私は人には先生と呼ばれている 世間では結構な売れっ子で、何本か連載をかかえている。 そんな私だがここ最近書くのが大変になったきたので、アシスタントを雇おうかと思っている。 友人の所ではアシスタントを3人雇っていて、スクリーントーンという色んな柄や模様がついていて、原稿用紙に擦り付けてその柄や模様を移す一種のシールのような物を貼る作業をしてもらったり、ベタ塗りといって人の髪や影など黒い所をインクで塗りつぶす作業をしてもらってるらしい。そこで私も私の創作活動を手伝ってくれるアシスタントを雇おうかと思っているのである。
ピンポーン
チャイムの音がする。どうやら担当さんが来たらしい。早速アシスタントを雇うことについて相談してみようと思う。
「担当さん、私は今度アシスタントを雇おうと思うのだがどうだろう」
「どうしてですか?身の回りのことなら家政婦さんが全部してくれるじゃないですか」
「いや身の回りのことじゃなくて、私の創作活動を手伝ってくれる人が欲しいんだ」
「といいますと?」
「友人のところではアシスタントを3人雇っていて、トーンを貼ったりベタ塗りをしてもらっているらしい」
「・・・」
「だから私も少しでも良いから、私の創作活動を手伝ってくれる人が欲しいんだ」
「先生」
「ん、なんだい?」
「先生に一つ言いたいことがあるのですが」
「構わんよ、言ってごらん」
「では言いますよ」
「どうぞ」
「先生は」
「うん、うん、先生は?」
「先生は、小説家であって漫画家ではないでしょう!創作活動を手伝ってもらうって一体何をしてもらうつもりなんですか!」
「だからー、例えば私の代りにストーリーを考えて代筆してくれたりとか」
「それはアシスタントじゃなくてゴーストライターです!」
「怒んないでよ、担当さーん。だって話のネタが思いつかないんだもん。スランプなんだよー」
「くだらないこと考える暇あったら早く原稿あげてください!しめきりに間に合わなかったら連載うち切りですからね」
「ひどいよー、鬼ー、人でなしー」
「人でなしは先生のほうでしょう!ほんとにもう、早く原稿上げてくださいよ」
「うう、・・・」
私は人には先生と呼ばれている。原稿をおとしたことはまだない。
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