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ジェントリーとサーバント 作者:はちみつくまさん 藍

最終回   急展開、書くのに疲れた、これを改良して新手に作るかも? 後、ご期待。
◆過去と未来が交差する瞬間◆
ベッドにあやめを横たえる。
どうしてだろう。見慣れているはずのメイド姿なのに、艶めかしく見えてしまう。
メイド服が皺になるかもしれないけど、そんなことを気にする余裕は僕にはなかった。
「先輩・・・・・・・・・・・・」
「あやめ・・・・・・・・・・・・」
僕を見つめてくるあやめの頬に優しく触れる。暖かく、とてもやわらかい。
あやめの胸元に手を伸ばしメイド服を脱がしていく。
綺麗だ。あやめの美しさに、思わず見とれてしまう。
「あまり、見ないでください・・・・・・」
僕の視線に気付いて、困ったように呟く。
「どうして?」
「だって・・・・・・その・・・・・・・・・・・・」
「恥ずかしい?」
あやめがこくっと頷く。
だけど、僕はかまわずあやめを見続けた。
「せ、先輩・・・・・・」
「ん?」
「その・・・・・・見ないでくれるんじゃ・・・・・・?」
「こんなに綺麗なのに・・・・・・見ないなんてことはできないよ」
「そんなの・・・・・・いじわるう・・・・・・」
そんな、拗ねたように呟いた唇が愛しくなって・・・・・・僕は口づけを交わす。
「あ・・・・・・っ・・・・・・んん・・・まみ・・・っ」
不意に舌を差し込む、少し驚いたみたいだけど、すぐに抵抗をやめて絡ませてくる。
柔らかな舌を吸い合ううちに、あやめの瞳がとろんとしてきたのがわかる。
ブラを外すと、形のよい胸が露になった。その白い隆起とその桃色の蕾に目を奪われてしまう。
あやめの息遣いに合わせて上下する胸。僕は手を伸ばして優し揉みしだく。
「あ・・・・・・っ」
小さく、声が漏れる。
指に触れる蕾が次第に固く尖っていくのがわかる。
「あっ・・・・・・んっ・・・・・・くっ・・・・・・んん・・・・・・あ・・・・・・」
硬く尖った蕾に触れて、つまみあげると甘い声が漏れていく。
「先輩・・・・・・私・・・・・・何だか・・・・・・変・・・・・・んっ・・・・・・切ない・・・・・・です・・・・・・」
自分の中に生まれ始めた、初めての感覚に戸惑ってるみたいだ。
「はあっ・・・・・・はあっ・・・・・・先輩・・・・・・・・・・・・」
切なく尖りきった乳首を唇に含む。
「あふっ・・・・・・そこ・・・・・・んくっ・・・・・・」
「可愛いよ・・・・・・あやめ」
耳元で囁き、耳たぶを軽くかむ。
下を使って、そのまま首筋までゆっくりと舐めていく。
「ふぁ・・・・・・あっ・・・・・・ぁ・・・・・・
乳首まで降りてきて、舌で舐めあげると、あやめは強くシーツを掴んで身をよじらせる。
「胸が弱いんだね」
「わかりま・・・・・・せん・・・・・・・・・・・・・・・」
すでに目が熱にうかされたようにとろんとしている。
胸への愛撫は充分だろう。次は・・・・・・。
右手を伸ばし、パンティ越しにあやめの大切な部分へと触れる。
そこはもう、布地の上からでも感じられるくらいに・・・・・・潤っていた。
「あっ・・・・・・え・・・・・・そこ・・・・・・あ・・・・・・・・・・・・」
割れ目に沿って、指で下から上へとなぞってゆく。その敏感な芽にも軽く触れる。
「ああ・・・・・・んく・・・・・・ふぁ・・・・・・あ・・・・・・」
唇と舌で愛撫していく。
僕の唾液とあやめ自身の愛液で、白犬布地の向こうにうっすらと色付く花弁が透けて見えている。
「外すよ・・・・・・」
「・・・・・・あ・・・はい・・・・・・」
あやめが少し腰を浮かせる。
