私たちはとりあえず2週間の距離を置くことにした。
というか、やっぱり春喜のいない時間はどうしても耐えられず、私が春喜に早く決断させようと期日を決めた。
でも最初の3日で、メールもしないで春喜の優しい言葉を聞かないのは耐えられないことに気づいた。
ついに4日目、メールを送ってしまったんだ。
春喜はとても優しく普通にメールを返してくれた。
だけどそこには壁があった。
二人で意図的に作った壁だ。
切なかった。
それでも3日置きくらいにメールを送ってしまっていた。
2週間は思ったよりもかなり長かった。
必ず戻るって信じていても、不安でいっぱいだった。
2週間後、私たちは元に戻った。
でも壁は1ミリも削れていなかった。
日が経つにつれて、春喜の態度は冷たくなっていった。
ちょっとした会話なのに、雰囲気がすぐに悪くなってしまうのだ。
春喜は私の友達にそのときよく言っていたらしい。
「イライラしてしまう」
どう頑張ってもダメだった。
春喜の勘に触るようなことばかり言ってしまう。
今まで何気なく冗談で言っていたことも冗談にはならなくなったのだ。
そんなとき、春喜たちの引退がかかった試合が行われた。
いやな関係のままでも、私は春喜の彼女だ。
絶対に勝つ。
春喜の野球帽のつばの裏には私の字でそう書いてある。
私たちは普通に授業があったので学校での応援しかできなかった。
だけど、目を閉じて、春喜が投げている姿を思い浮かべる。
いつものように文字を見上げて、確認したかのように帽子を深くかぶる。
そしてただ投げることだけを考え、一心に思いっきり腕を振る。
おそろいのグローブとバッドがついたキーホルダーを手ににぎり、ただただ勝つことだけを祈っていた。
学校にきた速報は、私を涙させるものだった。
勝ったのだ。
引退はせずに、次の大会へ駒をすすめることができたのだ。
先生の話をきくとしばらくずーっと0点でうちの学校も相手の学校も抑えていたらしい。
そしてついに延長戦まで持ち込んだのだ。
こちら側が打って点数を入れたがすぐに追いつかれたという。
でも最後に、春喜が打った。
あれでも一応エースで4番バッターだ。
監督が、打つ直前に叫んだらしい。
私の名前を。
春喜はうなずいて、見事に勝利へと導いたらしい。
どんなに険悪な仲になっていても、春喜にとって私はまだ彼女のままだった。
心は繋がっていた。
しかし、家に帰ってからの春喜はやはりいつもと変わらなかった。
私のおかげで勝てたと言ってくれたが、壁だけは消えない。
耐えられなかった。
今まで何よりも近い存在だった人と、分厚い心の壁で区切られてしまったのだ。
もう大好きとはいえないくらいの壁だった。
せっかく勝った試合のあとだったが、私はい言ってしまった。
『やっぱりもう無理かもね。』
それだけで通じたらしい、
やっぱり春喜とはいつも同じことを考えているみたいだ。
『そうだね。別れて。』
本当の別れだった。
それから1ヶ月経っても、私たちが元に戻ることはなかった。
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