写真は実は結構好きでアラーキーの「陽子」なんかは僕の恋のバイブル的存在であります 会場にハーレー、皮ジャン、カラスマスクで横付けした僕にウィンドウ越しにひややかな視線 おいおい区別すんなよ『おまえに分かんのか』みたいなスタイルやめてほしいわ ホンマに。 まことさんに軽く挨拶して会場内へ 素人さんながら結構みんな上手でびっくりしました。 皆さんいい趣味をお持ちですな。 たくさんの作品の中一つだけ足を止めて見入ってしまった作品がありました。額縁に手紙となんだか愛想の無い女性の写真が一枚。 それがなんだか気になって、手紙をじっと読んでしまいました。 手紙の内容は別れの手紙で文章は詳しく覚えていませんが 「あなたと過ごした日々は悪い夢のようだった。私はあの時もそして今もあなたを、いいように思っていないし、これからも最悪な恋愛の思い出として残るだろう」 という内容だった。 でもなぜかこの手紙を読んでいると彼女の別れてしまった後悔や寂しさ それと送り先の彼への愛情を感じてしまって少し切なくなりました もしこの作品にコンセプトがあってそれに沿って作られたものなら良く出来ているとおもうけれど、十五分ほどその前に立って考えた結果、結局二人共意地っ張りで大事なものを無くしてから気付いてやり直そうといえなかった恋のプライドグランプリの敗者なんだろ う。 そうでなかったら彼もこの作品を展示しなかったろうから。
第六話 マーキーの恋愛事情
恋は突然やってくる。というのはホントで 客のきよみちゃんが連れてきたさゆりに僕はひとめぼれしてしまった。 この浮かれ町のディープな朝めし屋にまさか、自分が好きになる女性が現れるとは思わなかったし、僕は完全にカウンターパンチをもらった 格好だった。 求愛する事数知れず、いろんな理由を持ち出され、その度断られたが、大きな理由は二つだった。 「僕が水商売である事」「さゆりは不倫中である事」 彼女はOLだが週三回祇園でバイトしている。そこで知り合った田舎の議員さんと現在不倫中だった。 フランス料理のお食事中にハンバーガーを食いに行こう!というお誘いはなかなか受け入れがたいのはよく分かるが、僕はアメリカンジャンクフードの庶民的なうまさを是非体験してほしかった 結局誰も幸せになれない。相手も自分も、そして相手の家族も、それが一般的な不倫への考え方だけれども一度でもはまった人間はそうじゃない。よその所有物は甘い甘い禁断の蜜の味がする。人に言えない恋愛は二人だけの世界。手におえない、かきむしるような恋愛がしたいなら不倫ほどお勧めできるものなどない。 まるで立てこもった犯人を説得する熱血刑事のように僕は口説き倒した。 そして 粘り強い説得の結果 日の出食堂プチオーナー マーキーの手中に収まることになった 正直ホンマ惚れていて二人で立てる店なんかを真剣に考えていたし夏には更新があるから同棲する物件を見に行こうと言ってた。何より二人で商売がしたかった。
ある日昔のバイト先の同僚と社員さんとの飲み会から帰ってきたさゆりが僕にこう漏らした。「あんたとの関係を誰に相談しても反対される。バツイチ 子持ち しかもかなり年上で仕事は水商売 誰にも賛成してもらえへん おねえちゃんもみんなそうやし」 おーっとカッチーン!『自分の彼氏バカにされてナニ最後まで飲んでんねん おまえがかばわへんかったら誰がかばうねん ニコニコ相談して飲んでんと怒って帰ってくるぐらいの事出来ひんのか!』 人に言えないい恋愛は言わないだけに反対されないが、うっかり訳アリ独身の僕は一般の人のお眼鏡にかなわないようで、腕がちぎれてもはなさんような思いを求めている僕は温度差の違いにキレてしまった。 結局長く続かなかった。今のところ別れのない恋愛をした事がないし、またいつものように時間が立てば忘れるんだろう。朝まで仕事のジャンクな商売だからなかなかそう うまくもいかないのもしょうがないって事でしょうか。 願わくばアラーキーと陽子さんのように死んでもずっと一緒にいられればいいのに 陽子さんは彼の才能を信じて出来る限りの協力をした。そしてすばらしい写真家にある意味育て上げたんだ、アラーキーは彼女が亡くなった今でも感謝し愛し続けているから
