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日の出食堂とハーレーダビットソン 作者:マーキー

第6回   6
久しぶりに仲良しチームが休みが合うって事で、豊中の銭湯でも行くかって待ち合わせ場所に急ぐと皆もう到着の様子。その中に見なれない一台のバイク ビックスクーターってやつですな しかも女の子。珍しさも手伝って少々テンション上がりながら挨拶しました。
キセくんの友達で聞けば某フランス料理屋さんの調理師さんらしく家は大金持ちとの事またまたテンション上がります。キセくんの紹介でお話。「これスカイウェイブってバイクですよねー」「んーそう。スカイウェイブ650でそれも一番上のグレードなんよ オーディオもついててカスタムも結構やってるし 私遅いバイク嫌いやからこれぐらいじゃーないと**それに全国ツーリング行くからナビも必需品やし底のほうにはLEDつけてるから晩むっちゃ綺麗なんやん」「あーそう」ボー然 なんやこの女 確かにイイバイクやけども僕はグレードなんか聞いてないし、まして遅いバイクきらい?なんて質問してないし全国ツーリングに興味あります?って質問もしてないしなー
いやー金持ちの娘ってあんまり出会わないので免疫ないんかなー なんかむかつくわー
そしてその娘はキセくんに「この人は?」 「あー木屋町で日の出食堂ってお店やってるマーキーさんやで」「へー食堂ですか」 カッチーン!食堂バカにしてんのかお前!
しかも本人に聞いたらどう?目の前にいますやん僕とか なんやのん そのタカビーな態度 なんや横文字やったら偉いのか? お前朝昼晩フランス料理でワイン飲んでんのか 大体LED地べた光らして小銭でも探すんか?船底照らしてイカでも釣るんか? ナビゲーションってなんやねん 地元のおばちゃんの方がよく知ってますよ道なんか コンビニの前で女子高生に道聞いたほうが夢あるやろう 分かる?ナビゲーションよりコミニュケーション違いますか あなた遠出の楽しみは機械仕掛けか ロボコップでもハーレー乗ってんぞ! このブルゴーニュ産アンドロイド金持ちお嬢様! もうお前となんか絶対走りになんかいきませんから。マジで

第12話
12月31日大晦日の夜
別に用事のない僕は相変わらず日の出食堂でお仕事をしていました
14型高級テレビ設置店のわが店は格闘技一色でやんややんやの満席状態で忙しい年の瀬を迎えていました。正月特別料理などある訳もなくいつものように焼酎ウーロンをがぶ飲みしながらテレビ画面に向かって一喜一憂しておりました。
11時すぎにすべての格闘技が終わり まったりムード 後はカウントダウンを待つばかりといった雰囲気の中で信じられない切ない事件が日の出食堂におきる事を知らなかったのは僕だけだったのでしょうか
11時50分を過ぎたころ 突然おあいそチェックが続出 「えーなんやねん帰るん?みんな?」

「マーキーさんありがとう カウントダウン行ってくるし早くおあいそしてよ」
あーそうですか 行きつけのバーのカウントダウンにそれぞれ行くわけね あーそう
「マーキーさんこっちも」「こっちもマーキーさんおあいそ」
気がつけばノーゲスト だれもいない** 無情にもウチの14型高級テレビから流れる行く年来る年は「明けましておめでとうございます」 ひどい 年越しの瞬間に僕は一人 寂しい年越しをやってしまいました。
結局 ウチの人気者は僕でもなく料理でもなく スポーツ観戦等で大活躍のこのちっちゃいテレビってことですか しかも誰一人僕と年越しをしてくれなかったじゃないですか
そうさ所詮人は一人なんだ 結構です一人で生きていきます ほっといて
飲食店が終わりの時間頃からパラパラとお客さん来てくれてバーが終わる頃には大盛況
グルグルに酔っ払い そのまま大人数で八坂神社で初詣 この時間帯は水商売の人間でいっぱいで新年の挨拶が止まらん止まらん 知ってる人だらけでむっちゃ楽しくて絶好調!
しまいには 八坂さんのこまいぬに全裸で騎乗して警察に追いかけられる始末 新年早々お騒がせな面々ではありますが 来年の正月もこの不況木屋町を乗り切って皆で初詣できますようにって安賽銭で神様にお願いいたしました。
どうか来年年越しは誰でもいいから 一人にしないでいただきたい。
よろしくおねがいします




















