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花〜大切な人へ〜 作者:lover

第12回   距離感


何が起こったかよくわからない。




ベッドの中で一晩中、写真を見つめながら声を押し殺して泣き続けた。



一人ぼっちなのに声をあげて思ったように泣けない。

私が泣けるのは春喜の腕の中だけなんだ。




もう終わってしまったことなのに、そんなくだらないことを頭で理解してどれだけ大切だったかを思い知る。





私は言い出したらあとから後悔しても絶対に取り消しなんてしない頑固者だったので、あの後も「やっぱり」なんてメールは送れなかった。





こういうときに本当に素直じゃないと思う。









気がつくとすでに外は明るくなっていた。


時刻は午前5時。



正月に初日の出を見に行くのに起きた時間だ。




その初日の出も春喜と行ったんだっけ・・・。






確か5時に春喜が家に来るはずだったのに、前の晩どうしても年越しを起きてしたくて、春喜と電話で話していて寝坊したんだ。1時までしか起きていなかったけど、私からするとかなり夜更かしだ。

どうしても睡眠だけは人より多くなってしまうのだ。


そんなところもいつもバカにされて、でも一緒にいるたびに春喜の腕の中で眠っていたのだけど。





あのときは、葵と朔ちゃんも一緒で4人で家の近くにある海のそばの高台の公園まで見に行ったんだ。


立ち入り禁止のところに入っていって朔ちゃんを堤防から落とそうとしたんだ。

そこには後から幽霊がでるとかうわさで聞いたんだっけ。


そういう話に春喜は敏感だったから、私が信じなくても一人でびびってたっけなぁ・・・。




そんな思い出を頭の中で反復して、また涙を流す。





どうしても行き着くんだ。



どんな思い出もあなたの笑顔に。









そして再び目覚めたときはすでに午後3時になっていた。








部活サボっちゃった・・・。


一日練だったのになぁ・・・。







携帯を見ると、部活の友達からメールがきていた。



『ちょっとー!!寝てるの〜?』


心配かけてしまった。






ふと受信一覧をぼーっと見ていると、春喜のアドレスが目に入った。



【N】


【0324】



私のイニシャルと私の誕生日。




休みの日に、二人で考えたアドレスだ。









「アドレス変えようと思うんだけど。」


「え、なんで?」


「なんかこのアドレスつまんないじゃん!」


「なんだそれぇ(笑)あ、じゃあさ、今度はあたしの名前とか誕生日とか入れてほしい!」


「あぁー・・・いいねぇ、それ。そうしよー。」






アドレス変更のメールを友達に送って、一息ついたところで春喜が私にキスをしたんだ。



軽く口付けしたあと、そっと私の唇を自分の唇で包み込み、それを何度か繰り返した後、口の中にそっと舌をいれる。




春喜のいつものキスだった。



そうしていつの間にかキスがとても強く強引なものに変わったころ、春喜の携帯が鳴ったんだ。




『なんだよ、このアドレスー!(笑)』


『今日もいちゃいちゃしてるんですかぁ?(笑)』




たくさんの友達からひやかしのメール。




「あー!もううるさいなぁー!!!!やっぱり変えなきゃよかった!」





携帯が鳴るたびに、キスを中断させられたのでかなりイライラしていた。



そしてまたすぐに愛しそうに私を抱きしめ、優しい優しいキスをする。




そんなところもかわいかったなぁ・・・・。










そして私はまた過去の回想にふけっていた。






やっぱり別れたのにアドレスを変えないのはおかしいと思って春喜にメールを送ってみることにした。



『アドレス変えないの?』


そしてすぐにメールがくる。


『っていうかさ、奈緒は別れて平気なの?』



思いもよらない返信だった。




『平気なわけないじゃん。』


『でももう俺のこと嫌いでしょ?』


『うん、大嫌い。』


『そっか・・・。』





春喜がなんでそんなことを言ったかはわからない。



でもこのときだけは素直に答えた。




『嫌いだよ。大嫌いだよ。でもね、大事な部活休んで一晩中泣いて・・・どうしたらいいかわかんないよ。大好きなんだもん。』



心からの言葉だった。


思えばこんなに素直に春喜に言葉を言ったのは初めてに近いかもしれない。





『でも戻る気ないでしょ?』



『ハルくんが好きでいてくれてるならある。』




『ごめんね。俺もやっぱり離れても奈緒のこと考えちゃうよ。』










そのあと、私たちはいつものように窓越しで話し合った。





「奈緒、あのさ。俺、昨日めちゃくちゃひどいこと言ったよね?」



「・・・うん。」



「でも昨日言ったことは全部本当なんだ。」



「・・・うん・・・。」




「だけど奈緒のこと大好きだよ。一晩中、また泣くの我慢してんのかな?とか考えてた。別れたっていう実感なかったしね。」



「あたしもだよ・・・。」


「うん、ありがとうね。だからさ、なんか俺が思うに距離が近すぎてるんだと思う。」



「・・・?」



「1年近くそばにいてさ、なんか・・・俺すごく奈緒のこと好きだったけど、最近一緒に居すぎてそれが当たり前みたいになっちゃってる。だからきっと前だったら奈緒が俺のこと縛り付けてもそれをうれしいって思ってたのかもしれない。でもね、なんか・・・それが苦痛に感じちゃうようになってる。」


「・・・うん。」


「それなのにこのままつきあうわけにはいかないじゃん?だからしばらく距離置こう?そんでちゃんとまた元に戻ろう?」



「また前みたいにすっごく好きってなってくれる?」




「うん!」




「ちゃんと好きってなってね?」





「あたりまえじゃん!」






そのあと私たちは、いつも二人で行く立ち入り禁止の海へ行った。



木に覆われていて人目につかず、堤防に座って海をいつも眺めていた。





そしていつものように肩を寄せ合ってぼーっと海を眺めていた。










絶対にすぐ戻れる。



こんなのただのケンカだと思えばいい。




絶対にすぐ戻るんだから。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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