日の出食堂は表向きはマーキー一人で営業している事になっているが、実は裏方さんがいる。司法試験勉強中の公平って言います。付き合いは古く7年ほどずっと一緒に仕事をしているのです。公平は堅物で不器用おもしろい事も言えないしイマイチ女受けもしません。 仕入れから仕込み営業までやっている僕が寝ているあいだ公平は日の出食堂のクリーニングとメンテナンスをやってくれているのです。 タイプが正反対の二人がなぜこんなに長く一緒にいるのかって思うと 多分お互いの性格を羨ましく自分に足りないものがヤツにあるからで、きっと楽天家の僕よりも日の出食堂を愛し心配してくれているのです。 当時大学一回だった公平が以前勤めていた飲食店にバイトではいってきた時に、恋の話をまかないを食いながら話していたんですが、童貞である事が判明。早速それなら僕にまかせろと筆おろしの手助けを買って出た。すると公平はそこは大事にしたいらしく断ってきた。 気持ちはわかる だから僕は「どうしても捨てたくなったら いつでも言えよ!」とだけ彼に告げた。 時は流れ、あれから七年 僕は独立し大学を卒業した公平と今でも一緒だ。突然公平が僕に頼み込んだ。「連れてってください。」ヨシッ!いよいよ、たまらんか!インターネットでチェケしとけお前の好みのタイプで捨てさしたるからって 僕と公平とハーレーダビットソンのビック3でいざ!ソープへ レッツラゴー! 着けば一時間半待ち しかーし!今まで26年間待った公平にはそれぐらいハナクソでむしろドキドキ感をじっくり味合う おいしい時間に違いないと 「公平行って来い」って金を握らせ終わったら連絡するよう告げ走り去った。 迎えに行ったら公平はどんな顔しているんだろうか。妄想だったまさにその事は彼にとっ期待通りなのか まさに子供が生まれるのをベンチで待つ男親のような心境で僕はバイクで走りながらドキドキしていた。 そして電話が鳴り迎えにいくと笑顔の公平が待っていた 「どうやった?」「いやぁー 思ったより気持ち良くなかったです」コラー!思春期から 10年余りお前はどんだけ想像膨らましとんねん! リハーサルしてたら本番の雰囲気 だいたい見当つくやろ!アホ! なんやかんや大満足した彼は帰る道中後ろから延々とその結果をしゃべりつづけうれしそうでした。 「あれっ公平、行きより帰りの方が後ろが軽いんちゃうけ!」
第七話
木屋町の三条を北方向を上木屋町と呼ぶんですけど、その一角の居酒屋「Z」という店があります。クエルボ(テキーラ)という酒を日本一売る店でメシ屋にも関わらずテキーラの音楽が大音量で流れるたびに オリジナルダンスを一斉に踊りだし無条件にクエルボが目の前に置かれオーナーの象印さんの合図で一気するシステムなのです。 慌ててトイレに駆け込みリバースした客がトイレのドアを開けるとそこにはクエルボを持ったスタッフが「ハイどうぞ!」と一言 そんなお店は閉店しても何人もの死体が転がる地獄絵図。毎日繰り返されているのです。 象印さんはスキンヘッドで眉全剃り、ピアスだらけのミスター危険人物 酒の飲みすぎで通風持ちで目の中の白めがすでに黄色い体は多分悲鳴をあげているんだろう。木屋町に住み木屋町で遊び木屋町で商売をするリアル木屋町なのだ。 そんな恐ろしい酒の申し子像印さんが日の出食堂の噂を聞きつけ登場!連日三日間潰されてしまった。最初の頃の象印さんは、僕を値踏みするかのようにガンガンにあおり、潰れた事を確認して意気ようようと帰る感じだった。これではダメだ。酒を断ればいいのかもしれないが、象印さんの酒を断るという事は、象印さんの人間性を否定するに等しい行動で僕は何とかこの状況を打開すべくある行動に出た。連日登場する彼に「今日は店閉めるから象印さん飲みに行こう」と店の看板を消した。 二人で木屋町に出た僕らは、温泉セクキャバ ヘルス 祇園のクラブとハシゴしてズルズルでゲラゲラ笑いながら木屋町を肩を組んで歩き居酒屋「Z」にたどりついた。そのころにはただの同じ年の友達の関係になっていた。 それから象印さんは日の出に来るとギリギリまで酒を僕にあおるが潰す事はしなくなった 実際知り合ってこの一年強二人は誌面で書けない、かなりのそそうを繰り広げているし、ケンカもしたが以前と違ってそこにはリスペクトしている気持ちがあるから、お互い笑って許し合えている 友情を酒でしか伝えられない男は飲める量で計ってるんじゃなくて、お互い楽しむ酒を振舞っている。間違い無く知り合えてうれしかった男 木屋町オブ ザ イヤーはこの男で いい事も悪いことも成功も失敗も共に分かち合った友達なのです。 最近ステキな彼女が現れてからは、あまり相手にしてくれないが、この狭い町にはいつもお互い生息しているし、今日もクエルボのショットグラスは乾く暇なんてないやろうし
毎日毎日仕込みに追われて、営業が終わるとカウンターの丸イスを並べて寝る生活 最近はふかふかのベットより店の丸イスの方がよく寝れるようになっています。 独立したら優雅な生活を少しはできるかなって思ってたんですけど労働条件は前よりひどくなるばかり まぁ自分の店だからやってられるけど、雇われてたら絶対やめてるな。 ある日、いつものように仕込みに追われていると、玄関に人影が 良く見るとどこかで見た顔。軽く会釈をする女性。あーナミだ。こんちわって感じで歩み寄った。 ナミはもうかれこれ8年前ぐらい前に付き合っていた娘で当時19歳の大学生でした。 