修学旅行ももう最終日。
今日は清水寺、奈良の東大寺、薬師寺に行ってそれから新幹線で帰る予定だ。
「奈緒、気持ち悪い。」
清水寺での自由行動、私は葵と二人で行くことにした。
その葵がいきなりそんなことを言い始めた。
「はっ!?え、大丈夫?待って、どこかで休もうか?あー、人多いー!」
「・・・う・・・吐きたい・・・。」
「ちょ、ちょっと葵ー・・・待って、トイレ行こう?そんで先バスもどって休もう?」
「・・・う、うん・・・・。」
こうして私たちは自分のクラスのバスへ戻ることにした。
清水寺の駐車場へのまっすぐな道、たくさんの友達に会った。
みんなまだ買い物をしたりして楽しんでいるのだ。
「あぁー!奈緒!葵!!!どうしたの〜?」
クラスでいつもみんなでバカをやる友達のエミとリナとキョウコだ。
「なんか気分悪いんだって・・・まったく昨日の夜、酒飲みすぎたんだって。」
「あぁー、確かに!」
「ってかあんたたちも思いっきり飲んでたよね(笑)」
昨夜は先生に内緒で学年の仲良い男女でドンちゃん騒ぎをしていたのだ。
私はお酒はどうしても飲めず、一人ジュースで騒いでいたのでなんともなかった。
おそらく葵は二日酔いだ。
「まったく・・・葵は飲みすぎなんだって・・・。」
「ごめんー・・・。」
「あ、奈緒と葵は春喜と朔にお土産買ったの?」
「え、あぁ・・・うーん・・・。」
なんとも答えられなかった。
勝っても受け取ってもらえない。
昨日までは私は悪くないと思って強気な態度を取っていたけど、どんどん機嫌が悪くなり私のほうを見ようともしなくなった春喜に、今すぐにでも謝りたい気持ちでいっぱいになった。
今まで、ケンカしても自分から謝ったことはなかった。自分が悪いと思ってもこの性格で絶対に謝ろうとしなかった。
今回が初めてだ。
こんなにも弱気になったのは。
「まだ買ってないの〜?」
「あ、修学旅行名物の縁結びのお守りに二人のイニシャル入れるおそろいのやつ買ってくれば??」
「あぁー(笑)どこのカップルも必ずやるというあれですかね(笑)」
うちの学校だけなのかどうなのかはわからないが、あるお店に縁結びのお守りがペアで売っていてそれの裏に自分と相手のイニシャルの刺繍を入れてくれるサービスがある。 そのお守りを相手と自分で持つのだ。
私は今までバカにしていた。
基本的に占いとかお守りとかは信じない性質だ。
だけど誰と会ってもそのお守りを大事そうに抱え「買っちゃったぁ」と幸せそうに笑うのだ。
こんなふうに幸せな気分になれるのなら、買おうかと考えてしまう。
「あぁー・・・あたし、買うー。」
「葵、あんた吐きたいのにすごい根性だね・・・。」
私は葵を連れてお守りのあるお店に行った。
「あー・・・これだぁー!」
葵はうれしそうにお守りを手に取り、レジに「SとAでお願いしますっ!」と言いに行った。
私はお守りを手にとってみた。
一つは淡いピンクで彼女用なのだろう。私が大好きな色だ。
もう一つは薄いブルーできれいな空の色をしている。
でもいまさら買うのも恥ずかしいような気がした。
そして渡せないような気がしたんだ。
それでも、私は買うことにした。
明日は学校が休みになっている。
前から遊ぶ約束をしていた。
そのときにお土産を交換しようって約束していたんだ。
「これ・・・ください。」
「はーい、イニシャルは何がいい??」
「HとNで・・・。」
かなり恥ずかしい・・・。
でも・・・うれしかった。
私たちはバスに戻った。
いまさら清水寺に戻っても仕方がないし、葵を一人ぼっちにするわけにはいかないので私もバスに残ることにした。
「ごめんねぇ・・・奈緒・・・。」
「大丈夫。寝てな。もうすぐみんな帰ってくるからね。」
がたっ。
「だーかーらー、なんで俺がそれをもらわなきゃいけないんだって。」
「だってー・・・藤野もらってくれないもん・・・・。」
「イニシャルが違う!やだよ、他の男と縁結ぶために買ったお守りなんてもらうの!」
サチと春喜だ。
「え、じゃあもう一つ青いお守り買ってくるから受け取ってくれる??」
「え・・・いやさ・・・」
「え、春喜?」
葵が目を覚ました。
私は声を出せずにいた。
二人がバスを間違えて私たちのクラスのバスに乗ってしまったのだ。
でも二人で来たことに、二人の会話のやりとりに声を出せず、ただただ涙ばかりがあふれてきた。
「え、あ・・・葵・・・と、奈緒・・・?」
サチがいけないことをしていたかのように焦りだした。
「あ、あの・・・奈緒?ごめんね?今の聞いてたよね・・・違うの、あの。。。」
春喜は目をそむけている。
「春喜・・・あんた、いったい何やってんの?」
葵は調子が悪いのなんてそっちのけで春喜に食って掛かった。
「おい、桜井いるー?」
司までバスにやってきた。
「お前ら・・・またやってんのかよ・・・。」
司はこの状況をみてまたすべて悟った。
「出てけ。」
司はいつもの優しい声でなく低い声で春喜とサチをにらみながら言った。
サチは泣きそうになりながらバスをでていこうとした。
しかし春喜は
「無理。お前に指図される覚えはねーよ。」
司に負けないくらいのにらみで司を見つめている。
「奈緒、そんなに司が好き?」
「え・・・?」
春喜は私を見つめて言った。
「好きなの?」
「そんなわけないじゃん・・・。」
「じゃあなんで?」
「・・・?」
「なんで奈緒の隣にいるのはいつも司なの?」
「・・・それは・・・仕事があるから・・・春喜だって・・・サチといつも一緒でしょ?私のことちゃんと好き?好きじゃないでしょ?」
「またそうやって疑うの?」
「え?」
「つきあってから一度も俺の言うこと信じなかったよな。俺は奈緒に『好き?』って聞かれるたびにちゃんと答えてた。でもお前は、いつも信じなかった。その場では納得したようなこと言うけど、また次の日には同じこと聞いてくる。最近は余計増えたし・・・。」
「それはっ・・・ハルくんが・・・サチのところ行っちゃいそうになるからぁ・・・。」
「俺のほうこそいつも聞きたいんだけど。俺のことちゃんと好き?って。お前の周りにはいつも男子がいて。友達が多いのはわかる。人気者だし。それを見る俺は?司といつもからかわれているお前を見る俺は?でも信じようって思ってる。きっと奈緒は俺のこと好きでいてくれるはず。だから信じようって思ってた。」
涙が止まらなかった。
確かに私は春喜のこと信用していなかった。
信用がそれほど大事なことだと思わなかったから。
だからいつもいつも問いかけていた。
それが、それが春喜を苦しめていた。
「・・・サチ、戻ろう。」
春喜は、サチと二人で自分のクラスのバスへと戻っていった。
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