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日の出食堂とハーレーダビットソン 作者:マーキー

第5回   5
本日、仕事帰りに寄ってくれたカイカイさんは、FXの乗るハーレー仲間で、僕らの中では一番バイクカスタムに金をかける大のカスタム好きだ。
ハーレーの愛し方も様々 どの愛し方も否定しないし、正しいと思うけれど、パーツメーカーやカスタムショップ、最新パーツの名前をスラスラと楽しそうに僕に語り掛けるカイカイさんには正直困惑する事が多い。「鉄馬の耳に念仏」同じハーレー乗りでありながら
楽しみ方がちょっと違うから ついつい生返事になってしまう。「明日から半年 和田さんにバイク預けるねん。半年後がたのしみやわ!」「えぇー幾らぐらいかかるん?」
「百五十万ぐらいかな」 ハーレーを保有するというよりは最近死守している僕としては、
まさにイッツミラクルなお話だが、実はあまり羨ましいとも思わない いゃいゃホント
僕のハーレー乗りのかっこよさは、違っていて百万円のカスタムよりノーマルのハーレーの後ろにハダカの女の子を乗せて走ったほうが百倍目立つやんて事。パンチラでも二十五万円ぐらいのカスタムに匹敵する効果あるよきっと 極端ですけど
ハーレーに似合う体系を維持する事。レザーでばっちり決めること 信号待ちでカッコよく回りの視線を楽しむ事。歩道を歩く女子高生集団の心を掴むオチャラケポーズを持っている事。それぐらいが大事ではないかと 思っているのです。
たとえ250の国産スポーツバイクにぶっちぎられても「青いな若造」とニヤリと笑って赤信号で止まりショウインドウに映る自分と相棒に陶酔する。
その気持ちわかるわーって思っていただけるなら、あなたとのハーレー談義は熱い話になるでしょう。結構いるハズ**正直にいきましょうよ みなさん

第9話
  ピンサロ嬢あきの
昔、いきつけのバーで知り合って、少し付き合っていた事がある あきのはピンサロ嬢だ
はじめ出会ったとき、四人でテーブルに座っていたあきの達に友達が話し掛けた事がきっかけだった。今もそう思うんですけど、ヘルス嬢とピンサロ嬢のプライベートの雰囲気は、ちょっと遊びなれた看護婦さんの雰囲気と似ている。キャバ嬢やクラブ嬢は水商売とすぐ分かるオーラがあるのに、彼女たちは結構見分けがつかないのです。きっと奉仕の心を持っていないとピンサロも病院も勤まらないからかもしれないと納得しているけれど、怒る人もいるかもしれないが、僕的にはどんな職業でも、飲んで楽しかったら関係ないし興味があるのはその人本人の引き出しだから、自分に必要な引出しならそれはパクらしていただきたいし明日からのネタにしたいそれだけなのです。
土日のあきのは疲れていて、うちのマンションの鉄の階段を上ってくる彼女はすぐ分かった。片足を軽く引きずるような音がしていたから。
ピンポンが鳴ってドアを開けると憔悴しきった彼女が立っている「ただいま」「おかえり」
土日のピンサロは忙しい ひっきりなしの客らしく一日15人以上の男をこなさなければならないらしい、それはきっと大変な重労働なのだと思うんですが、そして帰りつくと16人目の相手って事にはならないらしく、それはまた別なんだそうです。女の体って奥深いです。
年に一度の琵琶湖バレイで行われるHOGミーティングにアキノを乗せてレッツラゴー
毎年ものすごいバイクが集まるこのミーティングは楽しみしている行事の一つ
革でびしっときめて、あきのも超セクシーファッションで華をそえるのでございます
しかし例年 来ているバイカー達が入りきれないほど会場が狭い。駐車場はデカイのに
でもあれだけバイク並んだら見てるだけでも満足ですけど
あきのも楽しんでる様子でケラケラ一緒に走りまわってました。

