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欠点の塊の少年の恋の話 作者:Alan Smithy

第1回   プロローグ
 こんにちは。僕の名前は赤西雄飛(あかにし ゆうひ)。早いモノで、今年、僕は高校三年生。大学受験へ向けての勉強が本格化し、学校生活の面でもクラスが一丸となって行事に燃える年だ。
 でも、今の僕にとって一番大事なのは大学に受かるかどうかじゃない。高校最後の行事に燃えつきることでもない。
 僕にとって一番大事なこと。それは憧れの人、大槻美鶴(おおつき みつる)さんに思いを伝えられるかどうかなのだ。 
 顔だちの整った顔は、「奇麗」というよりもむしろ「可愛い」という感じ。大きな目に宿る真っ黒な瞳は、いつもかすかに潤んでいて、光を受けてきらきらと輝いている。さらさらの黒髪はショートカット、前髪が赤いヘアピンで分けられており、奇麗なおでこがそこからのぞいていた。笑うと両ほほに小さなエクボができて、何とも魅力的だった。体つきは少しキャシャだったが、スタイルはよく、スラッとしていた。性格も良くて、誰にでも親切。他には…いや、この辺でやめておこう。大槻さんの魅力を挙げたら広辞苑よりも分厚くなりそうだから。とにかく、彼女を一言で表現するならば、全てが最高で、奇麗で、可愛くて、素敵で、美しくて、大好きという感じ(ありゃりゃ。一言にまとめられなかった…)。
 僕が彼女に恋をしたのは高校一年生の八月、クラスの皆で「親睦会」と称して夏祭りにいった時のこと。この日、僕ははしゃぎすぎて電柱に激突した(この経緯についてはあまりにも恥ずかしいので、ここでは省かせてもらう)。僕は血の海に沈んだが、皆は遊びに夢中で、僕のことなど、てんで相手にしなかった。その時、唯一僕を心配し、ハンカチを差し出してくれたのが大槻さんだ。
「赤西君、大丈夫?」
 大槻さんは優しい声でそう聞いてくれた。
 涼しげな水色の浴衣を着た彼女はとても魅力的で、まるで…そう。女神のようだった。
「ありがとう。でも…」
 僕は躊躇した。僕なんかの鼻血がハンカチに着いちゃうんだよ?
「いいから。早く止めないと服、汚れちゃうよ。」
 大槻さんはハンカチを僕の手に優しく押し付けた。
 僕は彼女の見守る中、必死で鼻血を止めることに努めた(彼女のあまりの素敵な姿、優しい行為に僕はのぼせてしまって、そのために鼻血が余計ヒドくなったことは秘密だ)。
 その後、一年ごとに行われるクラス替えでも、僕と大槻さんは幸いにも同じクラスになり続けた。たぶん、僕が神社に百回もお願いに行った効果だろう。
 しかし、三年間一緒であるにも関わらず、僕は未だに大槻さんに告白していない。大学に行ったら僕たちは離ればなれになるかもしれない。
 チャンスは今年しかないのだ。
 問題はそれだけではない。僕には非常に多くの欠点がある。とりわけ、8つの欠点についてはもの凄いコンプレックスを持っている。この欠点を克服しなければ、例え僕が大槻さんに告白したとしても、彼女は受け入れてくれない様な気がする。

 果たして僕は、思いを告げることができるのだろうか?

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Novel Editor by BS CGI Rental
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