私は人には先生と呼ばれている。世間では結構な売れっ子で、何本か連載をかかえている。 今、部屋には流行りの音楽が流れている。私は若い人の音楽はあまり良くは分からないが、今聴いてる曲はなかなかいいと思う。いい音楽を聞いているとペンも進むというものだ。今日はなかなかいい出来に仕上がった。早く担当さんに見て欲しいと思う。
ピンポーン
担当さんが来たようだ。早速見てもらおうとしよう。
「担当さん、作品が仕上がったんで見て欲しいんだが」
「本当ですか。じゃ拝見します」
そういわれ私は担当さんに作品を渡した。
「…」
「どうした担当さん、完成度の高さに声も出ないのかな」
「先生、何ですかこれは」
「なにって私の作品さ」
「先生、一つ言っても良いですか」
「どうぞ、構わんよ」
「先生」
「うん」
「なにが私の作品ですか。ラジオ番組宛のネタ書いたハガキじゃないですか。大体なんなんですか、ペンネームDJ佐藤さん大好きっ子って。いい年こいたおっさんがなに考えてるんですか」
「だってそのほうがネタ採用してもらえるかなと思って…。人間時には息抜きも必要なんだよ」
「先生は息抜きの合間に仕事してるようなもんじゃないですか」
「うまいことを言うなあ」
「嫌味に感心しないでください。もう、こんなものはこうして」
ビリッビリッ
「ああ、私の会心作がー」
「こんなくだらないことしてる暇が合ったら早く原稿あげてください。ラジオ、仕事の妨げになるようですから止めますね」
「うう…」
私は人には先生と呼ばれている。原稿をおとしたことはまだない。
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