「奈緒!」
「はる・・・き・・・?」
春喜はだいぶ息が切れていた。
ハァハァ言いながら呼吸を一生懸命整えている。
「なん・・・で?」
声が上手く出ない。
驚いて。
うれしくて。
「何泣いてんの・・・?」
「だ・・・って・・・は、春喜がぁ・・・・。」
本当に泣いていた。
涙が自然とでてきている。
「ここ覚えてる?」
春喜は呼吸が戻ったみたいで、私に静かに問いかけた。
「す、水道室・・・。」
「よく昼休み二人でここで話したよね。」
そうだ。 クラスが違うのでなかなか会えなかった。
でも春喜がここで話そうって昼休みにいつも来てくれたんだ。
「・・・ここでさ、水かけ合って先生に怒られたりしたよね。」
「・・・うん・・・。」
「あ、俺らがつきあい始めたのもここからだったよね。」
そう・・・ここで友達としゃべっていた私に、春喜がいきなり告白してきたんだ。
ここから私たち二人は始まった。
9月15日
1年前。
「なんでここに俺が来たか知りたいんでしょ?」
目の前にいる人は、いつもと変わらない様子で私に言った。
久々の春喜との会話。
「・・・うん。」
「でもさ、俺も聞きたいんだよね。なんで奈緒はここにいたの?」
「あ・・・あたしはぁ・・・・。」
もう顔は涙でぐちゃぐちゃだ。
こんな顔他人には見せられないだろう。
「あたしは・・・春喜を探しててー・・・・でもいなくて・・・・それでも逢いたくて・・・。」
「なんで?なんで会いたかったの?」
「・・・バカ・・・・好きだから・・・大好きだからに決まってるじゃん・・・。」
その言葉を言った瞬間私は、あのぬくもりに包まれた。
いつもの温かくて優しい愛に包まれた。
「春喜?!」
「ごめんね、俺も好きだよ。」
泣いた。
声をあげて。
だってここだけが私が唯一泣ける場所だもの。
「っ・・・・っく・・・・い・・・いつまでぇ・・・一人にするつもりよぉ・・・。」
ごめん
愛してる
耳元でヤツは私にそう囁いた。
ねぇ葵?
どんな壁でも壊すことができるって言ったけど壊すなんて無理があるんだよ。
壁は壁でしかない。
薄くても分厚くてもそこにあるものは避けないで受け入れなきゃいけないんだ。
そしたらね、かならず飛べる。
押しつぶされそうになるかもしれない。
そして私がドミノ倒しみたいに春喜を押しつぶすかもしれない。
押しつぶされても、まだ乗り越えられるんだ。
どちらかに、希望が残っていれば乗り越えられるんだよ。
願えば叶うんだよ。
その後、春喜はサチと別れた。
サチはやっぱり藤野君が好きみたいで今でも頑張っている。
葵は朔ちゃんのマイペースさに相変わらず翻弄されてるけど幸せそう。
ほかの友達もみーんな楽しい毎日を過ごしてる。
私は
幸せだ。
幸せをかみ締めている。
世界で一番愛しい人が隣で笑ってくれている。
相変わらずケンカもする。
私の意地っ張りはいまだに直らない。
でもそのたびに伝えることにしている。
変わらない、あなたへの世界一の想いを。
今日もあなたを愛しています。
今日もあなたの隣で咲き誇ります。
いつだかあなたは言いました。
「奈緒は、俺の花。」
奈緒は、今日もあなたという太陽を浴びて咲くよ。
大切な人へ
愛しています、心から。
END
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