ある日、私は自分の担当していた管轄で大きなミスを犯してしまった。
仕方なく私は直属の上司に報告することにした。
コンコン、と私は上司の部屋のドアをノックした。
「どうぞ、入りたまえ」
「はい、失礼します」
少し緊張しながら私は上司に話を切り出した。
「実は報告しなければならないことがございまして」
「ああ、そのことならもう把握しているよ。もうそろそろ君が来るころじゃないかと思って待っていたんだ」
「……、そうでしたか。この度はこんな大きなミスを犯してしまい本当に申し訳ありませんでした。」
「いや、そう堅くならんでくれ。誰にだってミスはあるんだ。どんな奴だって完璧ではない。そうだろう、君?」
私は上司の温かい言葉に涙がこみ上げてきた。
「でも、今回のミスはあまりにも被害が大きすぎます。私は、私は、もうどうやって責任を取ったらいいのか。どこにでも飛ばしてください、なんならクビにしてくれてもかまいません!」
そう言うと私は本当に泣き出してしまった。
「おいおい、どうしたんだい急に泣き出したりして。確かに今回のミスによる被害は甚大だ、だがそれはこれから時間をかけてゆっくり取り組めば何とか成るだろう。起きてしまった事を悔やんだってしょうがない。重要なのはこれから先どうするかだ。」
上司は優しく私をなだめ励ましてくれた。
「すみません、ありがとうございます。取り乱してしまって申し訳ありませんでした」
「さあ、それじゃデスクにもどって君の仕事に取り組むんだ。これからが正念場だ」
「はい、わかりました。では仕事に戻らせていただきます」
そう言うと私は上司の部屋を後にした。
いつか今の上司のようになろうと思いながら。
彼が帰ると私は、自分の机から葉巻を一本とりだすとゆっくりと吹かしはじめた。
「まったくとんでもないことをしてくれたもんだ」
そういうと私はモニターのスイッチを入れた。
「現在寄せられている情報をお伝えします。今日○時○分ごろ、各地に大量の隕石が衝突しました。隕石の落下地点から半径○kmはほぼ壊滅。また海上に落ちた隕石により巨大な津波が各地に押し寄せました。また隕石が巻き上げた粉塵は今後○年地球全土を覆い太陽光をさえぎり、植物の成長等に悪影響を与え、地球全土を寒冷化させていくでしょう」
モニターには地球のテレビのニュースが流れていた。
「まあ、しかたあるまい。若いうちにはミスはつきものだ。ワシだって若いころは彼と同じようなミスをしたもんだ。なにしろ、あの恐竜を絶滅させてしまったのは、元はといえば私のミスが原因だったのだからな」
私は葉巻の煙をゆっくり吸い込むみ、口からそっと吐き出すと小さい声でつぶやいた。
「そう、私たち神だって完璧ではないんだ」
|
|