いつもどおり潰れて店で寝ていると電話。むりくり起きて受話器を取ると 滋賀のおばさんからでした。おばさんはオヤジの年の離れた姉さんで オヤジが離婚し大阪で働いている間4歳まで僕はおばさんに育ててもらっていました いわば第2の母親のような人です
僕はいまだにおばさんをかあちゃんと呼びそしておじさんをとおちゃんと呼び 鹿児島に帰るまでホントの息子のように育てられました。「とおちゃんがもう長くないから見に来てほしい」と元気のない声。僕は急いで病院に向かいました。
病室に入ると見る影もなくやせ細ったとおちゃんと看病の疲れでぐったりしたかあちゃんが居り 「末期がんやねん もうご飯も食べられへんし アカンって言わはったから」
何一つ恩返しできていないのに とおちゃんは僕の事も、もう分からない様子だったから
死ぬまで毎日見舞にいこうと思いました。
一週間ほどたったある日病室に入ると歯医者さんが来ていて入れ歯の型取りをしていました。かあちゃんに「なにしてるん?」て聞くと「痩せて入れ歯が合わなくなったから新しいの作ってんの」って「とおちゃんご飯もう食べられへんのにいらんやろ」とかあちゃんに言ったら「お見舞に来てくれた人にとおちゃん歯なかったらカッコ悪いしな作るねん」
看病疲れで憔悴しきった顔で ぜんぜん寝てないのに そこまで考えられるもんかって
死に際の入れ歯やな 実際最後はそれから10日もかからなかった
最後まで面倒見るっていうのはこういう事なんやってはじめて気付かされました。
愛だの恋だのそんなハナクソな言葉なんかふっとぶわ アホらしい 
とおちゃんはかっこよく死ねたな ホントに普通の夫婦やけど ソレをしてもらえるとおちゃんとソレをするかあちゃんが僕の夫婦という関係のあこがれになりました。
帰り道ハーレーに乗りながら 僕は死に際の入れ歯を作ってもらえるかなって きっと今のままじゃ無理やなって 僕が一生をかけてほしいものは 死に際の入れ歯やなって思っていました。きっと金持ちでも大社長でも総理大臣でもなかなか手に入らへんで マジで


第13話
結婚するって本当ですか

バー「T」のオーナーきらさんがいつものように朝ごはんを食べにきてくれて暇だったので二人でワッシャワッシャお話してました。きらさんが「マーキーさん僕の遊び相手の女の友達が男ほしがってるから紹介するわ」あらーありがたやウァッショイ瞬間うれしかったが、ある友達の顔が頭に浮かんだ。ロバくんは以前フリーペーパーの営業マンで「マーキーさん僕会社辞めて 木木屋町の中でデザインやりたいんです」って相談されて「そーやなー看板やらフライヤーやらメニューやら安くでやったらいけるやろう」と
言う事で早々に会社を辞めて現在フリーでデザイン全般の仕事をしているがんばりやさん
僕は彼にねぎらいの意味もこめて このおいしい話しを振る事にしました。
「きらさん ロバくんに振りますわ そのかわり僕も一緒にいって盛上げますから」
当日バー「T」に集合で店に入るとチューブトップにローライズのジーパンのセクシーギャルがテーブルにちょこんと座っている。「かわいいやんけ」「あっはい」ロバくん緊張が絶頂の様子
二十歳セミロングのさらさらヘアでいまどきの彼女にロバくんは完全に惚れていた
盛上げるだけ盛上げ 僕は早々に席を立った。帰り際に「ロバちゃんいけるで全開でいきや」と言い残して  3日ほどたったある日ロバくんがうれしそうにその娘を連れて来店
「マーキーさんありがとうございます!僕ら付き合う事になったんです」
「あらあらおめでとうございます」聞けばその夜から彼女は家に帰っていないらしくベッタリ一緒にいるらしい。 なんかうさんくさいなー まぁほっとこか って感じでした
そして間もなく問題は出題だれました。 彼女はモト彼と別れるのに条件を出された。それはセルシオ買えとのご命令であったらしく300万の借金をして買い与えたらしいのである。「はい!絶対ウソ!ロバくんもうやめとけ ケツの毛までぬかれるで」ロバくんはあきらめきれない様子で「でもホントやったらあいつ一人で返せる金額じゃないし ちゃんと調べてみます」って 「おいっどこまで惚れてんねん 目を覚ませ バカ!」
翌日連絡があり借用書もあるらしい しかし世の中おかしいわ 20歳の小娘に300万も貸すなんて保証人もなしで 風俗イケって思ってんのかバカ信販会社 僕でもムリッスそんな金額は
それから3ヶ月二人は仲良くやっている 気持ち悪いくらいです この間なんかおそろいのTシャツ着て(しかもロバくんデザイン)現れて「マーキーさん見て!この数字私の誕生日やねん」って彼女。あーそうですか はい 「マーキーさんみんな僕たちをジロジロ見るんすよ!Tシャツ目立つんですかね」 やっぱり んーそうやねーロバくんはっきり言えば 林やペーパーにそっくりやからだと思うんですがねー僕はね
そこで重大発表発令 「僕たち秋に結婚します。今日両方の親に挨拶してきました。マーキーさん司会おねがいしますね なんせ愛のキューピットなんすから」っておい!早いわ
トントン拍子で何よりですが、運命の出会いは人それぞれ 本人がいいなら大歓迎でございます。「結婚せんかったら離婚出来ひんからな!がんばれ」
僭越ながら司会をさせていただきますが、専用Tシャツは不要です よろしく