僕は濡れて少し重くなった下着をするすると脱がせていく。
濡れそぼった花弁がむき出しになる。
既にあやめのそこからは蜜が溢れ始めて、尻の下まで流れていた。
「恥ずかしい・・・・・・」
真っ赤になった顔を隠し、身を縮めてしまおうとする、。
「そんなことないよ。あやめの身体に恥ずかしいところなんてないさ」
でも、あやめは横を向いてしまう。
これから自分に起こることに、少し怯え戸惑い、硬くなっているみたいだ。
「緊張、している・・・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい」儚げに,こくりと頷く。
あの雨の日、あやめが見せた激しさからは想像も出来ないほど、怯えているようだ。
もしかすると、あれはあやめの強がりだったのか――そう思うと、愛しさが募る。
「大丈夫。僕を信じて・・・・・・」
「はい・・・・・・・・・・・・」
僕の硬くなったそれをいきなり入れるのは無理かもしれない。
そう思って僕は――
「少し、力を抜いて・・・・・・」
指を一本浅く入れてみる。――じゅぷっ・・・・・・。
「ああっ・・・・・・」
卑猥な音を立てて、あやめの膣壁が指をきつく締めつけてくる。
指をかるく折り曲げただけで――
「んくっ・・・・・・」
腰が跳ねる。
「あ・・・・・・う・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・」
吐息が次第に熱を帯びていく。
二本、三本と増やした指を動かすたびに、華奢な身体をのけぞらせる。
「ああ・・・・・・くう・・・・・・はあ・・・・・・ああ・・・・・・」
僕の指に操られるように、大きく悶えるあやめの姿が一瞬――
マリオネットのように思えた。いや――
――ちがう。あやめは決して人形なんかじゃない。
でも・・・・・・人形の持つ、純粋さとか、儚さ、もろさ・・・・・・あやめのそんなところに惹かれた僕がいることも確かだ。
「あっ・・・・・・あっ・・・・・・んくっ・・・・・・」
あやめの発する声に、僕の慾が走り始める。
「ふぁ・・・・・・あっ・・・・・・ぁ・・・・・・」
僕の指に合わせて、幾度か繰り返して発せられるあやめの艶やかな声。
その度に股間の窮屈さは増し、自由な空間で、その背を伸ばす事を欲していた。
あやめの喘ぎ声に、自分も愛撫されたいと思う。
瞬間――。
僕はあやめの軽い身体をひっくりかえし、その下に潜り込んで腰を引き寄せる。
そして、気が付いた時には、ズボンの前を開き、硬く強張ったモノを曝していた。
僕はあやめの身体を確認する。
身体全体が受け止める、あやめの重み。
腰から尻をまさぐると、ての中にあるあやめの腰の細さや、お尻の小ささを実感する。
掌には、その柔らかくて滑らかなさわり心地が感じられる。
指の形に合わせて緩やかに沈むあやめの肉。
その掌が受ける感覚の他に、僕のモノもまた、その先っぽにあやめの頬の柔らかさを受け止める。
そして、視覚が捉えるのは、あやめの大切な部分。
白く透き通ったような丘の谷間に、淡い桜色の薄いヒダが覗く。
さっき触れたせいだろうか。そのヒダの間には、鈍い光沢を湛えた粘液が溜まっていた。
「恥ずかしい・・・・・・」
僕の視線を感じたのか、あやめは少し腰を動かしながら声を漏らした。
「すごく・・・・・・、綺麗だ」
けっして、お世辞なんかじゃなく。
きっと、それは僕の中のオスが、そう感じさせるんだろう。
あやめの脚の付け根に掘り込まれた造形美。
そこにある曲線(アール)の全てに、その細部(ディテール)の全てに、美を感じる。
「僕のも・・・・・・」
一言そう頼む。
「んぁっ・・・・・・は、い・・・・・・んぅっ・・・・・・く・・・・・」
