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日の出食堂とハーレーダビットソン 作者:マーキー

第2回   2
ハーレーダビットソンの専門誌の編集長ジャックさんと知り合ったのは、まったくの偶然で、たまたま京都に取材に来られていたジャックさんが朝方日の出食堂の前を通りかかった時、絶賛営業中のその店の異常な盛りあがりに目を止めていただいたらしい。
その店の中では男ばかりが全裸で酒を酌み交わし大声をはりあげて最高のグルーブ感の中 ココ京都の浮かれ街に働くやつらが、お疲れビールなり焼酎で今日の出来事を楽しげに話しながらお互いをあおりながらグリグリに酔っ払う。ジャックさんから取材依頼をいただいたのは、その日からすぐの事だった。
「他の店で日の出食堂の話しをしたらマーキーさんがハーレー乗りって聞いて是非取材したいと思って」
こんなお店でよかったらって事で、早速取材って事になったんですけど、その時ジャックさんが気になる一言を僕に言った。「ホームページ見たんですけど掲示板でのやりとりがおもしろいなーって マーキーさん文才あるから、なんか書いてみたらどうですか?」
小説の一冊も読んだ事のないまったくもって縁遠い未知の世界で考えた事もなかったけれど、きっとおべんちゃらで言ったっぽいその言葉でなにげなしにワードを開いてしまっていた。
それから仕事の合間に少しずつ書き溜めていくうちにいつの間にか初めてオモチャを手にしたゴリラにように夢中で書きはじめた。ネタはつきない。だってここでは、毎日毎日いろんな事がリアルに起こり続けているし、時間さえあれば僕は書く事が楽しくてしょうがないから。


日の出食堂は四坪六席の小さい店で、ココではハネめし屋とよばれてる。ハネめしの意味は、仕事が終わって食べるご飯の意味で、営業時間は夜8時から朝の8じまで お客の9割が京都の飲食街木屋町の水商売に関わる人間達です。
バーテンダー 料理屋 キャバ嬢 ピンサロ嬢 デリヘル嬢 朝まで飲まずにはいられないそのお店達のお客さんなどなど、狭い空間からはみだして道路まで占拠しながらのジャンクな雰囲気の中みんなをお腹いっぱいにするべくこの店は今日も営業しているはずです。
そしてその店を一人でキリモリするのはわたくしマーキーでございます。
ハーレーダビットソン エレクトラグライドという相棒がおりますがさすがに仕事までは手伝って頂けないようで もっぱら仲間と憂さ晴らしに近畿圏にミーティングやツーリングで走り回っている。。
僕の店はかなり特殊な業態で満腹のメシとズルズルの酔っ払いめがけて、トドメを刺すアルコールを売りにする木屋町の最終電車的な役割を担っています。
そこで毎朝巻き起こるドラマチックな出来事や人間模様をこれからご紹介していきたいと思っているのです

