「乾杯」
「乾杯」
「こうして僕達がで会ってこれで一年が経ったわけだね」
「わたしが貴方にはじめて声をかけてからそんなになるのね」
「今日が来たら君に、僕が君と付き合おうと思った理由を言っておこうと思ってたんだ」
「聞かせて」
「僕の両親はボクが幼い頃に僕を残して死んでしまったんだ」
「初耳だわ。それが今日言いたかった事なの?」
「いや、そうじゃない。僕はその後養護施設に預けられ大人になって軍隊に入った」
「それで?」
「戦争で人を殺した」
「軍人さんならしょうがないわね、国を守るためですもの。そのときの傷を癒したくて私と付き合ったの?」
「いやそれも違う」
「そう、じゃあ話を続けて」
「戦争で同じ部隊のやつが死んでも、敵兵を撃ち殺しても僕は何にも感じなかったんだ。そして気づいた、僕には人とした大切何かが欠落しているって」
「その欠落した部分を埋めるための私なの?」
「そうとも言えるし、ぜんぜん違うとも言える。少しそのまま話を聞いてくれないか?」
「わかったわ」
「戦争が終わって僕は国に帰ってきた」
「…」
「それでも僕は戦場での事を考えていた、このままで僕は僕のことを人間と言えるのかと。そして結論を出した。このままではいけないと」
「…」
「突飛に聞こえるかもしれないがそれで僕は人を殺すことにした。たくさん人を殺せば極稀にでもいいから何か感じることがあるんじゃないかって」
「…
「それから僕は老若男女を構わず沢山の人を殺した。」
「いつも思ってるけどそんな殺人鬼を放って置くなんてこの国の警察は無能ね」
「そうだね。でも結局僕が人を殺すことに何かを感じることはなかったんだ。何かをしても何の感情も抱けないならそれを体験したことにはならない。心は体験したことから作られるとゆうのに」
「…」
「僕は切実に人を殺したとき何かを感じる人間になりたがっていた」
「…」
「そこでやっと君の登場だ」
「ほんとにやっとね」
「君がはじめて僕に声をかけてきた時僕はふと思ったんだ。通りすがりの人間ではだめだったけど、すごく親しい相手や愛情を持っている相手なら殺した時何かを感じれるんじゃないかって。そうして君と交際をはじめ今日で一年になった」
「なるほどね、納得がいったわ。それでどう今度は何か感じれそう?」
「今こうしてこれから君を殺すわけだけど、今のところ何も感じない。やっぱり何も感じれそうにないよ。」
「じゃあ、私を殺すのを止める?」
「いや、せっかくここまでお膳立てしたんだ。一縷(いちる)の望みをかけて試すだけ試してみるよ」
「そうそれじゃあ、さよならね」
「さよなら」
パンと銃の発砲音がした。
「う…」
「ごめんなさいね」
「まさか君が銃を持ってるなんて予想もしなかったよ」
「いすに座りながらだったからちょっと急所よりになってしまったわね」
「何でこんなことを?」
「貴方は私のいいパートナーになってくれると思っていたわ」
「残念ながらそれは無理そうだ」
「そうね、だって貴方は人を殺すことに何の感情も抱かないって言うんですもの。私はこんなに殺すことが楽しくてしょうがないっていうのに」
「そうか、君は快楽殺人者だったのか。実際にこんな目に会うまでそんな人間がいるなんて信じたことはなかったよ。恋人として君の事をもっとよく知っておくべきだったね」
「貴方は何も知らなさ過ぎたわね。貴方が知らないとこで私が人を殺している事とか私達の出会いが偶然じゃない事とか」
「僕達の出会いは偶然じゃなかったのか」
「私たまたま殺す相手を探して人通りの少ない道を歩いていた時、貴方の殺人を目撃したのよ。それから貴方を尾行して住所を突き止めて他の殺人についても調べ上げたのよ」
「そして、偶然を装って僕に声をかけてきたわけか。」
「ええ、そうよ。私達は共通の趣味を持ったいい恋人達になれると思ったのよ。だから今、人を殺す時ではじめて少しだけ悲しいわ。あなたはどう?今の気分は?」
「僕は残念ながら何の感慨も沸いてこないよ。人を殺しても何も感じない人間は自分が死ぬときも何も感じないんだね」
「そう、それは残念ね」
「でも一つだけ思うよ」
「君みたいな性格に生まれてくれば、僕ももっと楽しい人生が送れたんじゃないかって」
「ありがとう、最後に褒めてくれて。でももうその言葉だけで精一杯って感じね」
「ああ、その通りだ」
「それじゃあ、止めを刺してあげる。ほんとはもっと時間をかけてゆっくり殺したいところなんだけど、これは元恋人としてのやさしさよ」
「ありがとう」
パンと二発目の発砲音がした。
「戦場には私みたいなタイプの人間て居ななかったのかしら。でも戦場じゃ自分が死ぬリスクも高いからいやよね。だって私はおばあちゃんになっても楽しく人を殺したいんだから」
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