亀頭の先から、唇の感触が伝わったかと思うと、すぐに熱く柔らかな刺激は竿のクビレの辺りまでやってきた。
初めて、自分以外の肌が性器を刺激する感覚に、頭の奥のほうがチリチリと痺れたようになる。
あやめの口の中、その熱さと柔らかさが、僕の席にまとわり付き、いっきに気持ちよさが増していく。
ただ受身になる事から逃れるために、僕は、あやめのワレメに指を這わせた。
「んむ・・・・・・ん・・・・・・んふっ・・・・・・ん・・・・・・んぅ」
「・・・・・・うぁっ」
思わず声が漏れる。
あやめが喘ぎながら僕のモノを咥え続けるので、股間の根本の方に、強い熱が溜まってゆく。
このままだと、すぐにイってしまいそうだ。
そう思った僕は、気を紛らわせる為に、あやめの花弁への愛撫を強めた。
入り口の辺りをなぞると、液体がまとわり付く。
「んふぅっ・・・・・・ん・・・・・・あく・・・・・・んっ、んぁっ」
愛液は、どんどんあふれ出てきて、指を動かすごとに周辺の肉に塗り広げられていく。
やがて、愛液を塗り広げる指の動きに小さな硬い感触がぶつかった。
指の刺激を受けて、米粒ほど小さな膨らみが、遠慮がちにそれを包む鞘から半球覗かせた。
淫核――。いったい、こういった言葉はいつ憶えるものなのか?
好奇心にかられ、愛しさに押され、僕はその淫核に触れる。
小さな塊の周辺を、愛液を潤滑油としてなぞると、あやめの声が一層高くなる。
「ああっ・・・・・・あ、こん、な・・・・・・ひっ、あ、あ、や・・・・・・あ、はぁ・・・・・・っ、んっ・・・・・・ひぅっ」
あやめが悶える度に腰が動くせいで、上手く愛撫できない。
でもそのおかげで生まれる不規則な刺激が、あやめをさらに感じさせているようだ。
「んむ・・・・・・ん・・・・・・んふっ・・・・・・ん・・・・・・んぅ」
そして、あやめはどんなに感じても、僕のモノから口を離さない。
不器用に、それでいて、一生懸命に咥えつづけてくれる。
「ふぁ・・・・・・ん・・・・・・く・・・・・・む・・・・・・」
棒は、動くあやめ腰に合わせて、なんとか指での刺激を続ける。
「んっ・・・・・・ふ・・・・・・ん、んぁっ・・・・・・はぁっ」
喘ぎ声を聞くたびに、愛しさが込み上げて、もっと気持ち良くしてあげたいと思う。
「んっ・・・・・・ん・・・・・・んくっ・・・・・・ふぁっ」
そして、それに応えるように、あやめからの愛撫も激しさを増していく。
「んっ・・・・・・ん、む・・・・・・ふっ・・・・・・はっ、あっ、・・・・・・くっ、ん・・・・・・ふ、ぁ・・・・・・っ」
より深く咥え、それを引き抜くときには、僕のモノに添えられた舌の強い摩擦を感じる。
その摩擦のせいで、亀頭がジンジンと痺れてくる。
「そ、そんなにしたら・・・・・・」
今はまだイキたくない。
僕は両腕であやめの腰を引き込み、頭を上げて、性器を舐めた。
汗のような不思議な臭いが、鼻をくすぐる。
入り口付近に舌を這わせると、愛液が纏わりついて、少し酸っぱいような、しょっぱいような刺激を受ける。
そして、そのまま淫核を激しく舐め上げた。
大きなストロークで舌を上下させると、あやめが急に強く感じ始める。
「んくっ・・・・・・ぁ・・・・・・あっ・・・・・・んぅっっ!」
よほど感じてしまったのか、あやめは軽く気をやってしまったみたいだ。
「は・・・・・・あぁ・・・・・・ぁ・・・・・・」
僕のモノから口を離し、息を整える。
そんな吐息すらも艶やかで、僕の頭の中は、あやめとひとつの身体になる事でいっぱいになってしまった。
あやめが欲しい。僕のものにしたい。
それはきっと・・・・・・子供がおもちゃを欲しがるよりも当然なことだろう?
