「悠・・・お前どうするつもりだよ・・。」
俊太郎がバスの中で半ば呆れ気味に言った。
「どうするって?」
「慎也だよ・・・ってか初めて知ったぞ。お前・・・真中のこと・・・。」
「違うよ!!!!悠があたしのこと好きなわけないじゃん!たぶんああいうふうに慎くんに言われて悠も負けず嫌いだから言い返しちゃったんだよ!!ね?!」
咲が俺の目を見つめて「同意しろ」と訴えた。
どうしてだ? 俺がお前を好きでいちゃいけないのか? いくら咲だって気づいたはずだ。
「・・・あ、あぁ。」
俺は仕方がなく同意した。というか心のどこかでやはり慎也にびびっていたんだろう。
「なぁんだぁ!!もしや略奪?とか思ってうきうきしてたのに・・・。」
斜め前ではうるさい梨花がぶつぶつ言っている。
「梨花、やめてよ〜。うちら友達だよ?悠があたしのこと好きなんて有り得ない♪」
納得できなかった。
俺は身を決して賭けをしたんだ。なのに、それを咲は無視した。
わからない・・・咲がわからない・・・。
ホテルに着くと、俺は俊太郎と荷物を置いてロビーをぶらぶらしていた。 すると咲と先ほど俺にものすごくキレた慎也がきた。
咲たちは俺の存在にぜんぜん気づいていない。 ロビーのソファーに隣り合って座った。
「咲、なんで松沢に抱きついたんだ?」
「・・・あれくらいで慎くんが怒るわけないって思った・・・。」
咲は慎也の目を見ずに答えた。
「・・・怒るよ。わかるよね?どうでもいい女なら誰に抱きつこうが放っておく。だけど咲だ。俺にとって何よりも咲は大切な存在なんだよ?」
慎也は思いつめたような顔で優しく咲に必死で言葉を唱えている。
「・・・わかった。ごめんなさい。もう二度とあんなことしないよ。」
そして咲は無表情でソファーから立ち上がりその場を去っていこうとした。
「咲!」
さすがだ。よくわかっている。咲は何も納得していない。ここで行かせたらこのまま終わってしまう。
慎也は咲の腕を掴んだ。
「聞いて?納得するまでいくらだって言うよ?俺は咲のことが本当に好きなんだ。だから咲がほかの男・・・まして普段から仲がいいやつに抱きついたりしたら・・・不安になるしすごく嫌だ。嫉妬深くてウザいって思うかもしれないけど、咲が俺以外の男に抱きつくところなんて見たくない。してほしくない。」
本当に一生懸命だ。周りに同級生たちがいたって咲のためなら恥ずかしさもプライドも捨てている。
「・・・慎くん、ごめんなさい。わかってるよ。だけど不安になっちゃったの。」
「なにが?」
「だって・・・ほかの学校の女の子とかみんな慎くんのことかっこいいって言ってて、慎くんのこと見てたの。だからね、慎くんどっかいっちゃうのかなぁって思って・・・ごめんなさい。」
咲は急にしおらしくなって泣きそうな顔で言った。
「・・・そうだったの?・・・ごめん・・・、全然気づかなかった。ごめんね、すごく不安にさせたね・・・。」
「ううん・・・ごめんなさい、わがまま言って・・・だからヤキモチ焼かせようとしたの。」
「そっか・・・そうだったんだ。俺こそごめんね・・・。心配しなくても俺は咲以外絶対に好きになったりしないよ。そんな女なんてどうでもいい、咲がいればそれでいい。」
二人はそのまま手を繋いでロビーをでていってしまった。
「・・・どんまい。」
俊太郎は俺の切なそうな顔を見て気づいたらしい。俺の気持ちに。
咲が俺に抱きついたのは、慎也にヤキモチを焼かせようとしただけ。 つまり咲が仕組んで慎也が売ったケンカに俺はのってしまったのだ。 空しいというか切ないというか・・・。
だからバスの中で必死で俺の気持ちを否定したのだろう・・・。
・・・待て?ってことは咲は俺の気持ちに気づいてる?
マズい・・・状況は何も変わらないが・・・俺の気持ちはまんまとバレてしまった・・・。
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