その男ははじめて泣いてくれた。
他の星からの星間旅行者で涙を流してくれたのは彼がはじめてだった。
今までの星間旅行者はその死者を弔う一連の儀式を笑った。
彼以外のすべての星間旅行者が笑った。
彼は程なくして私達の星を去った。
だが私は彼のことを決して忘れないだろう。
願わくば彼の旅に幸あれ。
―― その日私はいつものようにエレゴラから話を聞いていた。
「ねえ、もっと他の星の話し聞かせてよ」
「んー、じゃこんな星はどうかな。その星はいたって普通の星なんだけどひとつだけ違うところがあるの」
「うん、うん。それで? どんな風に違うの?」
「その星の空気にはヘリウムって言う気体がたくさん含まれてるの」
「それがたくさんあるとどんなことが起きるの?」
「声が高い変な声に変わっちゃうんだよ」
「へー、本当なの? エレゴラ、前に僕に本当はない星の話冗談で言ったからなー」
「大丈夫、大丈夫。今度は本当だから」
この数日後、エレゴラとの間には悲しい別れがあった。
だがそれはまたの機会に話すことにしよう。
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