「あやめ・・・・・・いいかい?」
「はい・・・・・・来て、ください・・・・・・」
自分の服を手早く脱ぎ去ると、あやめの両足を開かせた。
あやめに覆いかぶさり、その中へ入っていく。
「・・・・・・・・・・・・んあぁっ」
僕のそれが、あやめの純潔の証に突き当る。
一瞬、躊躇してしまう。
それを感じたのか、あやめが微笑みで答える。
「大丈夫・・・・・・このまま・・・・・・先輩を感じたい一つになりたいです」
可愛い・・・・・・。
「僕もだよ・・・・・・あやめ」
こみ上げてくる愛しさに突き上げられて、僕はあやめをゆっくりと奥まで貫いていく。
「んぁぁぁ・・・・・・っあっ・・・・・・・・・・・・!」
こらえるように喘ぎ声を上げながら、ぎゅっとしがみついてくる。
あやめの目に涙が浮かんだのを見て、動きを止める。
「痛かった・・・・・・?」
「いいえ・・・・・・平気です・・・・・・」
「これは・・・・・・嬉しいから・・・・・・やっと、一つになれたから・・・・・・」
「だから・・・・・・動かして、ください」
ゆっくりと動き始める。
「はぁ・・・・・・あぁ・・・・・・あん・・・・・・あぁ・・・・・・」
僕が突き上げる度に、あやめの身体が揺さぶられていく。
時折首筋や乳首へとキスを刻みながら、ゆっくりと腰を動かし始める。
「あ・・・・・・くっ・・・・・・い・・・・・・あぁ・・・・・・」
僕が腰を動かすたびに、あやめの喘ぎ声はその色を変えていく。あやめの白い肌が紅潮していく。
あやめが感じているのがわかる。愛しさがますます募ってくる。
「はぁ・・・・・・あやめ・・・・・・くっ・・・・・・」
「はぁ・・・・・・あ・・・・・・やっと・・・・・・一つに・・・・・・」
そう。今、あやめと一つになっている。大切な人が、腕の中にいる。
「あん・・・・・・あ・・・・・・先輩・・・・・・あ・・・・・・」
イリス、メリッサ――あやめの姿をした女性なら、夢の中で幾度となく乱れる様子を見てきた。
でも、今僕の腕の中にいるのは、本当のあやめだ。
イリスとホルストでもなく、メリッサと昭浩でもない・・・・・・本当に、僕とあやめとして一つになっている。
「ん・・・・・・あぁ・・・・・・はあ・・・・・・あぁ・・・・・・」
決して夢なんかじゃない。その証拠に、いつしか、粘膜のこすれあう淫らな音が部屋中に響いているけど・・・・・・かまうもんか。
「や、何、これ・・・・・・あ・・・・・・あぁ・・・・・・」
あやめの声が昂ぶってくる。
最初の頃の辛さはすでになく、甘い声で鳴きながら僕のリズムに合わせてくる。
のけぞりながら、自分から腰をもちあげて擦り付けてくる。
「勝手に・・・・・・動いて・・・・・・私・・・・・・私、こんなっ・・・・・・あっ・・・・・・んっ・・・・・・」
彼女を貫いていく勢いは止められない。
「あ・・・・・・気持ち・・・・・・・・・・・・い・・・・・・い・・・・・・ああ!」
あやめの顔は紅潮し、汗を飛び散らせるのもかまわずに腰を動かしてくる。
「どう、して・・・・・・こんな・・・・・・い・・・・・あ・・・・・・」
普段のあやめの様子からは想像できない乱れようだ・・・・・・。
それだけ僕の興奮も止まらなくなる。
「僕もだよ・・・・・・あやめ・・・・・・あやめ・・・・・・!」
「先輩・・・・・・嬉しい・・・・・・あ・・・・・・あ・・・・・・!」
思い切り深く、あやめの中に幾度も腰を突き入れる。
「あっ・・・・・・激しッ・・・・・・あっ・・・・・・」
時折、激しさに堪えられないのか悲鳴を上げる。
ごめん、もう手加減なんて出来ないよ。
「あやめ・・・・・・好きだ・・・・・・離さない・・・・・・」
僕にもどうしようもないんだ。
壊したいくらいに、愛したくなってるから。
「嬉しい・・・・・・私も・・・・・・愛して、るっ・・・・・・」
でも、あやめもそうだろう?だって――