「あーなんかおもろい事ないかなー」とぼそっとゴンちゃんにつぶやいた。
ゴンちゃんは日の出には珍しいサラリーマンの常連さんでいつも早い時間に晩ごはんを食べてくれるありがたいお客さん。 「マーキーさんはおもしろい事に慣れてしまってるんやで 僕らサラリーマンなんか一日中笑わへん事だってあるんやから」あらそう んーそうかもしれへんなー 酒のせいもあるけど一日のどっかで腹かかえて笑ってるし一般の人よりは、おもろいヤツと関わる事は多いから思わず笑ってしまう出来事も多い気もする。
「キャー!やめてってもう!」はいはい あーやってキャバ嬢が乳首に割り箸はさんで同伴のおっさんと遊んでても、お食事中のアトラクションで普通やな。
団地妻が見たらゴミの日の立ち話の話題ぐらいにはなるやろうけど 
「あーおもろないわー」 バイクでも行きたいわホンマ

第14話
ピロートークにきをつけろ

以前勤めていた店の常連さんのマコちゃんが毎年夏に連れてくるマサミは中学2年生の頃から知っていた。熊本の中学生だったマサミは夏休みになると親戚であるマコちゃんの家に京都見物をかねて遊びに来るらしく看護師をやっているマコちゃんが休みの日は街にご飯を食べに来ていた。
ある日マコちゃんが日の出にやって来て「マーキーさん久しぶり あそこ辞めて独立したってマサミに電話で話したらマサミ来ちゃったよ」と後ろからチラリと恥ずかしそうにマサミが出てきた。彼女はもう高校3年生になっていてえらくおとなっぽくなってて「おー久しぶり!元気?」「冬休みだからお店見たくて来ちゃいました」
おー!かわいくパンチ効いとんなー!あんた それにしてもこの年頃はしばらく見ないとガラリと変わるもんですなー 狭い店ですがよろしかったらという事でご飯を食べてもらいました。
しばらく3人でワイワイ話しているとマコちゃんの携帯に電話がかかってきた。
「ごめーん マーキーさん彼氏来るらしくって 帰るわ おあいそしてー」はいはい
おおきに おあいそを済ましてマコちゃんが席を立つのにマサミは席を立たない
「私もうちょっと遊んでいく。タクシーで帰るから大丈夫」いやいや いいような悪いような それならとマコちゃんはそそくさと帰ってしまい二人っきりになってしまった。
偶然なのか 打ち合わせとおりなのかは定かではありませんが、このお若い方のナデシコジャパンとのワールドカップはたった今ホイッスルが鳴った。
何となくそんな感じであれよあれよという間に気がつけば僕の家 現役女子高生の魅力に
5−0で負けてしまった僕はありがたい方の残念賞をいただいてしまった。
「高校卒業したら京都くるから」あらあら若いくせに甘いピロートークするな
最近の娘はすごいわーと思いながら冗談まじりで「おぅ!待ってるわ」って言ってしまった。その言葉がどれだけ重要な事だったかなんて僕は知るよしもありませんでした。
それから何週間か経って店のポスト入れに大きい茶封筒が入っていて「あーまた請求書かなー」って封筒を開けると自宅近くの老人ホームの案内と手紙が その手紙をなにげに見ると えー!マサミ!えぇーどう言う事?内容を見て僕は腰をぬかした。
「約束通り京都に行きます マーキーさんの家の近所の老人ホームで介護師として働きます 寮は少し遠いけれど、仕事が終わったらマーキーさんの家に帰るので家事の事は心配しなくていいです」要点だけ かいつまむと、こんな感じ
パンクあんどロックやなーマジで ホンマに来るとはえげつないわー
あわてて電話するがマサミのうれしそうな話ぶりに「いやぁーまずいってお前 やめとけ」
が言えなかった。 そして四月半ばとうとう彼女は華の都 京都に来てしまった。
本当に九州の女は情にあつく 自分の思いだけでなんでも出来てしまう人が多いな
彼女は仕事が終わると僕の家へと帰り掃除洗濯を済ませ明くる朝に帰ってくる僕の朝ご飯を作って そのまま仕事に出かけていった。
そして3ヶ月ほどたった頃 彼女の姿は見えなくなっていました
その理由は明白でした。生活がまっさかさまの僕らの生活は彼女が掃除洗濯するときも朝ご飯を作るときもそして寝るときも僕はそばにいなかったから
それは僕にとって仕方のない事だったし泣かれてもわめかれても変えようのないハネめし屋の宿命みたいなものだったのです。
先日いきなりマサミが店に現れて「明日熊本帰る 最初もマーキーさんやったから最後もマーキーさんで帰ります」って いつも百万ドルの笑顔をはなつ僕の顔もその時ばかりはひきつった苦笑いだったに違いないけれど、すがすがしそうなマサミの顔を見てちょっとばかり安心しました。女の人生は男次第と言いますから がんばって男を見る目を養っていただきたいと思います。自分を慰めるなら 京の都のステキな反面教師であったならありがたいのですけれど  甘い甘いピロートークにはくれぐれもきをつけて



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Novel Editor by BS CGI Rental
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