12月
私立受験を控えた同級生たちが忙しく参考書を開いている時期だ。
僕も部屋の机に向かってノートと参考書を開いているところだった。
もっとも僕は県立の進学校から推薦をもらうことになっているから特に焦る必要はないんだけど。
2月に行われる推薦入試に落ちたときのために『一応』一般入試用の勉強中だ。
うーんっと体を伸ばして伸びをする。
顔が猫っぽいから本物の猫みたいになるかな・・・。
そんなバカなことを考えながら、ふと目の前の写真立てに目をやった。
僕の部屋によく合った藍色のフォトフレーム。
ガラスの向こうには花のような愛らしい顔があった。
無愛想な僕に抱きついているのは、この世で一番愛しいと思うお姫様だ。
修学旅行先で撮った写真だ。
ぼーっとその写真を見つめていると、もう3時40分を過ぎていることに気づく。
僕は急いでノートと参考書を、高校生がよく通学用に使うようなバッグに入れる。 ナイロンバッグっていうのかな?
厚めのジャケットを羽織って、携帯と財布をズボンのポケットにしまう。
そして慌てて家を飛び出した。
着いた先は街中にあるファミレス。
目的の席を探していると聞きなれた声がした。
「悠ーっ!」
声のほうを向くと、いつものメンバーがいつもの並びで座っている。
「遅いよ、松沢ー。」
そこには親友の俊太郎、お祭り男竹林、美人のしっかり者永沢、無駄に洋服に気合が入っている葉山、そして僕が仕えるお姫様、咲がいた。
この時期になると、うちの学校は授業は午前中だけで1時には家に帰宅して受験勉強をすることになっている。 もちろんそれは3年生だけだけど。
それで僕たちは夕方4時になるとこのファミレスに集まって【勉強会】と称し、話をしたり本当に勉強を教えあったりして、受験勉強の合間の休憩を1、2時間取っている。
「あのね、悠・・・この問題が解けないの・・・。」
咲がさっそく僕に問題を聞いてきた。
申し訳なさそうにお願いする彼女の顔には勝てない。
「どこ?」
今日は長くてふわふわな髪が頭のほうだけペチャンコになっている。
きっと寒いからニット帽でもかぶってきたのだろう。
僕、松沢悠は、目の前にいる真中咲に片思い中です。
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