橘くんと博士 その25
「橘くん、ちょっとこれを見てみてくれんかね」
「なんですかこれ?何かの走り書きみたいに見えますが」
「ワシのサインじゃ」
「サインですか。そういわれればそう見えないこともないですけど」
「うむ、ワシの発明が世の中で認められて、世間の人々からサインをねだられても困らんように今のうちから練習してるのじゃ」
「そういうことは何か発明してからしてくださいよ」
「まあまあ、そういうな。ただワシのサインにはひとつ問題点があってな」
「どんなことですか、博士?」
「一度書いたものに近い筆跡で書くということがまったくできないんじゃ」
「それもうサインて言えないんじゃないんですか?」
「まあ、ワシが書いたサインを、他の人に書いたサインと見比べると言うこともあまりないじゃろうから大丈夫じゃろう。一言、言っとくが、けっして作者の話ではないぞ、けっしてな」
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