「あっそうだっ」 ギャルは なにか思い出したようだ。 そして 台所へ行き 大きなダンボール箱を一つ抱えて戻ってきた。 そしてジョージの前に置いた。 《ん?・・・何なんだ?かなりデカイな・・・。》 ジョージはダンボール箱を チラッと見て言った。 ダンボール箱はジョージに比べると 3倍・・・ いや5倍は大きかった。 『・・・。』 ダンボール箱は じっとジョージを見ている。 《なんだ?・・・オイラに何か?》 ジョージは さっきまでギャルがポーズをとっていた鏡で自分を見てみた。 《・・・特に変ではないと思うが・・・。》 ジョージは斜めを向き 軽くポーズを決めてみた。 《ふっ・・・まだまだ オイラも捨てたモンじゃないぜ・・・》 一人酔いしれているジョージに ダンボール箱は少し冷ややかな視線を送っていた。
「昨日 実家から届いたんだ〜。」 ダンボールはギャルの母親からの宅急便だった。 中には お米・お菓子・調味料などが ギッシリ入っている。 ジョージはまだ鏡に向かっている。 『お前・・・。ジョージじゃないか?』 ダンボール箱はョージを知っているようだ。 ジョージは 鏡越しにダンボール箱をチラッと見た。 《・・・。誰だ?なぜオイラを知っている・・・。》 ジョージとダンボール箱の間に 緊迫した空気が流れた。 『やっぱり そうか。変わってないな。』 《・・・。ん・・・思い出せない・・・。》
・・・ジョージは物覚えがあまりよくないようだ・・・
「結構 いろいろ入ってるね〜。まだ あるよー」 ギャルは荷物を取り出すのに ダンボール箱の向きを変えた。 《ん?》 ジョージは ダンボールに書いてある文字に目をやった。 《常夏育ちの・・・小粋なあいつ・・・?愉快な・・・マンゴー民族??》 ジョージは読み終わって しばらく考えていた。 《・・・マンゴー民族・・・マンゴー・・・マンゴー!!》 ジョージは思い出した。 『思い出したかっ!』 ダンボール箱は ニヤッと笑って言った。 《元気そうだなっ。今はマンゴーの運び屋はしてないのか?》 『あぁ・・もう7年前にやめたのさ。今はフリーだ。 お前・・・あの頃に比べたら 随分と派手になったというか・・・ 相変わらず 今でもいろいろと運んでんのか?』 《まぁな・・・。今回はこのコシュチュームだが 結構気に入っている。 事務所の決めたことだ 文句は言わねぇ。》 ジョージは 袋を広げて見せた。 『似合ってるさ。あの頃のお前は地味だったから 違う奴かと思ったぜ。 でも ナルシストぶりは変わってなかったから すぐわかった。』
・・・ダンボール箱と出会った時ジョージは マンゴーを包んだ茶色い小袋だった・・・
《あの仕事はよかったぜ・・・。 開き時間は 甘くていい匂いのマンゴーガール達と おしゃべりできたしな・・・。》 ジョージは マンゴー運びの仕事を思い出していた。 『あははっ。お前はマンゴーガールにモテモテだったなっ』 《ふっ・・・なに言ってる・・・それほどでもないさ・・・》 ジョージは満更でもなさそうだ。 《あの頃のように またもう一度一緒に仕事ができるといいな・・・》 『だな・・・。だけどオレは 今回のこの仕事で引退だ。 フリーになってからは ボディー管理は自己責任だからな・・・。 もうかなり 痛んでしまった。 もう ここらで若い世代に任せていいかなってな。』 ダンボール箱は 確かに角も摩れていて フタも破れかけているのを ガムテープで貼り合わせていた。 『お前のように事務所に入っていれば 再生の道はあるが フリーになると使い捨てだ。』 ジョージは黙って聞いていた。 『もう少し 早く再会していれば 一緒に仕事できるチャンスもあったのにな。』 ダンボール箱は 残念そうな目をして言った。・・・つづく
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