帰って家でビデオを見ている僕に あきのが少々重たい顔で話しだした
「ヨコハマの知り合いの店に友達といこうて誘われて行こうと思うねん」
急な申し出だったが、顔を見上げると、もう決まってる様子だったので「んーそうやな、ほしいって言ってくれるとこ助けたほうが値打ちあるできっと」
一度彼女の要る寮にお邪魔した時、あまりの荷物の少なさにビックリしたけれど フットワークが軽い事はいい事だし多分いままでそうしてやってきたんだと思うから
荷物が増えて身動きが取れなくなった自分がなんとなく自由でない気がした
彼女が今、ヨコハマにいるのかは分からない なんせフットワークがいい人ですから
金がなくなったら、日の出食堂にどうそ 今までのお礼と言ってはなんですがお腹いっぱい食べてもらって結構ですから  それまで看板下げないようにがんばります

















仕込み中に飛び込んできたのは、某カフェの調理師かつみ
いきなり飛びこんできたかつみにウーロン茶をだしながら「どうしたん」と尋ねた
「マーキーさんちょっと相談があるんですけど」と表に手招きをすると、パッと見ただけで幼い女の子。「えーなんですか。娘の子は」
話はこうである。 本日お休みのかつみはナンパするべく町にでてきた
四条河原町の交差点の角にちょこんと座りり込む彼女に声をかけたらしいのだが、顔を見るなり泣き出してかつみに話し出したらしい。なんと彼女16歳である。
一ヶ月前彼女が町を歩いていると、キャッチのホストに声をかけられた。
ホストの口車に乗り店にいくとジャンパンやボトルがポンポン空き 気がつけば支払い30万円ナリ 地獄の一丁目にご到着
親に気付かれたくない彼女は手っ取り早く稼ぐべくヘルスやセクキャバの面接に行くが年が若すぎて店に入れない。一件OKの店があったがリスク代がつき身入りが極端に少ないのでやめたらしい。そして町でおっさんに声をかけ自力でウリをやっているらしいのだが
本日をもって支払い期日 タイムオーバー目前でかつみにであったのだった。
「マーキーさんAV監督とか知り合いにいませんか?あと15万らしいんですけど」
「そんなん知るか!第一そんな事に関わりたくないわ!親に頼んでだしてもらえ」
話ている間にも彼女の携帯には追いこみの電話がひっきりなしにかかってくる。
「マーキーさんどうですか?15万で一ヶ月とか、店も手伝わしたらいいじゃないですか。バイトだと思って」
コラ!お前!日の出のコックピットの定員は一人用じゃ そんなややこしいい事する訳ないやろ!親に泣きついたら済むことやろ!はよ帰れ!」
ふっと気がついた。おかしい。かつみはそんな人の事で親身になるようなヤツではない
「かつみ!お前 娘の子カイタやろう!」「すんません ちょっとだけ」
ほんまにもう 弱みにつけこんでそんな事してる。若いからってやっていい事と悪い事ぐらい分れよマジで
「お前そしたら最後まで面倒みろよ!はよ帰れ!ちゃんとしたれよ」
あれからかつみが来ていないところを見ると、多分ケツを割ったんだろう
地獄絵図はほんの目の前にあります。気をつけて


第10話
    ダメな男が愛しい理由
その日はとても暇で朝の3時だというのに客がだれもいなかった。
小降りの雨も降ってきて「あー5時になるまで暇やなー」と思っていました
5時にはバーが終わるからバーテンさんのメシを作るまで準備しようとゴソゴソやっていると、きれいな女性が入ってきた。
「いいですか?」「あっハイ どうぞ」焼酎ウーロンを頼むとめしを食う様子がないので
「ハラへってませんか?」と聞くと「飲むだけでもいいですか?」というのでそれとなくOKしてボーっとテレビを見ていた。
さっきまで泣いていたのかそれとも酔っているのか目が真っ赤でハナを小さく何度もすすりながら急に僕に話かけてきました。
「男の人ってみんな浮気するんですかね」えぇー突然なんですか? 「あーそうですねー僕もバツイチなんですけど、離婚原因は浮気でしたけど」
彼女の話はこうだった。
女癖が直らず家に帰ってこない旦那に電話で「離婚する」と宣言すると二日後に離婚届けが送られてきたらしいのです。
願ったり叶ったりかと思いきやその離婚宣言が半分脅かしだったらしく届けが郵送されてきた時はそうとうショックだったようで、ゆうつな気持ちで封筒を開けると届けの片側はビッシリと埋められていて、あとは彼女が書いてハンコを押すだけの状態。 普通に淡々と話していた彼女が突然泣き出して続きを話そうとする。おーぉオイオイ ちょっとやめてほしいわアンタ 今客が入って来たら、俺が泣かしたみたいやんけ
「でもねマスター旦那の名前のところのハンコ あの人押し忘れててそれを見たら急に悲しくなってたまらなくなって家に帰ったらその離婚届みるのがつらくて飲みにきたん」
私の旦那はホントおちょこちょいで最後まできっちり出来ひんダメ男って事ですか
でもそこが旦那らしい愛しいところなんでしょう。自分が送りつけているにも関わらず
うっかりさんをアホやなぁって軽く叱ることももう無いやろうから
「あー忘れるまで飲みましょう とりあえず今日忘れる分 明日はまた明日忘れる分よそでもいいんで飲んだらいいっすから」
この人は今度好きになる人は、しっかりした人を選ぶのかそれとも愛しいダメ男をまた選ぶんだろうか 
飲み足りなければいつでもどうぞ トドメは僕が一緒に飲んでブッスリ刺しますからご安心を










僕の周りのハーレー乗りは、様々な理由でお金がない
家庭があるもの 学生 先天性貧乏などなど 保有しているというよりも死守しているといったほうがいいかもしれないけれど、この鉄馬に乗り続けたい僕らは知恵を絞り維持しようと努めている 学生のスーちゃんは月々一万五千円のローンでとてつもなく長い月日をかけてパパサンを完済予定だし、スポスタ1200Cの堺さんは本業の後ロシアンパブのアルバイトをしているし、そういう僕もローン督促状が来る事もシバシバ 「いつの振込みご予定でございますか?」なんて店に電話がかかるので「はい!今日売上よかったら明日にでも振り込みます!」と元気よくお答えする 愛しき貧乏人なのです。
しかーし たった一人だけビップなハーレー乗り 大親友ウエムラの勤める居酒屋社長の木下氏は全店11店舗の京都屈指の外食産業のカリスマでエボのファットボーイフルカスタムを駆るおしゃれ金持ちハーレー乗りなのでございます。

独立前に木下氏のライバル会社の番頭だった僕は、以前から可愛がってもらっており、ウエムラとの親友関係もあって今では仲良くツーリングに出掛けたりしてる。
今回も木下氏からの「ちょっと行こうか」の一言で12台のハーレーを集めてレッツラ ツーリングでございます。
社長は強烈に忙しい人だから年2回ほどしか遠く走れないのでホントに楽しそうに走ってくれて、僕も社長の後ろについてニコニコツーリング 天気のいい湖西の高速を走りながらボーっと考えていました。
かたや総従業員数100人オーバー店舗数11店舗の大社長とその後ろには総従業員一人ぼっち席数6席のプチ社長 そのまた後ろはフリーター時給850円アパート暮らし   
バイク乗って走りだしたら全部一緒やなー どんなに金持ってても一度に2台は乗れへんし、みんな自分のバイク最高 俺って最高って思って楽しく走るだけやしなー
木下社長の後ろで背中を追いかけて走ってると「この人って大変そー」って
背負ってるものが大きいからなー 抱えてる責任の大きさでその人の地位やお金や信用ってランクアップするんやろうけど僕はいいですわーほんま 無理やから 尊敬するよ社長
僕が独立した当時お祝いにかけつけてくれた木下氏がぼそっと「まっちゃんいいなー 俺も隠居したらコレぐらいの店一人でやりたいわ」うそーん!またまた社交事例なんか でもうれしいですけど あーでもマジかもなー
僕のお世話になってた社長もセンスのいい料理人なのだけれど 店を増やせば増やすほどまな板が遠くなってた。結局社長業になって金の工面と従業員教育などなど それがやりたい事だったのかも考える余地もなくスーツで全店を掛けまわってたから
調理師の現場が恋しいんですね でも後もどり出来ないのもまた事実ですから

