「走れー!おい、山根!ちんたらパス回してんじゃねぇよ!」
俺はサッカー部に所属している。 一応副部長だ。
「はりきってんな、悠。」
部長兼親友(?)の俊太郎の声に、力を緩めた。
「え、そう?」
「うん、いくら大会前だからって力みすぎ。どしたん?」
「・・・いや・・・。」
俺は何も言えなかった。あまり自分のことは他人に話さないほうだが俊太郎にはわりと何でも話していた。しかしそれでも咲のことは話せていなかった。
俺の最大の弱さだから。いくら信頼しているやつでも話せなかった。
「ごめん、咲。待った?」
部活が終わり、帰り道である学校のそばにあるコンビニの前を通ると『見たくないもの』が見えた。
咲と慎也だ。
「待ったぁ〜・・・もう一人で待ってるのすごい悲しいんだから〜!」
誰にでも変わらない咲の態度。ヤツにも俺にも同じ。もちろんそのほかの友達にも。
そういうところに虚しさが湧くけど、そういうところが好きなんだ。
「あのね、今日悠がね、高飛びの飛び方教えてくれたんだけど、95cmしか飛べなかったの。それでね・・・。」
自分の話をされてるのはうれしけど、相手が慎也。微妙な気分だった。
「・・・そうなんだ。それよりさ、日曜ヒマ?」
そしてあいつはあいつであっさり交わすんだ。
ちゃっかりデートの約束だし・・・。
「早く帰ろ・・・。」
「おい、真中と慎也、ホント仲いいよなぁ。でもあいつもなんで真中にしたんだろうな?顔は悪くないだろうけど、小学生みたいじゃん。」
「あいつロリコンなんじゃねーの?」
みんな笑いながらそんなことを言っていた。
慎也はロリコンなんかじゃない。
お前らは、咲をわかってないんだ。
見た目は小学生で、とろいし鈍いけど、すごく一途で何にでも一生懸命でどんなに悪いものにも絶対に負けない強さをもっている。
本当は成績だっていい。学年トップの俺だって敵わないほど文才はある。 吹奏楽部でも去年のコンクールで2年なのにソロを吹いて部を関東大会とかに導いたりした。
性格も明るくてやさししくてちょっと変わってておもしろいから、友達だって半端じゃなく多い。恋愛の相手としてはあんまり見られないが、男友達も多い。みんな妹みたいな感じに思ってるんだろうけど。
あいつは気づいてるんだ。
咲が持っている清さと強さ。
どうしてなんだろう?
どうしてこんなにも咲を好きになってしまったんだろう?
好きすぎて、好きすぎて、もうどうしようもないんだ。
だけど僕は臆病者。
心地よい関係が崩れることを恐れて「好き」の一言が言えない臆病者。
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