てるならば、惜しくなどありません!!!!!」
「おお、勇敢なるもの達よ、それでこそ騎士。皆のもの、彼らに敬意をしめすのだ。特にこの勇敢な少年、アルクトゥルースを!!!さぁ、旅立つのだ!ぐずぐずしている暇など無いぞ!」
そして大臣が言う
「「立ち上がりし騎士達よ、そなた達に今から金と少しばかりの食料と武器を授けよう、そして街で必要なものを買い、旅立つのだ!!」

そして、数名の立ち上がった騎士達は街に繰り出し、そして旅立っていった。そしてアルクが街に出ようとしたとき、王様はこう言った。
「お主は誠に勇敢なものであった。しかし、何処からその様な勇気が出てくるのだ?」
アルクは言った
「私の母は・・・・先日魔族に殺されました。仲が良かったエルフの者にです。しかし私はそのエルフを恨むことはしません。いつかこうなるのだと母も言ってました。そして王様の話で、そのエルフを元に戻せることがわかりました・・・・もし私が死んだとしても、母と父と同じ世界に旅立てるのです。」
王様は感心して言う
「うむむ・・・・お主のような立派なものが増えればいいのだが・・・・お主のその勇気に敬意を示し、これを渡そう・・・おっと、このことは大臣達には内緒にしておいてはくれぬか?またああだこうだ言われたくないのでな・・・・」
アルクはくすっと笑い、その王様から渡されたものを見た。それは不思議な形をしたクリスタル状のアクセサリーだった。
「王様、これは?」
「うむ。我が家に代々伝わりしものであり、その名を『導く鉱石』と呼ばれている。文献に出てきた道具と形が一致しているのである。お主なら・・・お主ならきっとやりとげてくれる、そう私は思ったのだ。何も言わなくていい。持っていってはくれぬか?」
アルクはそれを首につけて言った
「王様、ありがとうございます・・・・必ずや、この旅を成功させます。」
「うむ・・・・期待しておるぞ。」
「では、行って参ります!」
「うむ!期待しておるぞ!!」
そしてアルクは王に別れの挨拶を告げると、街に出て行った。これから、幾多の冒険をし、幾多の仲間や幾多の困難に立ち向かうとは、まだアルクは知るよしも無かった。そしてここからアルクトゥルースという一人の騎士の冒険が始まるのであった・・・・
そして、帰り際、王にも誰にも聞こえぬ声でどこからともなく声が聞こえた。
「・・・・しめしめ、いいことを聞いたぞ・・・・」
「・・・・・?」
アルクは振り向くが、誰も居ない。アルクはおかしいな?空耳かな?という顔をして街に出て行った・・・・・・

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Novel Editor by BS CGI Rental
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