第一話
   ご紹介がてら 木屋町水商売鉄馬乗りが出来るまで

僕はその頃雇われていて 地元資本では大きいほうの飲食店で全店5店舗の統括店長をやっていた。。ある日町の知り合いから いわく付きの店が潰れた情報が舞い込んできた。。その店はマジックマシュルーム屋「合法ドラック」の店でクラブ通いの客や町の人間の間では有名で儲かってはいたが当時合法から違法に切り替わって店じまいにおいこまれたジャンク物件。
四坪の小さい間取り 向かいにはB系の服屋があり目つきの悪いBボーイがたむろして 夜になれば外人ご用達のオオバコのクラブから多国籍なメンツとそれに群がる残念な方のナデシコジャパンがグリグリで酔っ払ってる切ない通り。
ロシアンパブ フィリピンパブ国際色豊かなこの通りでこの物件で 僕は朝メシ屋をやろうと決心しました。
さまざまなトリックを使って三百万を都合した僕は見事日の出食堂をオープンさせましたが、3日後いきなり苦境に立たされることになるんです。
地下のクラブ「I」で外国人同士のケンカがありその一人がナイフで相手を刺した。クラブセキュリティが数人が取り押さえたものの客は騒然警察も駆けつけ道路封鎖で営業どころじゃない
この事件はまだよかった。
一週間もたたないうちに決定的にエッジの効いたダメージが僕を襲う。。
その日も店はオープン景気にわいていたんですけど 女の叫び声で第二章の幕は開いきました。
慌てて店を出ると横のスナックビルの前で 鳶風の若い男二人にスーツ姿の叔父さんがひどく殴られていた。かなりやばい状況
客と二人で止めに入りましたが、いっこうにやめようとしない かなり前から殴られているらしく 相手は声もでない 危険な状態である事はすぐに分かった「コレ以上やったら死ぬで やめろ」警察が駆けつけた時叔父さんはもうまばたきすら出来ていない状態。
道路も封鎖され落ち込みながら家に帰り
朝起きるとニュースで叔父さんが死んだ事を知った。。
店の前で撲殺された叔父さんは近所のインドネシア料理のオーナーさんだったらしく日の出食堂の横の電柱に山盛りの花と泣きながら手を合わす人たち 止められなっかった罪悪感と酒と人と町の怖さを知った僕はいきなり営業する力を失って
五日ほど休んだあと僕は開業資金に取っておいた七十万を持って知り合いの女彫り師の紫紅さんの仕事場をたずねて事情を説明したら背中一面に鯉を入れようって事になって。
、黄河の竜(龍)門という激流があり、この滝を登ろうと多くの魚が試みたが、鯉だけが河登りを達成し、龍に化することが出来た 鯉は出世魚やから 今登らんかったら無理やから
左胸に日の食堂の看板も彫ってもらった。もう逃げられへんし 止められへんしがんばろうって事で 彫り終わった頃気持ちは切り変わってた。
そして宝物を手に入れようって、ぶっ飛びローンよろしくの今の相棒エレクトラグライドにまたがる事にあいなりました。
それから2年 僕は相棒のような本物に近づけているのだろうか
そんな事を考えながら今日も仕込みの時間になってしまう。営業時間長いからな
さぁ 仕事しよーっと。
カラダにいいものなど一つもありませんが お腹いっぱいにはなっていただけると思いますので よろしかったらどうぞ きをつけてね



























町外れにある派手なネオンとセクシーでグラマーな女性のイラスト看板が目立つドライブイン 店の前にはカスタムハーレー数台と革ジャンを着た男達が瓶ビール片手に楽しそうに騒いでる。店の中に入ると大音量の音楽と舞台を見上げればポールに巻きつき踊る金髪のダンサー 薄暗いピンクの照明にタバコのけむり。
なんてアメリカンな夜遊びをハーレー乗りなら憧れるはず。
実はココ京都でも疑似体験出来なくもない 少し和風ではありますが以前に、はまってた遊びは結構おもしろかった。
休み前日に日の出集合バイクにまたがり いざスケベ男の殿堂 デラックス東寺へ 途中でアルコールとつまみを買ったら 開店前から並びかぶりつきを死守。しかーしゆっくりもしていられない。ストリップを楽しむには不可欠な準備 ロビーに戻り本日出演の子さんの顔と名前を必死で覚える。
さー開演と同時に前を通る踊り子さんの名前を声が枯れるまで絶叫し応援 手の皮がすりむけるまで手拍子拍手の嵐 ココまでやると参加型企画もので舞台に上がれる可能性は高くなるから楽しさも頂点へ「はーいじゃー誰にしようかなー」なんて言われたら答えの分かった小学一年のようにスタンディングで手をあげて自己主張する
来ているお客はおじいさんが多いしノリノリ元気君の僕らはだんぜん好印象なのです
しかしもって異常な世界だ 年金で来てそうなおじいちゃん達が見よう見真似でパラパラを必死で踊り{常連はきっちり振付け覚えてるし}きっとココが日本一最高齢のパラパラダンスチームなんやろなー そして舞台では全裸のおねえちゃんにピコピコハンマーで殴られとるし しかもうれしそうやし んーザッツディープスポット ある意味アメリカンやんかいさ。
んーちょっとエッチな話にしましょうか














