■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

ショートストーリー 作者:暗中茂作

第2回   柏原葵の受難1
「葵先輩、私と付き合ってくれませんか」

「え?」

「私、ずっと、ずっと前から先輩のことが好きだったんです」

「ちょ、ちょっとまってよ。いきなりそんこといわれても」

「そうですね 自己紹介がまだでしたね。私、1年A組の鈴木真美っていいいます。生年月日は9月10日生まれの乙女座です 身長は153センチの体重は47キロ。血液型はAB型。趣味はお菓子作りです」

「そうなんだ、ってそうじゃなくて」

「先輩のことだったらなんでも知ってます。名前は柏原葵。11月25日生まれの射手座。クラスは2年C組。身長160センチで体重は54キロ、血液型はO型。性格は明るくて活発。部活はバスケ部に所属、ポジションはセンター。好きな食べ物は購買のカレーパン。」

「わー、よく知ってるね、ってそうじゃなくて」

「この前のバスケの試合も見ました。試合の終わる直前、2点差で負けていて、もうこのまま負けちゃうんだろうなーって思っていたら、先輩が相手のパスをカットして、スリーポイントシュートを決めて一機に逆転勝利に持ちこんだのを。本当にすごくカッコ良かったです」

「試合見てくれてたんだー、ってだからそうじゃなくて」

「好きなんです、先輩のちょっとハスキーな声とか、さらさらの前髪とか、黒目がちでおっきな瞳とか」

「そんなこといわれても・・・」

「お願いします、先輩が気に入らないとこあったら直します、先輩の言うことだったらなんでもします。だからお願いです、私と付き合ってください」

「ごめん、悪いけど・・・」

「もう誰か付き合ってる人いるんですか?」

「そう言うわけじゃないけど」

「じゃあ、他に好きな人がいるとか?」

「いや、いないけど・・」

「じゃー、なにが理由なんですか。どうして私と付き合ってくれないんですか」

「僕は・・・」

「僕は?」

「だからその・・・」

「先輩、理由があるならはっきりいってください。そうじゃないと納得できません」

「じゃー、言うよ。ちゃんと聞いてね」

「はい。ちゃんと聞きます」

「確かに君は僕から見ても綺麗で可愛いと思うよ。でも僕は」

「はい」

「僕は・・・、僕は、女の子同士で付き合う気はないんだよー。」

「なーんだ、そんなことにこだわってたんですか、愛さえあれば性別なんて関係ありませんよー先輩」

「君がこだわらなくても僕は困るんだよー。じゃ、そう言うわけだから僕はこれで」

「あーん、待ってくださいよー、せんぱーいー。お願いだから付き合ってくださいよー」

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor