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ショートストーリー2 作者:暗中茂作

第1回   ショートギャグ3
その7 

「どうも、こんにちはー。これからネタ披露させていただきます」

「こんにちは、誰がうれてやる…、げふ」

「おら!」

「いきなりなにすんねん」

「こっちの台詞や。しょっぱなからそれはないやろう」

「なんでやねん、誰がうれてやるせなすって言おうとしただけやんか」

「何で最初の挨拶でそんなこと言わなあかんねん、まぎらわしいわボケ。まあ、ええわ。もっぺん挨拶しなおせや」

「わかったわ、んじゃいくで」

「ああ、いえや」

「どーも、きりん…」

「言うてみい、どつきまわしたるから言うてみい」

「さんが好きです、でも、象さんの方がもっと好きです」

「中年の眼鏡かけた太っちょのおっさんが何CMの女の子の真似してんねん。んでお前、最初の方のネタ出来るほど美しいハスキーボイスしとらへんやろ」

「あーもうわかった。んじゃ、もう挨拶飛ばしてネタいきます」

「もうしゃーないな、んじゃいけや」

「ウシ君とカエル君のネタやります」

「ってまた人のネタかって、イタタタタタ、腕に噛み付くなー」

「ウウウウウウウウウウ」

「離せや、はよ離せや」

「ウウウウウウ」

「はあ、はあ、やっと離せたわ。お前いきなりなにかましてくれてんねん」

「ウシ君がカエル君にかまれるのはお約束やないか」

「どあほう、あれは人形でのやり取りや。カエル君にお前みたいな歯あるか。ほんま、あと付くほど噛みやがって。それからカエル君が噛んでる最中にウウウなんてうなるか。お前は腹をすかした野犬か。見てる人がひくわ。んでなんで俺がウシ君決定なんや、突っ込みどころが多すぎるわ」

「文句があるなら訴えたらええやろ、行列のできるとこでもいったらええやろ、北村弁護士でも丸山弁護士にでも頼めばええやろ」

「ああ、訴えたる。腕噛まれた言うて訴えてもらうわ」

「かまへんで、おれは四角いにかくさんにまーるくおさめてもらうから」

「なにうまいこと引用してんねん。最近話題になってる方って言ったら行列の方やろう」

「俺はNHKっ子やねん、いっぺんあの番組出てみたいねん」

「無理やって、あの番組の雰囲気にあわへんてお前は」

「んじゃ、オンバトでもええわ。あれもいっぺん出てみたいねん」

「まあ、あれならお前の芸風でもぎりぎり出れるかもしれんな」

「俺オンバトでたらいっぺんやってみたいことがあんねん」

「おう、聞いてやるから言うてみいや」

「けっこうちょくちょく紫の覆面の人おるやろ」

「おう、最近は他の番組にも出るようになったから前に比べたら出る回数減ったけどおるな」

「俺あの人とな」

「うん」

「マスクデスマッチしたかったねん」

「できるかー。NHKがそんなもん許すか。んであの人の方がウシ君とカエル君に両手ふさがれてるから圧倒的に不利やろう。第一お前マスクしてないやないか」

「俺はこの眼鏡かけんねん」

「ぜんぜん条件に差がありすぎや。相手が応じてくれるわけないやろう」

「それがなー、実はうまいこといってん」

「ほんまか?うそちゃうやろうな」

「俺がこの眼鏡あげますからその覆面くれませんかって楽屋で頼んだら、予備があるんでそっちだったらいいですよって快く応じてくれたんねん」

「デスマッチじゃなくなっとるがな。んで覆面の人も予備なんか持ってるんかい、昔の漫画の人か」

「いや、ライト当たると結構蒸れるらしいねん、んで汗かくから」

「知るか、んな細かい事情」

「まあ、そんなこんなでもらえたのがこの覆面や」

「今さらっと人の話流したな」

「いいから中開けて見てみい」

「なんや、なんかマジックでなんか書いてあるな」

「覆面の人のサインや」

「ふーん、これがそうなん、ってあほ。芸人が芸人にサインもらってどうすんねん。お前はお笑い芸人としてのプライドがないんかい」

「まー、これで覆面は手に入ったから、次は鉄拳のメイク落とした姿でもゲットしたいな」

「そんなもん楽屋でまた見せてもらえ。んでなんで覆面の人のほうは名前ふせてんのに鉄拳はもろだしなんねん」

「いや覆面の人は売れてるからちょっと特徴あげれば分かるけど鉄拳は…」

「鉄拳はで止めるな。失礼やろ。あの人もがんばってんねん。大体お前もどっちかいうたら売れてないほうやろ。がんばらなあかんねんぞ」

「いや、俺より来年あたりテレビから消えてそうな芸人さんおるで」

「だれや、言うてみー」

「桂歌ま…」

「待てー、やっていいネタと悪いネタがあるぞ。さっきから悪いネタが多いけどな。今は生きてるからいいけど、この話何年後かに見た人のころにいなかったらめっちゃきまずいわ」

「ええやん、桂の隣に座ってる馬顔の弟子の腹黒いのが言いそうなネタやん」

「あほんだら、んなもん言ったら馬顔の師匠も座布団全部持っていかせるわ」

「じゃあなにか、座布団配りの人が一枚あげるように見せかけて全部持ってく言うんか」

「ようわかってるやないかぼけ、そのとうりじゃあほんだら」

「お前がそんなに文句ばっかり言うなら言わせてもらうけどな」

「なんじゃ」

「俺がやったネタは全部パクリじゃ、どっからどこかまでもパクリじゃ」

「やめえや、見てる人信じるかもしれんじゃろ。嘘ですからねー、信じんといてくださいねー。芸風はまねてもネタはぱくってませんからねー」

「パクリです、ぜーんぶパクリです」

「悪かった、俺が悪かった。謝るからその嘘やめてくれや」

「そんなら俺の話聞いてくれるか」

「きいたる」

「俺名オンバトに関してもうひとつ夢があるんやけどな」

「ほうほう」

「ミュージシャンとして熱唱編の方出てみたいねん」

「ぜったいむりやわ、もうお前とはやっとれへん、やめさせしてもらうわ。」

「そうか、ほなさいなら」

「ありがとうございました」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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