付き合ったといっても2ヶ月ぐらいで正直あまりその頃の事は記憶に残っていないし、 別れて以来会っていなかったから、友達の話では大学卒業後実家の佐賀に帰り、日本語学校の教師をしていると聞いていました。 久しぶりの再会でビックリしましたが平静を装って話し掛けました「ひさしぶり」「こんにちは元気だった?お店やったんだね。おめでとう」 立ち話もなんだからと近所のカフェでお茶をしながら お互いの近況報告をした。別れた人に連絡しないタイプの僕はこういう設定はあまりない。 でも8年もの歳月が二人を友達のような雰囲気にさせていた。「明日ドイツに行くんだ日本最後の日なの」 いきなりの話に僕は慌てて「ドイツ語はなせるん?」っていいような的外れのような中途半端な質問をしてしまった。 彼女はあしたドイツ人の彼の所に旅立つらしいのである 結婚は決まっていないらしいが、彼がドイツに来てほしいという希望をナミが受け入れた格好らしい 彼が日本に留学中知り合い ドイツに帰国した彼の待つドイツへナミは明日の昼過ぎに旅立つらしい。「マーキーさん今日仕事でしょう?休む事できないよね」 「あーじゃぁ休むわ、日本最後やもんな 好きなとこ連れていってあげるわ バイクに乗れるように準備しといて」 そして時間を約束してわかれた。ハーレーにまたがりホテルに迎えに行くと彼女はロビーで待っていた。 ベトナム料理屋のコンタさんのところに行ったが休みだったので 韓国料理の店でメシを食って少し飲むと会話も弾み昔話がはじまったが、彼女の話すエピソードの八割は記憶になかった。ばれないように巧みな相槌を打っていたはずだったが 彼女は少し気がついたようで、「ずっと前の事だから、覚えてないよね」と笑ってた・
琵琶湖を見たいというので、そのまま走った。湖岸道路は車も少なく気持ちよくて ナミも気持ちがいいと喜んでた。信号が赤になり交差点で止まった時 後座席から大きな声で彼女は僕に声をかけた。「実は今日佐賀からマーキーさんとセックスしにきたの」 えーっほんと ありがとうっておいっ!なんですかそれは 「はぁどう言う事?」って聞きなおすと「でもね神様って見てるね きっと さっき女の子のアレ来たんだー」 そんなロマンチックいらんてぇ 神様は代打の神様八木がいれば十分やねんから アンタ 「あーそうか じゃーいつかまた日本に帰ってきたら続きしよーかー」って言った。 ホテルまで送ると「ありがとう」って事でさよならしました。 ガラにもないがそんな気でもない 勝ったか負けたがよくわかりませんがそれでよかったんだろうとおもいました。今ごろ彼女はドイツでがんばっているのか。それもどうでもいいけど、がんばっててもうれしい感じなんです。分かりますかこの心境**
第八話 ラーメン屋ジョニー 半年前に木屋町通りの路面に出来た太陽ラーメンはオープン当初からロックな店だと評判だった。オーナーのジョニーに面識はなかったが噂先行で店の雰囲気と彼のキャラクターは行かなくてもだいたい分かっていて様子を見るともなしに聞き耳だけ立てていました しばらくしてジョニーが日の出食堂にご来店 やっぱり噂とおりのロックな男でした 「ジョニー太陽のおすすめってなに?」って質問に「あーピンドンおすすめやねん マーキーさん空けにきてや!」「誰か空けたヤツいるん?」「まだおらん みんなガッツないわ」 ラーメンやでピンドン空けるやつおらへん そんなん当たり前やけど ノリでメニューにピンドンを載せてオススメと聞かれたらピンドンをすすめるこのむちゃくちゃなな男に僕の中にいる水商売のサラブレッドがゲートから勢い良くスタートした。 「今から空けにいくわ みんな一緒にピンドン飲みにいこう!」さっさと店じまいする僕にジョニーはあわてて「おぉ今から店あけるわ 先いっとくし」かくして太陽らーめんピンドン第一号のビックなネタは僕のモノに 代金四万八千円はレジ金を使い果たしギリギリ払ったが今月の酒の支払いは来月回しになった。 ネタでアホでするやつにかぶせてアホするアホ同士 これぞ木屋町グルービーですわ 次の夜店の前を見ると本格派ムエタイの格好をしたジョニーがムエタイダンスを一生懸命踊っている「マーキーさん昨日のピンドンの感謝の踊りやねん かっちり踊るわ」 大爆笑 ほんま愛しいアホまた見つけた。やめられんわ ホンマ その朝 満席の太陽ラーメンに全裸出勤 自然に席が開く 「ジョニーらーめんちょうだい」何事もないかのようにナチュラルな僕に客はどんびき ジョニーだけ大爆笑 最後にとなりの客にそっと話し掛けた 「すんません サイフいれるポケット無くてお金持って来れなかったんです おごってもらえますか?」「あぁほんまですね サイフいれるとこないわ おごっときます」大爆笑 こんな感じで木屋町は金はないけど、楽しくやっていいるのです。 京都に起こしの際は是非木屋町へ 気をつけて
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