「掟破りだな」
最初私はその言葉が意味するところが理解できなかった。
「掟破りだ」 「ああ、掟破りだ」
その言葉を最初に発した以外の周りの警官も口々に同じ言葉を発した。
「十時二十五分貴様を逮捕する」
最初に「掟破り」と言った警官が強引に私の腕をつかんで手錠をかけた。
「ちょっとちょっとどういうことですか? 何で私が逮捕されなくちゃいけないんですか」
私は慌てふためいて尋ねた。
「貴様には黙秘する権利はない。どんな我々の質問に対しても正直に答えなければならない」
警官は私に構わず冷静な態度をとっていた。
「黙秘権もないなんてどういうことなんですか?ちょっと、ちょっとどういうことなんですってば」
私は興奮のあまり同じような言葉を繰り返した。
「だまれ、この犯罪者め」
「だまれこの犯罪者め」 「犯罪者め」
それと同じように最初の言葉に合わせてまた警官達も同じ言葉を繰り返す。
「貴様は全宇宙ドクター協会会員証をもっていなかった。」
「何ですかそれは? そんなものきいたことないですよ」
「この星ではみなその職業に関する身分証を携帯しないといけない。よって貴様はおきて破りの犯罪者だ」
私はやっと自分が逮捕された理由を聞き出すことができた。
「ちょっとまってください、私は星間旅行者なんですよ。そんな法律があるなんて知らなかったんですよ」
「星間旅行者だろうが何だろうが。この星に来たいじょうこの星の法律に従ってもらう。郷にいりては郷に従がえだ」
「そんな…」
「何の下調べもなくわれわれの星に来た貴様が悪いのだ」
私は自分の無防備さを後悔した。
しかし……。
「では連行するぞ」
そうして私は車で出警察署に連行され、署内の拘留所に入れられた。
「はあ、これからどうしようかな。眼鏡をかけてくるのも忘れたからオルドレイとも連絡つかないし」
私は拘留所ないで途方にくれていた。
「にいちゃん、よう、にいちゃんてば」
最初私はその声が誰のものかわからなかった。
それは拘留所の見張りに置かれているらしき人物だった。
「あんたも間抜けだなー、なんの下調べもなしにこの星に来るなんて」
「ほっといてください、星の下調べなんてする方法がないじゃないですか」
私はふてくされて答えた。
「はっはっは、ちげえねえや」
見張りのおっさんは笑っていた。
私はおずおずと尋ねた。
「すみません、私はこれからどうなるんでしょうか? 裁判にかけられたりするんですか」
「裁判にはならなが詳しい取調べがある」
「取調べの後釈放になったりはしないんですか?」
わたしはいちるの望みをかけて尋ねた。
「いや、そうはならない」
その言葉に私は落胆した。
「……取調べではどんなことが調べられるんですか?」
「主にそいつの職業についてと、そいつが何ができるかだな」
「そんなこと調べてどうするんですか?」
「労働力として強制労働させるのさ。そもそも身分証の確認なんてのは星間旅行者に対してだけ行われるのさ」
私は自分がおかれた境遇を理解した。
「身分証を見せろなんて難癖をつけて、そいつを捕まえて連行する。取り調べて何ができるかを確認したらそいつを死ぬまで奴隷のようにこき使う」
「そんな、助けてください。おねがいです、助けてください」
「あきらめなよ、にいちゃん。ここだって住めば都さ。実を言うとなワシも星間旅行者じゃったんじゃよ。昔すんどった星で刑務所の看守をやっとたんじゃ、それを生かしての今の職業じゃ」
彼は必死に叫んだ。
「助けてくれー、誰か助けてくれー」
彼はこの苦境をどうやって切り抜けたのだろう?
それはまた別の機会に話す事にしよう。
「……クター、ドクター、ドクター。大丈夫ですか返事をしてください。」
「オルドレイか? 俺は一体どうしたんだ?なんだか今、オルドレイでも誰でもない不思議な声をきいた気がしたんだが」
俺は寝ぼけながら答えた。
「ドクターは眠りかけてたんですよ」
「そうか、今までのは全部夢だったのか。よかった」
「ぜんぜんよくないですよ。ドクター回りをよく確認してください」
俺はまぶたをこすりながら回りを確認した。
あたりはなんだか真っ白で、ほほをにあたる風が冷たかった。
「ドクターは遭難したんですよ。だから私は風も雪の量も多いから外に出てはいけないといったのに」
俺はまた意識が遠のいてきた。
彼はこの苦境をどうやって切り抜けたのだろう?
それはまた別の機会に話す事にしよう。
「あ、なんかまたなんか天の声が聞こえた気がする」
「ドクター、意識をしっかり保ってください、ドクター!」
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