「だから、突いて・・・・・・もっと・・・・・・激しく・・・・・・激しく・・・・・・!」
そんなはしたない台詞まで聞かせてくれるんだから。
「ああっ・・・・・・ああっ!だめ、もう・・・・・・いいっ・・・・・・いいっ・・・・・・」
あやめの中が収縮して、痛いくらいに僕を締めつけて来る。
しびれるような快感が、僕の腰から突き上がって来る。
「はあ・・・・・・っ!もう・・・・・・あぁ・・・・・・」
あやめの身体が折れそうになるくらいのけぞる。
「くっ・・・・・・もう・・・・・・出る・・・・・・ッ」
「先輩ッ!・・・・・・私・・・・・・私も・・・・・・だから・・・・・・だから・・・・・・!」
「・・・・・・だから?」
ふいに首を持ち上げた嗜虐心が僕に言わせる。
「先輩を・・・・・・感じたい・・・・・・。お願い・・・・・・です・・・・・・くだ・・・・・・さい・・・・・・私の、父膣内(なか)に・・・・・・!」
「くっ・・・・・・あやめ・・・・・・っ!」
僕の理性も飛びかけている。
ジェントリーとか、メイドとか、どうでもいい。
僕は男で、あやめは・・・・・・一番大切な女(ひと)なんだから。
「あやめ・・・・・・あやめ・・・・・・あやめ・・・・・・!」
下半身に込み上げて来る熱情のままに、あやめの名前を繰り返す。
「や、もうっ・・・・・・ら、らめ・・・・・・あ、あっ、あぁっ、ふ、く、くるっ、は・・・・・・ああっ!あっ!あっ!あっ――――!」
「――――ああああああぁぁぁぁっ!!」
「あやめっっっっっ――――!!」
僕はあやめの奥深くに、ありったけの精を一気に放つ。
「ああ・・・・・・あ・・・・・・ふぁ・・・・・・」
「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・うっ・・・・・・うう・・・・・・」
大量の精を受けた襞はさらに小刻みに収縮を続けて、僕からさらに絞り出そうとしているようだ。
「ぁ、熱い・・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・・・・・」
時折軽く痙攣しながら、初めての絶頂の波に打ち上げられ、ぐったりしている。
「あぁ・・・・・・溢れて・・・・・・来て・・・・・・ます・・・・・・」
あやめのいう通り、僕とあやめの繋がったところから、白いものが流れていた。
ほんのりと赤く染まった、僕の熱いほとばしりが・・・・・・。
◆ 二人の未来◆
ベッドの中、僕は裸のあやめをギュッと抱きしめていた。
「愛してるよ、あやめ」
「はい・・・・・・芹人、様・・・・・・」
「え・・・・・・?」
見れば、あやめは真っ赤になっていって、僕の胸に顔を押しつけてきた。
「今、僕のこと・・・・・・」
「・・・・・・ダメ、ですか?」
「い、いや・・・・・・!全然ダメじゃないよ!」
「芹人様かぁ・・・・・・・・・・・・」
蓮奈さんやミセス・ヨーコとかに呼ばれなれてるその呼び名も、あやめの声で聞かされると、耳に気持ちよかった。
「もう一回。もう一回呼んで」
「せ、芹人様・・・・・・」
「もう一回」
「芹人様・・・・・・」
「もう一回」
「芹人様・・・・・・」
「もう一回」
「芹人様・・・・・・もう、恥ずかしいです」
あやめが小さく頭を振る。
「嬉しいよ」
芹人って名前で呼んでくれる。それはあやめが他の誰でもない、僕を見てくれてるってことだから。
「あやめ・・・・・・」
「芹人様・・・・・・」
ついばむようなキスをする。
「ねえ、あやめ」
「はい・・・・・・?」
「今度買い物に行こうよ」
「買い物・・・・・・ですか?」
「うん。あやめと一緒に買い物に行きたいんだ」
「はい・・・・・・」
「他にはそうだなぁ・・・・・・」
「そうだ。前に欲しがっていたぬいぐるみ、取りに行こうか?」
「本当ですか?」
「もちろん」