分っかりました 全国の後戻りできない現場が恋しい大オーナー様方!
 この最小商売キャパシティを誇る究極の接客調理人マーキーが 皆様の分まで
自分の好きな客に、自分の好きな料理で、自分の好きな会話と、自分の好きな酒を好きなだけ酌み交わし、好きなだけ酔っ払って、自分の好きな商売を楽しんでやりますよ
ベンツにも乗れないし、高級クラブにもいけないし、皆様の持っているものなどナニももっちやいませんが 皆様が羨む仕事を僕やりますから お互いがんばりましょう ホンマ

第11話
 日の出食堂の近況
まったくもってついていない。
先日服屋のせんちゃんご来店
彼はこの辺では結構うまいと評判のヒップホップのDJで服屋のオーナーである。
ただ問題は酔うと結構な暴れん棒で、B系特有の若い男の子をしたがえてクラブで揉め事をおこす事で煙たがられている。しかし実際は頭のいい子で以前から先輩的な感じで僕に接してくれている。そんなせんちゃんの将来を僕はある意味楽しみにしていて、店でみんなで飲んだり喋ったりでそれはおもしろいのだけれども 先日はまずかった。
朝方にせんちゃんが店に入ってきた時 僕はすでにかなり酔っ払っており いきなりにハイテンションで酔っ払ってるせんちゃんと熱い話しをしていた。
そこにマズイ状況が起こる。以前せんちゃんに殴られた若いバーテンの勤める上司のコージくんが入ってきた。 コージくんはクールな性格でケンカなどしない温厚なタイプだが自分の部下を殴られた事はやはり 怒っており 酔っている僕は和解をするように仲裁に入った。アホや シラフならそんな余計な事なんかしないのに、熱くなってしまった僕は状況もお互いのテンションもまったく分からないまま偉そうに割って入った。
マーキーさんが言うのならとオーケーを出すせんちゃん。冷静に「もういいです マーキーさんほっといてください」と冷たく接するコージくん グリグリの僕はナニを思ったかコージくんの顔めがけてパッチギ(頭つき)を食らわし「仲直りせーよ!」っとやってしまった。 その後は気付けば店の床で寝てしまっていて、うる覚えの朝の記憶をたどると僕はだんだん大変な事をしてしまった事を思い出した。
コージ君の働くバー「B」にオープンと同時に掛けつけるとオーナーのカズさんと目の上が紫に腫れあがったコージくんがいた。
床に這いつくばり土下座を繰り返し二人に謝った バーテンダーの顔を傷つける事は絶対やってはいけない事だし その顔を見て「なにがあった?」って絶対聞かれるだろう。
その時に日の出食堂の悪評がたてば、同業者メインの商売の僕は ホサレてしまうだろう。
なによりパッチギをいれた正当な理由がないのだから 土下座しかない心から謝罪した。
オーナーのカズさんが「酔っ払ったらだれでも失敗するから マーキーさん頭あげて」
コージくんも「マーキーさん一緒に飲みましょうよ」
ほんと申し訳無い。
3人で乾杯してゆるしてもらいました。
ほんともう最悪 反省しまくりでございます
店に帰り仕入れに行ことサイフを探すといつもの場所に見当たらない
「あー!やられた!うっそやろう あーくそっ」
店を開けっぱなしで床に泥酔していたときにやられたらしく サイフごと無い**
ついてない ホントついてないのです。おーもう いいわ
取ったやつにおごったるわ! そのかわり木屋町で全部つかえよ!高い焼肉食ってバーをハシゴせーよ! 取られたからってサイフの置き場所なんか変えへんからな!
金がなくても困らへんわ!困るのは支払い待たされる酒屋だけやしな





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Novel Editor by BS CGI Rental
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