走った。
車が半端なくたくさん通る大通りを走った。
タクシーでも捕まえればよかったんだけど、そんなの頭が回らなかった。
ただ走らなきゃいけないって思って。
ただ早く行かなきゃいけないって思って。
頭の中は真っ白だ。
ただひとつわかるのは
君が顔をくしゃくしゃにして泣いているってこと。
「永沢っ!」
病院に入ると永沢がロビーで僕を待っていた。
「みんなもう来てる・・・。」
「・・・咲は?」
「慎也のそば。」
病室に入ると慎也がベッドで眠っていた。
管みたいなのをたくさんつけられている。
もう無理やり生かされてるって感じだ。
その慎也の腕の先には、僕が何よりも愛しいと思う女の子がいた。
「・・・さき・・・。」
僕が声をかけると、ゆっくりと俯いた顔を上げた。
「・・・『どっか行っちゃえ。』・・・。」
「・・・?」
「あたしがケンカのときに慎くんに言った言葉・・・。」
「・・・。」
「ははっ、あたしって予言する力持ってんのかな?」
「・・・っ。」
「笑えちゃうよねー。まっさか慎くんが事故るなんてさー。」
「さき。」
「『どっか行っちゃえ』かぁー、本当にどっか行っちゃうのかなー。」
「さき、もういいから。」
「なんで慎くんなの?!ねぇ?あたしがどっか行っちゃえなんて言ったから?あたしのせい?あたしが言ったから事故ったの?」
「・・・。」
僕は何も言えなかった。
咲があまりにも悲しく笑ったから。
「咲、大丈夫?」
病室を出た僕を永沢たちが囲んだ。
「・・・。」
「真中もさ、混乱してるから仕方がないよ。な?」
「そうだよ!!慎也だって良くなるだろうしさ。」
僕たちは咲を残してロビーでそれぞれ時を過ごした。
咲のそばにいるの誰もできなかった。
あまりに辛そうだったから。
自分の言った言葉の重みを感じている。
もう何時間経っただろう?
いや、何分かもしれない。
何日も経ったのか?
わからない。
ついさっき慎也の両親が病院に到着した。
咲と病室で慎也を見守っている。
「あの・・・。」
看護婦がロビーに来た。
僕たちの沈黙を破るような透る声で言った。
僕の愛しいお姫様を傷つけたであろう出来事を。
「相沢・・・相沢慎也くん・・・先ほど、午後10時2分亡くなられました・・・。」
僕は病室まで走った。
がたっ
目の前には慎也の母親に肩を抱かれた咲が狂ったように泣いていた。
その前には、もう息をしていない王子さまが安らかに眠っていた。
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