「嬉しい・・・・・・」
あやめの顔が喜びにほころぶ。
「他にも行きたいところはいっぱいあるんだよなぁ・・・・・・」
「ふふ・・・・・・」
「ん?どうしたの?」
「楽しみです。芹人様と一緒に出掛けるの」
(僕もだよ)
その気持ちを伝えたくて、僕は言葉にしないで――キスで伝えた。
「んっ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・ははっ」
「・・・・・・ふふっ」
僕とあやめの時間は、これからいくらでもあるんだ。だから、焦ることなんてない。
どこに行きたいか。何をして遊びたいか。
それを一緒に考える時間だって、きっと素敵な思い出にできる。
・・・・・・いや、思い出にするんだ。
「芹人様・・・・・・?」
「愛しているよ、あやめ」
「・・・・・・はい、私も芹人様を愛しています」
胸の中のぬくもりを、僕はそっと抱きしめた。
◆あやめの未来は◆
「僕に用事って・・・・・・なんだろう?」
僕はおじい様に急に呼び出されて、書籍に向かっているところだった。
僕とあやめは本当に結ばれて・・・・・・。
僕は少しでもあやめと一緒の時間を過ごしたくてたまらなかった。
人の恋路を邪魔するやつは、馬にけられてなんとかかんとか――何処かで聞いた言葉も、今は名言に聞こえる。
はたから見たら浮かれているとしか思えないんだろうけど、気にしない。
というか、気にならないし、そんなの他人のやっかみだって言い切れる。
僕はあやめを愛してて。あやめも僕を愛してくれてる。
「どんな用事でもいいけど、早くすませて戻ろう」
あやめはそばに少しでも早く戻りたい。
書斎の前に立つ。
「おじ・・・・・・」
ノックしようとした時だった。
「どういうことだ、あぁ!?」
――普段耳にすることのないような、卑しい罵声が聞こえて来た。
「・・・・・・・・・・・・」
よくわからないけど、おじい様は客人と取り込み中のようだ・・・・・・それも、あまり歓迎されないような種類の客と。
入ろうかどうか・・・・・・少し迷う。
でも、こんなところで待ちぼうけをくらっているより、早く用事をすましてあやめのところへ戻りたい。
「よし・・・・・・」
失礼かと思ったけど・・・・・・ノックした。
「芹人です」
「入れ」
そう言われたので、僕は遠慮せずに中に入った。
書斎には、おじい様の他にもう一人の男がいた。
下卑た声の主だろう、一目で怪しいと判る――あまり近づきたくない種類の男だ。
「・・・・・・・・・・・・ちっ」
人を値踏みするような目を僕に向けた男は、再びおじい様を威嚇するように睨み付ける。
「――だから何度も言っている」
「彼女に相続の権利を放棄させることは、故人の意志なのだよ」
「その遂行を任された以上、それを引き受けた以上、護り通すのが当家の義務だ」
威厳に満ちた声には少しもひるむところがない。
「冗談じゃねぇ。大体、ババアが拾ってきた捨て猫みて―なガキに、どうして遺産の殆ど持ってかれなきゃならね―んだよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!」
ババア・・・・・・捨て猫・・・・・・ガキ・・・・・・。
そんな下劣な言葉に込められた悪意の矛先に気がつく。
「ふん、話にならん。帰りたまえ」
「・・・・・・へっ、ご立派な紳士様だな!」
捨て台詞を吐くと、男は振り返り――明らかに僕にぶつかってくる。
「ぐっ・・・・・・・・・・・・!」
僕は突き飛ばされまいと、必死に足を踏ん張った。
「けっ!」
僕が倒れなかったのが悔しいんだろう。男は睨みつけるようにして、去っていった。
「おだやかじゃないですね。誰なんです、あいつ・・・・・・」
僕は肩を払ってから、おじい様に訊ねた。
「浜路さんの遠い親戚という話だが・・・・・・」
「親戚・・・・・・・・・・・・?」