第2話
   ストリッパー

ストリップ小屋も常連顔で遊べるようになった頃、日の出食堂にうれしいお客さんが来店
踊り子さん達が五人ご飯食べに来てくれました。これも営業のたまもの 明日からお休みらしくクラブで遊んだあと僕を思い出してくれたらしい。
うれしいのは当たり前なんだが なんだか複雑 普段男性比率八割を誇る日の出が今日は女性客でいっぱいやなんてミラクルやし、それに僕は彼女たちの裸をすでに確認済みである。服を着ててもなにやら頭の中では完全に全裸食堂になってしまっているのです
「いつもありがとう 盛上げてくれて反応薄い日とか踊ってて恥ずかしいねん」って
日頃の労をねぎらって頂いたりしてなんか感動
一通り食事も終わり楽しいお喋りもして、帰ってしまいました
ちょっとすると一人だけ帰ってきたのは踊り子のマナミちゃん「マスター携帯わすれてなかった?」って おっとコレは
「日ので食堂の法則その一」僕を獲物としてとらまえる女は必ず忘れ物をわざとするか忘れたふりをして仲間を振り切って帰ってくる。そして再び席に座り一杯飲むと誘われる
まさに法則通りの展開 彼女がストリッパーでなければ仕事なんでって断る。素人なら普通のB級戦士なんだけれど、興味深々で店を閉めて飲みにでてしまった。
そしていろんな話をして仲良くなった。彼女は大阪の枚方の実家に住んでて通ってるらしく家には子供が一人いるらしい。劇場は二十日仕事であと十日連休で他の踊り子さんは休みの間海外旅行とか行くんだそうだ。彼女に男の事は聞かなかったけど多分訳アリって事もなさそうだ。ストリッパーといえば売り飛ばされたとか訳アリのイメージを想像する人もいるかもしれないが。最近はヘルス嬢もピンサロ嬢もそんな女の子は少ない。ただ単純にそれを職業としてとらまえ仕事をするパンチのきいたレディースなだけなんだ。
でもストリッパーって子育てにはいい職業なのかもしれないな だって十日間ずっと子供といれるなら子供もきっと喜ぶに違いないから。
マナミちゃんのお腹の下にはカエルの刺青が彫ってある。舞台ではなんでカエルなんやろうって思ってたんです。柔らかい場所に彫るとたまらん痛いのにもっとなんかなかったんかなって でも話して分かった気がします 龍とか蛇とか彫ってたらきっと子供がこわがるからな きっと可愛らしいのがよかったんかな
しばらくしてデラックス東寺の素人大会が終了した事を知りました
みんなどこにいったんやろうなって友達と残念がりました。
今度は子供と寄ってくださいよ カラダにいいものなどありませんがお腹いぱいにはなってもらえると思うから これからも気をつけてがんばってくださいな




まだ酔ってる。仕事を終わって帰ってきましたが後半の事は記憶にないし気がつけば向かいのお好み屋の前で寝ていました
そういえば、あの寝心地のいいお好み屋がここ3日ぐらい開いてない。もしかしたら飛んだかもしれない。いったい木屋町で年間何軒が閉まるんだろう 確かに知り合いだけでも去年だいぶ飛んでしまった。そして空いたテナントに夢と希望に満ち溢れた新しいお店が出来てまた夜の明かりが一つ増えるんだろう。
ココで自分の城を築いた人達は、基本的に貧乏であるがゆえに独特のグルーブ感があり、街で金を回す。 知り合いの店で出来るだけいい格好で金を使い遊ぶ。その中に入れない店はいつしかなくなるのが必然である。
ホントの金持ちが気付いたら思わず抱きしめたくなるような 僕ら流の「いい格好」を暴露すると通常10枚くくりで束ねる千円札を僕らは7枚でくくるそして出来るだけ束を多くして会計時にサイフを大きく開けると結構儲かってる店のオーナーになれるのである
人の感想は、口伝えに小さい街ではいずれ大きい噂になるから 僕らに小細工は、楽しむために持つべきテクニックなんです。


