彼が帰ってこない。姿を見なくなってからもう三週間経つ。出ていった理由は多分、私が彼の癖をなじった事だろう。ずっと前から注意していたのに、彼はその癖をずっとを止めることは無かった。ある日、私はついに堪忍袋の尾が切れてしまい、彼のことを激しく怒鳴ってしまったのだ。その日、彼はいつのまにか部屋から消えていた。それ以来、彼の姿を見ていない。 私は後悔していた。なんであんなつまらない事で彼を怒鳴ってしまったんだろう。もう彼と出会うことは無いのだろうか、もう一生彼の姿を見ることは出来ないのだろううか。そう思うと涙がこみあげてきた。今、彼はどうしているのだろう。私と同じように一人ぼっちですごしているんだろうか?それとも、もっと気の合う誰かと暮らしてるんだろうか。 私は彼との日常を思い返した。いつももう持ってこなくていいからと言っても、しょっちゅうプレゼントを持ってきてくれた、私が疲れている時はマッサージをしてくれた。暖かい日は縁側で彼と一緒にひなたぼっこをした。寒い日は彼と一緒の布団で寝た。言葉を交わさなくても、一緒にいるだけで癒された。いつも気がつくとそこに彼がいた。そうこんな風に、 「え?」 私は驚きのあまり声を上げてしまった。気がつくと部屋に彼がいた。玄関はしまっているから、庭づたいで縁側のさっしから入って来たのだろう。 私は恐る恐る彼に話しかけてみた。 「ねえ、まだこの前のこと根に持ってるの?」 「・・・」 「ねえ、怒ってないなら黙ってないでなんか言ってよ」 「・・・、ニャー」 「よかったー、お帰りー茶太郎。この前は柱で爪を研いだくらいで怒ってごめんね。あ、またトカゲの 尻尾なんかくわえてきて、もうそういうもの持ってこないで言ってるのに。そうだ、後で背中にのって足でふにふにってしてね。あれすごく気持ちいいんだ」 「ニャー」 「今日はふんぱつして茶太郎の好きなツナ缶開けちゃうね。私もご飯まだだから一緒に食事しよう」 その日、私は久しぶりに一緒に彼と寝た。あったかい気持ちでいっぱいだった。
|
|