「なあ、お前正義のどこがいいんだよ」
「私が正義を好きなのは誰にでも公平なところだよ。君こそ愛のどこがいいんだよ」
「何言ってんだよ、すべてにおいて公平なのは愛だ」
「愛なんて八方美人なだけじゃないか。悪い奴、いい奴に合った対応をしてこそ公平なんだよ」
「いいや、善悪に関係なく同じ態度をとってこそ真の公平だ。人を裁くことになんてたいした意味はない、どんな奴にも慈悲をもって接する愛の方がすばらしいと俺は思ってるよ」
「そんなの間違ってる。悪人にをのさばらせていちゃ、非力な善人が犠牲になるんだ。悪は許さない正義のほうが正しい」
「本当にお前は子供じみた考え方しかできない奴だな、世の中は善悪って言う単純な二次元論でどうこうできるもんじゃない。悪人には悪人の事情があるだよ。それを省みない正義は馬鹿だ」
「正義を侮辱するようなこと言うな。君のほうがよっぽど幼い考え方をしてるよ。愛が世の中の人すべてを救えるわけじゃないじゃないか。」
「じゃあ、正義なら世の中の悪をすべて裁けるのかよ?」
「…」
「何も答えられないのか?それみろ、正義なんてその程度のもんじゃないか」
「多分君が言うとおりそんなことは不可能だよ、でも君が知らないだけで正義のおかげで救われた奴はいっぱいいるんだよ」
「はん、正義が救った人間の何倍も愛は人を救ってきたよ」
「たしかに愛に比べたら正義が救える人間の数は少ないかもしれない、でも…、でも正義は本当は人に優しいんだよ」
「あーあー、正義のどこが優しいってんだよ。正義は冷血だよ。善人にはたまたま善人に、悪人は悪人にたまたま生まれた、それだけのことだ。要は運だ。それなのに正義は悪人を許さない。そんなもののどこが優しいって言うんだ」
「たしかに善人になるか悪人になるかなんて運かもしれない。でもだからといって悪を許せば大変なことになる。だから正義は悪人を許さない。愛にはそれができないだけだよ」
「ふう、いつまでたっても平行線だな」
「君が正義のよさを分からないからだよ」
「お前こそ、愛のことを理解してない」
「おーい、お前ら何言い争ってんるだ」
「あー、ずっとお前のこと待ってたんだぞ、おせーじゃねーかよ。こいつもずっと待ってたんだぜ、おめえもなんか文句言ってやれよ」
「…さよし、まさよし、正義。こいつがさっきから正義のこと悪く言うんだよー」
「あー、もう、おまえはまたそうやって正義にすぐ泣きつく。こいつこそさっきから愛のこと非難してたんだぜ。正義からも注意してやってくれよ」
「二人ともケンカはいかんぞ。愛ももう少しで来るからな、もうちょい待ってくれ」
「はーい」
「お前って本当に正義の前ではぶりっ子だな」
「君だって愛の前じゃ生真面目君演じてるじゃん」
「なにおー」
「だからお前ら、ケンカをするなというに」
終
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