「咲はさ、卒業したら慎也とどうするの?」
学校で帰る仕度をしていると、永沢と葉山が咲に問いかけているところを目にした。
「は?なにいきなり・・・。」
「いやー、もうすぐクリスマスがきて、年が明けて、私立受験があって、本命の県立入試、んで最後に卒業式でしょ。意外と短いわよー、卒業までって。」
「そうそう。あんたたち高校別になるでしょ?それで続けるつもりなのかなぁって思ってねぇ。」
思わず聞き入ってしまった。
「どうするって・・・終わるときは終わるし、続くときは続くんじゃないの?」
意外と冷静な答えが返ってきたことに永沢たちは驚いている。
僕もびっくりだ。
いつもの咲なら「えー?うーん・・・続くよー。結婚するんだぁ♪」とか言って笑顔で僕の胸を締め付ける。
「・・・どうしちゃったの?」
「・・・いつものあんたなら『うーんとね、結婚するんだぁ!』とかってかわいく言ってのけるじゃない。」
そうだ、そうだ。
「だって・・・あたしは県立で女子しかいないところだけど、慎くんはスポーツ推薦で私立の共学行くんだよ?あたしが知らないところに行くんだもんわかんないよ。」
「がんばって続けるんだとか思わないわけ?」
「・・・そりゃ続いたらいいけど、きっとあたしが不安になっちゃう・・・。」
「あぁー・・・まぁそれもそうかもねぇ。」
そういうことか。
咲は県立のM高の推薦入試を2月に受けることになっている。
一応共学だが、今現在は女子しかいない学校だ。
そして咲の大好きな慎也は、野球で有名な私立のT学園からスポーツ推薦が来ていて、1月には試験があるらしい。 たいてい県立が落ちたバカが行くって感じのところだ。だからバカ女も多い。 ちなみにバカ女というのは、化粧ばかり濃くて中身はすっからかんな俺のもっとも嫌いなタイプだ。
咲はすでに不安なんだ。
大好きな慎也に別の世界ができる。
春からは現実の不安が襲い掛かる。それが怖くて、今は未来の不安に対して不安を抱いているんだ。
本当に最低なやつだ。咲をあんなに不安にさせて。 そしてうらやましいやつだ・・・・慎也め。。
16時、僕はいつものようにファミレスで咲や俊太郎たちと勉強道具を広げていた。
「もうすぐクリスマスだねぇー!!!!」
どこでそうなったかわからないが梨花がよく通る甲高い声で言った。
「あー、受験生にクリスマスなんてないんだぞー。」
「わかってるよー。でもさぁ、ちょっとくらいなんかぱーっとしたいじゃん?」
「あ、イブの日にさ、駅前でイベントあるよね。毎年やるやつ!!花火があがるじゃん!あれみんなで行こうよー!」
「あー、いいなぁ!夜くらいだったらちょっとくらい息抜きしてもバチあたんねーよな。」
めずらしい・・・俊太郎が梨花のバカな思いつきに同意している。
「じゃあみんなで行こうー!亜美もいいよね?」
「うん、楽しそう。」
「よし!」
「あ、ごめん・・・。」
咲の小さな声が響いた。
みんないっせいに咲のほうを向いた。
「まさか・・・・『慎くんとデート♪』なんて言わないよな・・・?」
「竹林君、鋭いねー(笑)もちろん(笑)」
「おいー!一人欠けんのかよー!」
「咲ー・・・・あんたは・・・この中であんただけよ、彼氏もち。」
「ごめんー・・・だってずっと約束してたんだもん。。」
よく考えれば、慎也のことだ。
クリスマスなんて恋人たちのためにあるようなイベントで咲を放さないわけがないんだ。
「ごめんね、みんな・・・。」
いつもだったら二人のデートを邪魔してでもみんな咲をこっちで遊ばせる。
だけど今回はみんな不満そうな顔だが了承した。
クリスマスだ。
恋人同士なら一緒に過ごすのは当たり前だろう。
「咲たちは何するの?」
「うちらも駅前のイベント行くよー!去年も言ったから今年もってなったのー。」
「じゃあ会えるかもなぁ!」
「そのときは邪魔してやろうぜ(笑)」
正直クリスマスなんて行事はどうでもよかった。
僕は自分の誕生日を忘れるようなやつだ。そういう行事とか本当にどうでもいい。
だけど、胸騒ぎがした。
咲が来ないなら「勉強するから」と言ってイベントに行かなきゃいいんだけど、なぜかそのときは行くことにした。
12月24日、何かが起こるような気がした。
咲が高校生になったらのことに対して不安に思っていて、今はその未来に対して不安を持っている。
それと同じように、イブに起こる未来の不安に対して僕も今、不安を抱いた。
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