カキカキカキカキ
「あのう、ちょっと休んじゃいけないですかね」
「だめです」
「でもお腹がへってきたし、のども乾いたんですけど…」
「書く妨げになるから食べるのはだめです、まあ水を飲むのぐらいは許しましょう。今コップについで持ってきましょう」
「すみません」
カキカキカキカキ
「あのう、トイレに行きたくなっちゃったんですけど」
「仕方ありませんね、どうぞ行ってきてください」
カキカキカキカキ
「はあ、書いても書いてもおわんないよー」
「なにいってんですか、まだ終わりにするわけにはいきませんよ」
「そんなこといったって…」
「いいですか、そうやって書くのがあなたの仕事でしょ。それでお金もらってるんでしょ」
「はーい、分りましたよ。先生」
「分ればいいんですよ。担当さん」
「でも先生が書いた、注釈やつけたしをしてある文章を、こうやって先生と話し合って直したりしながら原稿用紙に起こすのって結構疲れるんですよ。」
「しっかりしてくださいよ。他の作家さんの中には、ボイスレコーダーに自分の声をを吹き込んで、それを担当編集者に原稿に起こしてもらってる人もいるんですから。それに比べたら楽なもんじゃないですか」
「そんなこと言ったって、先生のお話って原稿用紙にして何枚になると思ってんですか。少しはこっちの身にもなってくださいよ」
「はい、はい、泣き言言わない。頑張って続きを書く」
「うう…。頑張りまーす」
カキカキカキカキ
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