第3話
    残念な女性客ランキング
ある朝8時すぎ、そろそろお店を閉めようかと準備をはじめた矢先にその女は現れました。
「マーキーさん、チャンポン一つ」
その顔を見て唖然 顔中血だらけで服にもべったり鮮血が飛び散ってて エーッ!ビックリビックリ なんなんあんた。
この娘の名前は通称ボリ 木屋町の若手バーテンダーを食い物にする町でも有名な女
ベテランバーテンには顔が割れており 若さ爆発の我慢できない新人バーテンばかりを狙ういわばミス引っ掛け問題的な残念な方のレディース。
話を聞くと今日も某バーにて新人バーテンを連れ出しに成功。早速お持ち帰りするべく家路に急いだが、酔いが覚めてきた彼にやっぱり帰ると言われ すがり付いたところを鼻に膝蹴りを一撃くらったらしい
おかげで血まみれ。一人ぼっちになったとたんに腹が減り当店にご来店の運びとなったらしいのである。作戦失敗。吊り上げる瞬間糸がきれてしまったようなんです。
しかしこの女はこんなことではくじけない。ザッツ木屋町女 
なぜなら浮かれ町は絶賛営業中だし 入ったばかりのバーテンさんは女にもてたくてウズウズしてしている。彼女にとってココは豊か漁場であることになんら変わりはないのだから。
 そしてボリちゃんは一言「マーキさん開いててよかったわーどこもこの格好じゃいれてくれへんねんからー」
はいはいボリちゃん大丈夫。あなたの思惑が成功しようとしまいとお腹が空けばいつでもどうぞ。カラダにいいものなど一つもありませんが お腹いっぱいにはしてあげられると思いますのでこれからもよろしくね。
あまり根っこの無い、かわいい話でなによりですが、彼女と対決するこちらの方は少し違っています。
重たい出来事が起こると僕はいつも自分を水商売のサラブレッドだと言い聞かせるようにしていて、父は元キックボクサーで日本に来るタイのキックボクサーの奥さんを使ってスナックをやっていた 今は漁師なんですけど そして産みの母は当時に新地のランクインホステスであったという噂。会った事ないもんですから。そして育ての母親は食堂をやってます。その全ての血をブレンドしたのが僕であり日の出食堂でだから僕は水商売のサラブレッドだと 何があっても水商売の範囲内ならがんばれるハズだと思っているんです。

木屋町に寄生するもう一人の女
いつもボーダーの長袖を着ている一見おしゃれそうなショートカットの女がミチ。
なぜ彼女が長袖のボーダーを着ているかというとリストカット後が両腕に多数あるからで
彼女の家は金持ちではあるが不和で数知れない自殺騒動で親も彼女の扱いに困っている様子でありったけの金を持たせて木屋町に放流している。彼女は仕事もせずただ一日中街中をうろついている。そして飲み屋が開く時間は店に入りありったけの金を使う 街にとっては大変ありがたい客なんで、店側もチヤホヤしながら金をむしりとりそのかわり彼女を癒しそしてたのしますんです。それはそれはまっとうな商売。
そんな彼女が日の出に来るのは朝方で決まってズルズル。注文してから出来あがるまでを待てずに寝てしまう事が多くなっていました。。
そこで僕は甘やかす事をやめた。寝ると同時に履いている靴で頭を思いっきりはたきそして、はたいただけ伝票に靴八百円と書いた。決まって会計は高額になり殴られるはぼられるはで彼女はうちに来なくなったんですけど、僕的にはそれはそれはまっとうな商売である意味マニュアル通りでございます。
ある日の事 朝閉店して帰る時に自動販売機に挟まって寝ているミチを見つけました。僕は声をかけなかった。可愛そうな訳がないやんけ一生懸命自営やってこの木屋町貧乏長屋で小銭を拾って支払いする僕らのほうがよっぽど報われてないやろ。甘えるんやったら金で優しい男前バーでどうぞってことなのです。
そしてたまの休みにハーレーにまたがる。走る。忘れる全部
リセットしないとキャパオーバーになるぐらい日々いろいろな事件が起こる
木屋町最終列車にご乗車の方は乗る前と乗ってからも注意が必要です。気をつけてね

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Novel Editor by BS CGI Rental
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