「少なくとも、そう名乗る者たちだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「今から話すことは、虹咲君には内緒にして欲しい。これは故人の意志だ」
「・・・・・・・・・・・・」
「浜路さんの遺産は、その多くが虹咲君に相続されるように手続きがなされていた」
浜路さんが・・・・・・。
それは浜路さんがあやめに残していった大切な愛情。
「昔から、用意周到な人だよ。そして、こういったトラブルを見越して、財務については私に放り投げてきた」
「我々としては断れないタイミングでね」
「・・・・・・まったく。ご自身の命すらも駆け引きのためのカードに使ってしまう、そういう御人だよ」
「だが、遺産の取り扱いには不満を持つ人々もいるらしい。さっきの男みたいな者たちだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「もちろん、故人の・・・・・・浜路さんの意志は守り通す」
「ただ念の為、芹人も虹咲君の身辺には気をつけてやってほしい」
「わかりました」
「護衛の者でもつけるか?」
「そうですね、できるだけ早くお願いします」
僕はおじい様を真っ直ぐ見た。
「それに、僕も守ります」
守ろう。あやめを傷つけようとする、すべてのものから。僕の全力をもって。
「・・・・・・そうか。お前も一人前になったな」
おじい様が小さく呟いた。
「何か?」
「いや、何でもない。・・・・・・最近、来客が多いのには気がついていただろうが、そういうことだ」
「馴染めない人たちだと思っていたけど、あんな連中ばっかりだったんですね」
「・・・・・・だからお前を呼んだのだ」
「・・・・・・・・・・・・?」
浜路さんの親戚の中には、本当に虹咲君のことを気にかけている方もいる。私が会った限りでは、その方は信頼に足る御夫婦だ」
「独り身だった虹咲君は、また身寄りがなくなってしまったわけだが・・・・・・」
「そういう方になら、面倒を見てもらいのも彼女が幸せになる一つの道だと思う」
「・・・・・・・・・・・・」
「彼女に提案しておいて欲しい」
「・・・・・・わかりました。話しておきます」
「・・・・・・任せたぞ」
僕はただ一礼をして、書斎を後にした。
――素直に納得できるはずがなかった。
でも、ここで僕が断ってしまうことは、単なる我儘だ。
僕の口から伝えさせようとしたおじい様の気持ちだって、無駄にするわけにはいかない。
おじい様の話を聞くまでは、少しでも早く戻ってあやめに会いたかったのに。
今は部屋へ戻る足どりが、まるで鉛のように重かった・・・・・・。
◆未来を選ぶ◆
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あやめの部屋の前まで来たのに・・・・・・。
ノックしようと腕を持ち上げても、その重さに耐えかねてまた降ろしてしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
浜路さんの親戚の御夫婦の世話になる――確かに身寄りを無くしてしまったあやめにとっては申し分のない話だ。
でも――行かないで欲しい、このままそばにいて欲しいと願っている僕がいて。
何度目かの問いを繰り返した時――
部屋のドアが静かに開いた。
「あ・・・・・・やっぱり、芹人様がだったんですね」
現れたあやめはにっこりと笑った。
「え?やっぱり・・・・・・って?」
「何となく、芹人様がいるような気がしたんです」
「あやめ・・・・・・」
「嬉しいです。芹人様が来てくれるなんて。さあ、どうぞ」
あやめに促されて、僕は部屋の中に入る。
――そういえば、あやめの部屋に入るのは初めてかもしれないな。

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